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銀行のATM(現金自動支払機)を収容した建造物は登記が可能?

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先日、建物登記の3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」についての説明記事を書きました。

今回は具体的な問題です。屋根付きの車庫は登記可能でしょうか?

銀行のATM(現金自動支払機)を収容した建造物、1坪程度(3.3㎡)は登記が可能?

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ATMを登記することの可否

正確にはATM機器を収容した建造物ですが、名称が長くなるので以後ATMと書きます。ATMと書いたらATMを中に収容した建造物だと読み替えて読んでください。

建物をできるかできないかの判断は、「定着性」「外気分断性」「用途性」の3要件に照らして判断されます。3要件の詳細については、過去記事をご参照ください。

建物が登記できる要件は何?3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」を説明します。

不動産の登記を調べているとき、建物が登記されていないことって多々ありますよね。建物が現実に存在するのに建物の登記がないのには色々な理由があります。 では、そもそも建物として登記ができるようになるには、 ...

まず、「定着性」と「外気分断性」については、建物の構造が問題なければクリアされています。ATMが収容されているので、建造物が置いてあるだけのものというのは考えられないので、基礎もきちんと定着しているでしょう。外気分断性についてもATMを見渡すと、周壁や屋根がきちんと設けられているものが大半です。

問題は「用途性」をクリアしているかどうか。

問題は「用途性」をクリアしているかどうかです。用途性の判断に際しては、建造物に一定の生活空間があり、人貨の滞留性を有して、その用途に供しうる状態にあることを基準に判断されます。

ではATMはどうでしょうか?用途性があると判断できるでしょうか?

実は類似した事例がありまして、旧日本郵政公社の郵便局の敷地外に設置している現金自動支払機(ATM)を保護するための建造物が主たる建物として登記することができるかとの照会に対して、主たる建物として取り扱うことはできないと既に回答がなされています。

その理由の要旨は次のとおりです。

つまりはATM建造物はATMが置かれている場所のほかは、防犯ビデオ、分電盤、警報装置等があるのみで、ATMを囲む堅固な覆いに過ぎないのです。人の滞留についても、営業時間内に利用客がわずかな時間出入りするのみで、保守作業の係員の点検も含め、人の滞留時間は僅かです。

もちろん、ATM機器を複数台収容して、待合スペースがかなり大規模なものについては、主である建物としての登記も可能ですが、個別の事例に判断されることになります。

また、主である建物としての登記は原則不可能ということですが、附属建物として登記されることを否定するものではありません。

まとめ

どうでしょう?分かりましたでしょうか。建物の登記の可否については下記の記事も書いていますので参考までにどうぞ。

 




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