住宅地の生垣や樹木の緑は、人々に安らぎを与えるとともに、防災や防犯に大きな役割を果たしています。
しかし、生垣や樹木が道路にはみ出すと見とおしを悪くし、通行の邪魔になったり、標識が見えづらくなり、通行者の安全に支障が生じることになります。
さて、邪魔な生垣や樹木を発見した場合、どこに連絡して、どう対応すればよいのでしょうか?また、生垣を放置してしまった所有者にはどのような法的責任が生じるのでしょうか。
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お悩み相談のような形をとって説明していきたいと思います。
道路に樹木・生垣がはみ出している場合
毎日通勤でとおる道路に、樹木の枝が伸びてはみ出しています。邪魔ですし、安全上も問題があるので困っています。どこに連絡すれば良いでしょうか?
家の持ち主は知り合いでもないので、言いづらいです。
このケース、家の持ち主は知り合いではないとのことですが、知り合いでも言いづらいですよね。ご近所さんなら尚更言いづらいです。後々の生活のことを考えると、あんまりあれこれとうるさいことを言いたくはないですね。
道路管理者に連絡しよう
このようなとき、連絡する相手先としては道路管理者が考えられます。市道ならば市役所の道路管理課などの部署に連絡して説明します。
私有地から道路状に生垣や樹木、その枝がはみ出している状態は、道路法に違反しています。
道路法第43条(道路に関する禁止行為)
- 何人も道路に関し、下に掲げる行為をしてはならない。
- みだりに道路を損傷し、又は汚損すること
- みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞(おそれ)のある行為をすること
道路に張り出した生垣や庭木等が原因で交通事故等が発生した場合、所有者が賠償責任を負わなければならないこともあります。
民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
- 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
- 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
個人所有の樹木等の剪定・伐採は所有者が行うことになります。費用ももちろん所有者負担です。
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自動車や歩行者の安全な通行を確保するために、電柱、信号機、樹木等が道路上に入ってはいけない「空間」を定めるものを建築限界といいます(道路法第30条、道路構造令第12条)。
高さについては、車道の場合は4.5m、歩道の場合は2.5mの範囲に樹木等が道路に張り出していると建築限界を犯している可能性があります
【建築限界の概念図】
隣地から自分の土地に枝が越境してきた場合
隣地の木の枝が私の家の庭に入り込み、そのため日も当たらず、また邪魔で困っています。どうしたらよいでしょうか?
この場合、道路管理者のような第三者が介在しないので、基本的には自分で隣地の所有者さんにお話しをすることが大原則となります。
しかし、相手方が請求に応じてくれない場合は、裁判所に対して相手の費用をもって植木屋なり職人なりに切り取らせることを請求することができます。
民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる
もっとも、裁判所では、竹木の枝が境界線を越えていても、あなたに対して少しも損害を与えないと認めた場合は、権利の濫用としてあなたの請求を認めないこととなります。
また、事情によっては償金(損害の償いとして支払う金銭)を請求できるにすぎない場合もあります。
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まとめ
今、国をあげての施策に、常態化している空き家をどのように利活用し、処分していくかという問題があります。
空き家で問題となる一つが、庭の放置。今日説明した手入れのされない庭木が隣地や道路にはみ出してしまうことなんですよね。対応策を上で簡単に説明しましたが、空き家の場合は家主がいないのが普通なので、更に問題は複雑ですね。