建物(家屋)の固定資産税評価額はどのように計算されているのでしょうか?
建物(家屋)の固定資産税評価額が高い!という声をよく聞くことがあります。特にRC造などの造りがしっかりした旅館などの建物は古くなってもかなり高い固定資産税評価額がついている場合があります。
その他、住宅やアパートでも古くなってもそれなりの価額が残っているものが多くあります。今日は家屋・建物の固定資産税評価額の計算方法、そして、古い建物の評価額が高い原因ともなっている経年減点補正率について書いてみたいと思います。
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家屋の固定資産税評価額の計算方法
固定資産税の評価額は、総務省の定める「固定資産評価基準」に則って算出されます。
固定資産評価基準
- 土地
- 家屋
- 償却資産
参考 総務省|固定資産評価基準
家屋の固定資産税評価額は、評点数に評点一点当たりの価額を乗ずることにより求めます。
家屋の固定資産税評価額の計算式
評価額=評点数×評点一点当たりの価額
評点数と評点一点当たりの価額の計算
評点数と評点一点当たりの価額の求め方は次のとおり。
評点数の計算式
評点数=再建築費評点数×損耗の状況による減点補正率×需給状況による減点補正率
次に評点一点当たりの価額です。
評点一点当たりの価額の計算式
評点一点当たりの価額=1円×物価水準による補正率×設計管理等による補正率
正直よく分かんないや。と思われた方が多いんではないでしょうか?私もこの式だけではよく分かりません。
簡単に下のような式で理解してもらえると一番簡単かと思います。
評価額=再建築に必要な金額×建物の劣化等による減価
家屋の固定資産税評価額はその建物を再建築するとした場合に必要な費用に、建物の劣化(これは年を経ることによる経年劣化が主となります。)を考慮して決定するとされているのです。
一般的に再建築に必要な金額は、市場における建物価額よりも安い場合が多く、固定資産税評価で計算すると市場での建築価格の5~6割程度になるとも言われています。
経年減点補正率について
式の中では、「損耗の状況による減点補正率」となっていますが、その主たるものが経年減点補正率です。これは総務省の固定資産評価基準の別表に、建物の構造(木造か、鉄骨造、RC造かなど)、用途・種類(専用住宅か、事務所、店舗、旅館等かなど)の別によって定められています。
最初にこの経年減点補正率の一番のキモをお話ししてしまうと、率は最低でも0.2です。つまり価格は0.2よりは何年経っても下がりません。
家屋の評価額は新築時の2割までにしか下がらない
なぜ2割までしか下がらないかは色々な理由が言われれています。
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家屋の評価額が2割までにしか下がらない理由
固定資産評価は固定資産税や都市計画税、不動産取得税に利用されます。つまり税金の徴収のためです。当たり前ですね。ではそもそもなぜ不動産に税金がかかるかというと、不動産を所有するといことは、行政サービスを受けることに他ならないからです。
儂は行政サービスなんぞ受け取らんぞ!と言われる方もいらっしゃるかも知れません。しかしながら、例えば住宅を所有するということはその建物に至るまでの道路などのインフラ、上下水などの生活関連施設、小学校などの教育サービスもそうですね。多種さまざまな行政サービスを知らず知らずのうちにうけているのです。
そのため、建物がいくら50年経過しようが100年経過しようが、税金を支払わなくても良い(評価額をゼロとすると同義です)とはなりません。2割が正しいかどうかは分かりませんが、最低限支払わなくてはいけない限度が2割。そんなイメージで捉えてもらえれば良いと思います。
この2割は、固定資産評価基準の別表に定められている全ての構造・種類の建物がすべて2割です。
では、代表的な建物で経年減点補正率がどの程度のものなのかを例をあげて示したいと思います。
木造住宅の経年減点補正率
経年減点補正率は再建築費の評点によって使われる率が異なり、4段階に分けられています。質の低い建物(点数の低いもの)では、15年で最低の2割になってしまいますし、最も質のよい住宅では35年でやっと下限の2割に到達します。
ここでは一般的で一番多い層の「79千点以上、121千点未満」の経年減点補正率を紹介します。
この層では、25年で再下限の2割になります。意味合いは厳密には異なりますが、25年が耐用年数と言い換えた方が分かりやすいでしょうか。1年を経過するともう2割減の8割水準になりますね。その後は5%から3%ぐらいの刻みで毎年建物の価値が低下していきます。
経過年数 | 経年減点補正率 |
1 | 0.80 |
5 | 065 |
10 | 0.54 |
15 | 0.43 |
20 | 0.31 |
25 | 0.20 |
グラフにしてみましょう。
ほぼ線形ですが、後半になると若干下がりが緩やかになります。25年以上は0.2で一律すね。
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RC造のホテル・旅館の経年減点補正率
建物の評価額が高い!と相談をよく受けるのがホテル・旅館だったりします。先に書いた家屋固定資産評価額の減額の判決の記事も旅館のものでしたね。
参考 旅館の建物固定資産税の減額を認める宇都宮地裁判決がでました。
一般的である、鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の経年減点補正率は下のとおり、耐用年数が45年と長いので上の数字だけ表示されるように表をしてあります。
最下限である2割水準まで下がるには45年かかります。また住宅アパートと異なるのは1年経過してもたいして減価しないといったことでしょうか。住宅では1年経過すると2割減となりましたが、旅館・ホテルでは2%弱の減価です。
[table id=60 /]
旅館を建築するには通常数億円といったお金がかかります。税評価上の再建築価格は市場よりも安く設定されているとはいえ、3億円の建物を建てれば再建築価格も2億円弱くらいの金額はつきます。45年経過すると2割になりますので、固定資産評価額は4000万円(2億円の2割)。固定資産税の税率は1.4%がほとんどなので、税率を乗ずると56万円の固定資産税がかかることとなります。
きちんと稼動している旅館やホテルなら問題はない金額なんですが、観光客がほとんどいない地域に残ってしまっている廃旅館・ホテルなどでは大問題です。たまに旅館が500万円や1000万円程度で叩き売り(?)されているケースを見ますが、固定資産評価額をみると数千万円となっているものもあります。
500万円と思って購入した物件に、毎年数十万円の固定資産税がかかる!詐欺だ!なんてことが起こってしまう原因だったりします。
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まとめ
家屋の固定資産評価は難解で、そのため不服審査も後を絶たないと言われています。
また、一般住宅でいえば一条工務店の住宅は一般的に評点が高い(固定資産評価額が高い、つまり税金が高い)と言われています。
これは一条工務店が屋根材と一体の建材型ソーラーパネルを得意としているからなんですが、ソーラーパネルを付けて、全館床暖房、全熱交換タイプの換気設備を付けると、評点が最高ランクの121,000点以上になってしまうこともあるようです。
121,000点以上になってしまうと、経年減点補正率も最高35年となってしまい価格がなかなか下がりません。
屋根材と一体型のソーラーパネルは家屋評価額が高くなる!
良いものを使えばそれだけ税金は高くなるといえばそれまでですが、税金がきてびっくりとはならないように注意したいものですね。