毎年購入している「新民事執行実務」ですが、ようやく今年の号を読み始めました。
今回の特集はABL(資産担保融資)と執行実務です。
- ABLの金融機関の利用状況
- 【座談会】ABLの現状と回収局面における諸問題──融資実行段階から回収段階までの一連の考察─
その他の論説・解説は次のとおり
- 民事執行における「占有」──その意義と認定──
- 民事執行法の見直しの動向──中間試案の内容を中心として──
- 生活困窮者支援を通じた関係機関との連携
- 担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い
- 口述動産等執行講義──大阪地方裁判所の事例を中心として──
- 船舶執行申立て前の船舶国籍証書等引渡(保全処分)執行手続に関する留意点──外国船籍観光クルーズ客船編──
- 東京地方裁判所(本庁)における平成29年の民事執行事件の概要
- 大阪地方裁判所(本庁)における平成29年の民事執行事件の概要
- 〔重要判例解説〕民事執行重要判例の回顧(平成29年)
- 執行官だより〔第6回〕山城の国、丹波の国、丹後の国の執行官室から
- 新任執行官になっての感想
私は不動産鑑定士なので、全部の論文を読んでいる訳ではないのですが、今回気になった(面白かった)のは「担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い」です。
担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い
書かれたのは、福島地方裁判所の評価人候補者「佐藤栄一」さん。
目次を記します。
- はじめに
- 太陽光発電システムの概要
2-1.太陽光発電システムの全体像
2-2.太陽光発電システムの種類 - 太陽光発電システムに関する評価事務研究会での取扱い
3-1.評価事務研究会単位での取扱い例
3-2.評価事務研究会での取扱い例の携行 - 太陽光発電システムに関連した競売評価実例
4-1.住宅用太陽光発電システムに関連した評価
4-2.目的土地に太陽光発電システムが設置されている場合の評価実例 - 競売評価における太陽光発電システムの取扱い(整理)
5-1.住宅太陽光発電システムの取扱い
5-2.住宅太陽光発電システムの評価書への記載等 - おわりに
私も太陽光発電システムが設置されている住宅の評価の経験がありますが、太陽光発電は屋根と一体化しているかなどの物理的な側面、所有権は留保されているかなどの権利的な側面を網羅的に確認しなければならないため本当に難しかったです。
また、建物所有者に所有権を確認しても意外と分かっていなかったりもします。
ソーラーパネルの設置には補助金を受領している場合もありますが、補助金申請の要件として所有権が留保されていないことが求められているケースもあります。
「担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い」の論文では太陽光評価に際してのフローチャートが書かれており、どのような点に気をつけて調査・確認をすれば良いのかが分かりやすくまとめられています。
また、評価実例、評価上の取扱いもケースごとに複数記載されています。
いつか記事で太陽光発電システムについての確認事項や気をつける点を書きたいと思っていたんですが、「担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い」で網羅されているので、書く必要がなくなってしまいました。
新民事執行実務 16
住宅の評価や売買に携わる人ならば、「担保不動産競売評価における太陽光発電システムの取扱い」の論文は是非読んでもらいたい内容です。
鑑定士向けに書かれた論文ではありますが、実際に売買するときに太陽光のソーラーパネルがどのような権利で搭載されているのかが分からないのではお話になりません。
権利関係を確定する際に参考になる書籍です。
この論文の載っている「新民事執行実務」ですが、書店にはあまり置いてない専門書です。また、すぐに絶版になってしまいますので、お早めに買われるのが良いかと思います。