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さくら浄水場訴訟、不動産鑑定士の5000万円賠償で和解(東京高裁)

更新日:



3か月ほど前に不動産鑑定士に対する1億3千万円の賠償命令についての記事を書きました

不動産鑑定士に1億3千万円の賠償命令(宇都宮地裁)

不動産鑑定士に対する賠償命令のニュースがありましたのでご紹介したいと思います。 栃木県の旧氏家町が購入した浄水場建設用地が不当な土地鑑定によって高額な価格で購入させられたなどとして、さくら市が宇都宮市 ...

この事件は不動産鑑定士側が正当な鑑定だったとして控訴されていましたが、東京高裁にもちこまれ、和解が成立したようです。

旧氏家町(現さくら市)浄水場建設地の土地取引をめぐり、不当に高額な土地評価額を示され損害を受けたとして、さくら市が宇都宮市内の不動産鑑定士 に損害賠償を求めた控訴審の第2回弁論準備手続きが21日、東京高裁(青野洋士(あおのひろし)裁判長)であり、和解が成立した。市に対して鑑定士が和解 金5千万円を支払う内容で、浄水場建設地の購入をめぐる一連の訴訟は終結する形になる。

市によると、9日に開かれた第1回弁論準備手続きで、高裁が和解を勧告した。和解案は、2009年、当時損害賠償責任を認められていた前市長への 賠償請求権について、市議会が放棄したことなどを踏まえ、市に5割の過失があったとした上で、市の損害額を4~6千万円とした。

引用 下野新聞|さくら浄水場訴訟、鑑定士5000万円賠償で和解 東京高裁

事件の内容については前記事を読んでいただくとして、まず驚くのは和解金額の5千万円です。鑑定報酬がいくらで受注しているかは分かりませんが、数十万円程度ではないでしょうか。50万円で受注したとしたら100倍の金額の和解金ですね。専門職業家としての責任は問われて然るべきなんでしょうけども、この金額はきっついなーというのが評価する側の本音なんじゃないでしょうか。

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複数の鑑定士による意見の大切さ

鑑定評価は仕様に従ったものを作るという請負的なものではなく、高度な専門的知識に基づいて価格に対する意見を表明することです。もちろんそのプロセスが間違っていたのでは話になりませんが、そもそも一社の鑑定業者だけに価格判定を任せていた市(依頼者)側の問題はもっと大きいんじゃないでしょうか。

以前記事に書きましたが、専門家に任せてあるから免責。そんな簡単なものでは済まされない世の中です。依頼者側も不動産の価格についての知識を十分に持つ必要がありますし、それが無理ならば2社の鑑定評価をとって担保するぐらいのことが必要なんじゃないでしょうか。

URL 専門家に任せたから安心、それでは済まされない不動産評価。企業担当者にも鑑定評価の知識を。

地価公示法によって毎年1月1日時点の価格が公示されていますが、地価公示における価格判定は2人の不動産鑑定士による評価が必要とされていますね。不動産の価格は計算式に基づいて計算すれば算出されるような単純なものではありません。多様な要因が複合的に絡み合って価格が形成されているので自ずと判断はわかれることとなります。ここに複数の鑑定士による評価が必要な理由があります。

広島県の未利用な県有地の売却について

話はまた少し変わりますが、広島県では未利用の県有地の売却について、宅建業者にニーズ調査と査定を委託して予定価格の設定、売却をすすめているようです。

広島県は本年度、一般競争入札で売れなかった未利用の県有地について、宅建業者にニーズ調査と査定を委託して適切な用途や予定価格を設定し直し、売却につなげる取り組みを本格化させる。これまでは主に宅地としての鑑定評価額に基づいて入札していたが、広さや立地面などの条件を踏まえ、比較的安い雑種地などとして売り出す。

引用 中国新聞|売却県有地の予定価格、不動産業者が査定

より市場をダイレクトに反映した査定を行うことによって、県有地の売却を加速化させることが目的なようですね。このような宅建業者の活用には色々な疑問が浮かび上がります。まずはそもそも宅建業者が価格査定を行なうことは法令違反ではないの?っていうことです。下の記事にも書きましたが宅建業者が価格査定を行なえるのは「宅地建物取引業法第34条2の2第2項」に基づく「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務」を根拠として作成されるもののみです。

不動産鑑定業務に抵触しない価格査定って何?

先日の宅建業者の評価額査定根拠説明義務について調べていたところ、(公社)全日本不動産協会のホームページに気になる文言が書かれていました。以下抜粋します。 価格査定の依頼 例えば、売却希望者から物件価格 ...

次に宅建業者に価格査定が行えるの?ということです。宅建業者による違法な価格査定は市場においてたくさん出回っており、私も色々な場所で目にします。しかしながらそのほとんどがぺらっぺらの紙に大した要因分析も行わないで価格を査定しているものです。

さくら浄水場訴訟では鑑定評価基準に違反しているかどうかも争点となったようですが、宅建業者の価格査定にはそもそも査定についての基準が皆無です。宅建士さんが思うような価格を自分が思うようにつけているだけです。さてこのような査定書で説明責任を果たせるでしょうか?

もちろん市場をダイレクトに反映した査定は可能になるでしょう。だって宅建業者の価格査定にはエイヤーの根拠しかないですからね。

宅建士の考え

理論的っぽく求めた価格は2000万円だけど、それじゃー売れないからエイヤーで500万円と査定するよ!

こんなことが簡単に行なえるので、ダイレクトもダイレクト。宅建業者の査定ならいくらの値段だってつけられちゃうんでしょう。

特に県有地は税金をもって取得されたものです。処分だけを目的として県有地の売却を進めたいのならば、地方自治法の「適正な対価」なんて無視して不当廉売のオンパレードでもすれば良いのにな。と思います。

話しがごちゃごちゃと飛んでしまいましたがこの変で。

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