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無電柱化の費用は?電線類地中化や電柱の値段についてのまとめ

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東京都知事の小池百合子さんが政策としてあげていることから、話題になったのが電線の地中化問題です。

電線地中化関連の企業の株が上昇しているなどの影響もあるようですね。

また、2016年7月20日~22日までは東京ビックサイト(東京国際展示場東ホール)で無電柱化推進展(主催:一般社団法人日本能率協会)が開催されました。後援には東京都は入っていないものの、国土交通省、経済産業省、総務省、警察庁、東京商工会議所などの各機関が名を連ねています。来場予定者数は3万人程度が予定されており、これが多いんだか少ないんだかは分かりかねますが、期待が高いことはうかがい知れます。

さて、このように話題になっている電線地中化ですが、いったいどのくらいのお金がかかるのでしょうか。調べてみました。

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電柱地中化(無電柱化)とは?

電柱の地中化ですが、名前のとおり、道路上の電柱などをなくして地中に電線を埋設することをいいます。電柱の地中化と言いますが、電線を地中に埋設して電柱をなくすことを目的とするので、「電線類地中化」と呼ばれることもあります。

また、電線とひとくくりに言いますが、電力会社の電線だけではなく、電話事業者などの各電線事業者の電線のことを含みます。それぞれが単独で地中化することもありますが、一般的には共同で共同溝を地中に埋設します。

電線とは電力会社の電線だけではなく、電話事業者の電線も含む

地中化のメリット

地中化のメリットには「電線共同溝の整備等に関する特別措置法」では、安全かつ円滑な交通の確保、景観の整備が目的として掲げられています

近年では災害の防止、歴史的街並みの保全、観光の振興、地域の活性化、復興に向けた街づくりといった様々なニーズから無電柱化が望まれているようです。

色んな資料をみてみると、必ず出てくるのが他国の状況です。ヨーロッパの主要都市では無電柱化が当然のようですし、アジア圏でも香港や台北、ジャカルタの一部でも無電柱化を達成しているとのことです。

参考 国土交通省|自由民主党ITS推進・道路調査会無電柱化小委員会中間とりまとめ参考資料集(PDF)

国土交通省のホームページには「景観・観光」、「安全・快適」、「防災」と3つの目的が掲げられていますね。

電線類地中化の目的

景観・観光
景観の阻害要因となる電柱・電線をなくし、良好な景観を形成します。

安全・快適
無電柱化により歩道の有効幅員を広げることで、通行空間の安全性・快適性を確保します。

防災
大規模災害(地震、竜巻、台風等)が起きた際に、電柱等が倒壊することによる道路の寸断を防止します。

引用 国土交通省|無電柱化の目的

個人的な感想から言わせてもらうと、海外への憧れ?が強いんだと思います。別に海外の真似をしなくても良いと思うんですけどね。日本へくる海外からの旅行者の中には、電柱のある雑多な風景を日本独特の風景と捉える方も多いようですし、電柱のある風景は何ら恥じるものでもない気がします。

無電柱化の方法

無電柱化というと、電線類を地下に埋設して地中に入れてしまうことだけをイメージしてしまいますが、実際にはこれだけではありません。地中化方式以外の無電柱化方式としては、軒下配線方式や裏配線方式があります。

無電柱化の方法

  • 軒下配線方式
  • 裏配線方式

地中化はどうしてもコストがかかってしまいますが、地中化方式以外の無電柱化方式は比較的コストが安いことがメリットです。

軒下配線方式

軒下配線方式は名前のとおり、建物の軒下に電線類を配線して建物を電柱の代わりとして配線する方式です。

建物が必要なので、建築物が密集して建ち並んでいることが必要ですし、壁面線がある程度そろっていることが必要です。

金沢市の主計町地区で採用された方式です。

参考 東洋設計|金沢市主計町・金沢方式無電柱化事業

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裏配線方式

無電柱化したい主要な通りの裏通り等に電線類を配置し、主要な通りの沿道の需要家への引込みを裏通りから行い、主要な通りを無電柱化する手法です。

北海道のホームページにイメージ図がありましたので引用します。

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引用 北海道|裏配線

臭いものには蓋して後ろに隠してしまおうという発想ですね。

地中化のコスト

では電線類の地中化のコストはどのくらいかかるんでしょうか。これについても国土交通省に資料がありました。

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日本が主に採用している電線共同溝方式ですと、土木工事だけで1kmあたり3.5億円。そのほかに電気設備(トランス、ケーブル)工事にかかる費用があるのでプラスで1.8億円かかります。つまり1kmあたり5.3億円が電柱化のコストです。

1km当たり5.3億円

東京都の無電柱化はどれぐらい進んでいるの?

東京都の都道の総延長は2,358kmありますが、無電柱化が済んでいる整備累計延長は平成25年度末で819kmです。

その内訳を下に示しますが、中心の都心部で集中的に事業を進めているようですね。

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引用 東京都無電柱化推進計画(PDF)

無電柱化は400mを標準的な施工単位としているようですが、400mの無電柱化には約7年かかるようです。もちろん400mずつ事業を行うわけではありませんが、残りの1,539kmの無電柱化には26932年かかる計算になりますね。

最近の事業の実績をみると5か年で193kmの無電柱化を達成していますので、この調子でいくと40年近くの年月が必要です。

一部では東京オリンピックまでには無電柱化を!という動きもありますが、東京オリンピックまではあと4年しかないのでいかに厳しいのかがわかるかと思います。

東京都の電柱を全部地中化するといくらかかる?

無電柱化ってかなりお金がかかるんですね。東京都で考えると、残りの1539kmの都道を全部無電柱化しようとすると8150億円もかかります。

無電柱化を完成するためには8150円必要!

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電柱の値段

検索で「電柱 値段」でこの記事を読んでくれている人も多いので、電柱の値段を調べてみました。

街中にあるコンクリート製の電柱は7~8万円が相場のようです。ただし、これは柱そのものの値段、電柱を設置するとなると、設置費用のほかに移動費用もかかります。そのため、コンクリート製の電柱を1本建てるのには約30万円の費用がかかります。

電柱を移動させる費用は?

土地に建物を建築するとき、電柱が邪魔な場合ってありますよね。

こんなとき、電柱を所有している電力会社に頼めば電柱を移動させることができます。このための費用は約10万円と言われています。合わせて覚えておきたいですね。




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