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東京2020オリンピック選手村の敷地売却価格は地価公示の10分の1以下?

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東京2020オリンピック選手村の敷地売却価格は地価公示の10分の1以下という報道がありました。

10分の1っていうのはすごいですね。本当なんでしょうか?

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引用 東京都|晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業の特定建築者予定者を決定しました

東京2020オリンピック選手村の土地価格は時価の10分の1以下?

記事はこちら、この問題を議会で追求した日本共産党のものですね。

東京都は28日、2020年東京五輪の選手村(中央区晴海)の建設事業者に、三井不動産レジデンシャルなど大手デベロッパー11社グループを選定し、都有地(13万3906平方メートル)を1平方メートルあたり9万6000円余と破格の値段で売却することを決めました。

都は5月に特定建築者の公募を開始しましたが、応募は11社のグループだけでした。同グループは、五輪大会までに14~18階建ての宿泊施設21 棟と商業棟を建設。2~14階部分を選手村(1万7000ベッド)として一時使用します。大会後に50階建ての超高層ビルを建築し、24年度までに計23 棟・約5650戸のマンションを建設する計画です。

引用 しんぶん赤旗|都有地、破格値で売却へ

この敷地売却価格の12,960百万円(129.6億円)が、周辺の地価相場に対して安すぎるんじゃないのか?ということが問題が起こっていたようです。

総敷地面積は約13.4haで、さきほどの敷地処分価格を割ると坪単価で32万円となります。東京で坪32万円の土地っていうと多摩地域などの一部にいかないとありませんね。確かに激安といってもおかしくないのかも知れません。

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近隣の公的価格指標をみてみると、東京都の地価調査基準地(中央-3)がありまして、坪296万円(895千円/㎡)となっています。

選手村用地の盛り土、防潮堤、上下水道、道路整備は東京都が負担し、その負担額は410億円だというので、その土地を129.6億円で譲り受けることができるのはかなりお得感がありますね。

しかしながら、記事を読んだり東京都の「晴海五丁目地区第一種市街地再開発事業の特定建築予定者」の報道資料を見ていると、そんな簡単なものではないようです。

まずは事業者は2024年までに23棟、5650戸のマンションを建築しなければなりません。その内、東京五輪までに21棟の宿泊施設(1万7000ベッド)と商業施設を選手村の施設として建築する必要があります。

選手村として使う期間の使用料については、都が負担するんでしょうか?記事などには書いてありませんでしたが、事業者が負担するのかも知れません。

参考 東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟

上の記事にも書いてあるとおり、選手村として使用する建物は色々な制約があり、普通のマンションとして売り出すにはマイナスの要因もたくさんあるようです。

ですので、敷地処分予定価格の129.6億円というのは単純な土地の値段として算出した価格ではないようですね。

選手村土地の鑑定評価を行ったのは誰?

先の記事の筆者が、都の都市整備局に「価格の妥当性」を問い合わせたところ、「不動産鑑定法に基づき適正に鑑定評価した額」との回答が返ってきたようです。

この規模のプロジェクトの鑑定評価を行える会社は限られています。鑑定業者で最も大きい組織「日本不動産研究所」では東京五輪関連事業推進を作って、五輪関連の事業を行っているようなので、もしかしたらここかな?という気もしますね。

URL 不動産研究所|東京五輪関連事業推進室

どのような手法やロジックを使って、鑑定評価を行っているのか評価書を見てみたいものです。

最後に鑑定評価について追記しています。

東京都の委員会に関与する不動産鑑定士

最後に、この事業に関連した都の委員会にも不動産鑑定士が関与しているようです。田舎者の私には縁がないものですが、頑張ってほしいですね。

晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業特定建築者選考委員会委員

委員:一般財団法人日本不動産研究所常務理事 小林信夫

参考 晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業特定建築者選考委員会委員名簿

晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業保留床等処分運営委員会委員名簿

委員:不動産鑑定士 宮下直樹 (三菱UFJ信託銀行(株)コンサルティング部)

参考 晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業保留床等処分運営委員会委員名簿

東京五輪選手村の鑑定評価(追記)

東京五輪選手村の鑑定評価(正式には価格調査といいます)は、日本を代表する鑑定機関、日本不動産研究所が行ったようですね。129.6億円という破格の売却価格も日本不動産研究所の価格調査に基づいていたことが臨海都民連事務局長の市川隆夫氏の開示請求で判明しました。

不動研が都市整備局に提出し、情報開示された調査報告書を見ると、「大会終了後には、東京湾岸エリアを代表する住宅地域として熟成すると予測する」「東京湾岸部において一体開発が可能な土地の中では最大規模と推測する」と選手村用地をべた褒めする記述があったようです。

べた褒めをしつつも、選手村という特殊要因でかなりの減価を行って価格を出したという感じなんでしょうか。開示請求された調査報告書も一番知りたい箇所はほぼ黒塗りで、土地価格を下げた要因が何だったかは分からずじまいです。

日本不動産研究所がうけとった委託費用は817万4520円。さてこの金額に見合う働きをしたんでしょうか。

参考 日刊ゲンダイ|都が激安で売り出し 小池知事“次なるメス”は選手村予定地




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