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書籍紹介

事業用不動産の評価。ホテルや有料老人ホームなどの施設の評価に参考になる書籍をまとめてみました。

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ホテルなどの事業用不動産の評価は専門的に扱っていない不動産鑑定業者にとっては複雑な案件となります。

評価の話しがあるたびに書籍をひっくり返して確認し、あーでもないこーでもないと悩みつつ評価作業を行います。今回はそんな事業用不動産の鑑定評価に参考になる書籍をまとめてみました。

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事業用不動産とは

事業用不動産とは、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産のうち、その収益性が当該事業(賃貸用不動産にあっては賃借人による事業)の経営の動向に強く影響を受けるもの(以下「事業用不動産」という。)を例示すれば、次のとおりである。

引用:不動産鑑定評価基準運用上の留意事項

広義には、店舗や事務所ビル、マンションなどの収益を得ることを目的に投資対象とされる不動産のことを事業用不動産と定義する場合もありますが、今回は国土交通省の定義するものを参考にします。事務所ビルや賃貸マンションなどは賃貸用不動産などと呼ばれて区別されていますね。

事業用不動産はオペレーショナルアセットなどとも呼ばれます。例示すれば次のとおりです。

  • ホテル等の宿泊施設
  • ゴルフ場等のレジャー施設
  • 病院、有料老人ホーム等の医療・福祉施設
  • 百貨店や多数の店舗により構成されるショッピングセンター等の商業施設

例示をみれば分かるとおり、個別性の強さが特徴です。一般的な賃貸マンションであれば他の代替・競合不動産との比較は容易です。しかしながら一流ブランドのホテル、地域の名門ゴルフ場など唯一無二のものもあり、代替性が低さから、平均的な数字の捉え方や、比較そのものが難しい案件です。

事業採算性の観点から適正な賃料水準についての分析をしなければいけないとは基準に書いてあるものの、そもそも適正な賃料水準が評価しているアセットにあてはまるのだろうか?という疑問もでてきますね。

評価そのものの手法についてはまた思い立ったときに書くとして今回は書籍の紹介です。

事業用不動産のマーケット分析と評価

平成27年12月に発行された大手鑑定事務所「谷澤総合鑑定所」による書籍です。

内容は、各アセットについてそれぞれの定義や市場動向、エリア分析や評価手法について簡略にまとめられています。

この書籍で扱われているアセットは次のものです。

  • ヘルスケアアセット(シニアリビング・病院)
  • ホテル
  • 旅館
  • 再生可能エネルギー及び太陽光発電施設

シニアリビングとは、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅の総称です。

 

太陽光発電施設については、扱っている書籍が少ないことからかなり有益な書類といえるでしょう。

ホテル・商業施設・物流施設の鑑定評価

平成23年5月に発行された書籍です。不動産鑑定士協会連合会で行った研究をもとに、評価実務の一線で活躍する不動産鑑定士が書かれたものです。

第一章の「不動産評価と事業評価」で、普通不動産の評価と事業用不動産の評価はどこが異なるのかを開設し、評価のバックグラウンドとなる基礎知識を記載します。

第二章~第四章は、個別のアセットの評価手法と基礎知識を解説しいます。第二章はホテルの鑑定評価、第三章は商業施設の鑑定評価、第四章は物流施設の鑑定評価となっています。

第五章は応用編として、他の事業用不動産への評価手法の発展を考えます。書籍では例として温泉施設の評価がとりあげられています。

各章において、収益・費用項目にはどのようなものがあるか定義づけされており、スタンダードな考えを習うのに最適です。

ホテルとゴルフ場の評価実務のすべてがわかる本

平成20年12月に発行された書籍で著者は大和不動産鑑定の不動産鑑定士です。平成20年の書籍ということで評価手法などもまだ手探りな時期に書かれた書籍です。

この書籍の有用な点は、各種の収益・費用項目において、具体的な一般水準がきちんと書かれていることです。

一例としては、レジャーホテルの一室当たりの月額売上です。レジャーホテルとはお洒落な言いかたですが、ラブホテルですね。一室当たりの売上は平均50万円(総合ユニコムの調べ)だそうです。その他ホテルの水道光熱費の一般的水準(施設面積当たりの金額や総売上に占める割合)、資本的支出の一般的な水準など様々な指標を提示してくれています。

ホテルとゴルフ場に特化して書かれていますが、評価書の先例(ひな形)も紹介されているので参考になります。

評価実務ではありませんが、こちらの書籍も面白いです。どちらかというと実際に再生を手がけるプレーヤー向けの書籍でしょうか。

事例でわかる 旅館・ホテル・ゴルフ場の再生実務

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不動産の価格がわかる本

平成28年4月に発行された大和不動産鑑定が編著の書籍です。

上の3冊はどちらかというと専門家向けの書籍なので、評価実務をしていないと少し難しい面がありますが、この書籍は初心者でも読める内容になっています。

まだ経験の浅い不動産鑑定士や不動産鑑定評価を依頼する側の企業などはこのぐらいの書籍を読んでおけば十分なんじゃないでしょうか。

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その他、ホテルの収益構造の勉強になる本

ホテルの評価について勉強しだすと、会計の知識がどうしても必要になります。そんな際に参考になる書籍です。

 




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