家を建てるためには原則として敷地が建築基準法上の道路に接面している必要があります(接道義務)。
今回はその内の一つ、建築線(附則5号道路)についてまとめてみました。
建築基準法の道路にはどんな種類のものがあるのかは以前書いたのでこちらを参照ください。
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第42条の道路の種類。建築基準法の道路を徹底解説します。
道路と一概にいいますが、不動産業で重要なのは建築基準法上の道路です。 調べている道路が建築基準法の第何条何項の道路に該当するかを調べるわけですが、普段あまりお目にかからない条文の道路については専門家で ...
建築線とは
建築線とは旧市街地建築物法で規定されていた、建築物が接していなければならない線で、そのうち建築線間の距離が4m以上のものは、現在の建築基準法に引き継がれています。
市街地建築物法(第7条)
道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス但シ特別ノ事由アルトキハ行政官庁ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得
※建築基準法施行に伴い 昭和25年11月23日廃止
建基法上では、位置指定道路があるものとみなされるため、位置指定道路と同様の規制が生じますし、接道義務は建基法第42条1項5号道路と接するものとされます。
建築基準法 附則(この法律施行前に指定された建築線)(第五項)
市街地建築物法第七条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が四メートル以上のものは、その建築線の位置にこの法律第四十二条第一項第五号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。
建築基準法附則5項に規定されていることから、附則5項道路とも呼ばれます。
では建築線が4m未満は現在どうなっているのか。これは特定行政庁によって対応はまちまちですが、例えば東京都では、旧市街地建築物法の規定により、昭和5年1月1日以降指定された建築線間の道の幅が4m未満1.8m以上のもの(昭和30年7月30日都告示699号)については建基法第42条2項の通称2項道路に指定されるものとして一括指定されています。
建築線の問題
建築線は昭和5年から建築基準法が施行される昭和25年11月までに指定されたものであるので、古いものがほとんどです。したがって、建築線のみがあって道路の実態がないものも多いなどの問題も含んでいます。このような道路については今後廃道の手続きがすすめられるべきでしょう。
附則5号と42条2項、42条1項3号との関係性
接面する道路が2項道路なのか、建築線なのかで争ったケースがあります(平成21年9月16日中野区建築審査会採決)。採決の中で判断された結果にも触れつつ附則5号とは何かを少し説明していきたいと思います。
参考建築基準法上の「二項道路」と旧物法上の「建築線」(一項五号道路)に関する政策法学的分析
建築線の間が4m以上と規定されているだけで、実際の道路部分が4m以上となっているとは限りません。上の法律を素直に読めばそのままなのですが、要件とされているのは建築線の間が4m以上となっています。
現況の道路は2.7mだけど建築線の間は4mある道路は実際いくらでもあるらしく、このような道路でも位置指定道路とみなされ接道義務を満たします。そもそも基準時時点で4m以上の道路であれば、附則5項を設けなくても42条1項3号の既存道路として認めてあげれば足りることであり、附則5号がわざわざ制定されたのは、現況4mに満たない道路のうち建築線が一定要件を満たすものを救ってあげる趣旨であったと考えられます。
道路幅員が4m未満の場合、2項道路と附則5号道路(建築線)の関係が問題となります。この場合2項道路の一括指定の効果を及ぼすことによって附則5号道路が当然に消滅すると考えるのは妥当ではないと考えられています。
つまり2項道路という制度があっても当然に2項道路となるわけではなく、附則5号道路として存在しつづけるということですね。
建築線の例
私も実務では一回しか建築線に出会ったことはありません。あの頃は今と比べて全く知識も無かったので、「建築線?なにそれ?」という感じでした。窓口担当者も無愛想で「建築線です」の一点張りで建築線が何かは教えてくれませんでしたしね...
そんな珍しい建築線ですが、大阪の船場地区は面的に建築線が指定されていたようです。近畿大学のホームページに写真や地図もたくさん載っている分かりやすい論文がありました。
写真は実際の建築線の写真です。指定年月日は昭和23年2月9日、指定の幅員は4mですが、実際の現況幅員は4mに満たないですね。
古い地域ですと、このような建築線が存在します。