先日「タワーマンションの課税見直しと階層別効用比について」という記事を書きました。マンションの価格を一棟の全体の価格から各住戸部分に配分して、マンション価格を求めるわけですが、この各住戸部分への配分過程において活用されるのが階層別効用比と位置別効用比です。
マンション価格の評価方法
不動産鑑定評価基準にはマンション(区分所有建物及びその敷地)の評価については、次のように定められています。
区分所有建物及びその敷地で、専有部分を区分所有者が使用しているものについての鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連付けて決定するものとする。
積算価格は、区分所有建物の対象となっている一棟の建物及びその敷地の積算価格を求め、当該積算価格に当該一棟の建物の各階層別及び同一階層内の位置別の効用比により求めた配分率を乗ずることにより求めるものとする。
マンションの積算価格は次の式で表すことができます。要約するとマンション一棟の価格をまず算出し、そこから評価する一室は全体の内の何パーセントの価値率を占めるかを乗じて、一室の価格を求めます。
区分所有建物及びその敷地の積算価格=一棟の建物及びその敷地の積算価格×階層別効用比率×位置別効用比率
階層別効用比
建物は階層ごとに快適性、収益性、機能性により効用差が認められ、この効用差によって価格に差異がうまれます。この階層別の効用の差異のことを「階層別効用比」と言います。
各階ごとに比率で表示しますが、基準(=100)とする階を基準階と呼びます。
基準階
建物の設計上、床面積、用途、間取り、仕様、価格等が同程度の複数階がある中での最下階をいいます。一階にコンビニエンスストアなどの店舗が入っているようなマンションでは2階を基準階とするのが一般的です。
公表されている主な階層別効用比率は下表のとおりです。
A:社団法人日本不動産鑑定士協会東京会(1989年)
B:財団法人首都高速道路協会(1989年)
C:公共用地の取得に伴う損失補償基準(1968年)
手元に最新のものが無いのでやや古い数字を記載していますが、東京都不動産鑑定士協会では、平成19年3月に「首都圏における超高層マンション等の階層別効用比−資料集−」という最新の階層別効用比率資料を公表しています。
位置別効用比
同じフロアとはいえ、同一階層でもその位置の違いによって快適性、収益性、機能性が異なります。そのため効用差が認められ、この効用差によって価格に差異がうまれます。この位置別の効用の差異のことを「位置別効用比」と言います。
位置別効用比が生じる要因としては、開口部の方位、角部屋かどうか、エレベーターの位置、眺望などがあげられますが、最も大きいのは開口部の方位です。一般的には南向きがもっとも高く、東向き、西向き、北向きの順番で安くなっていきます。
角部屋でも方位は重要な要素で、北西角の部屋より、南東角の角部屋は高く価格が設定されています。
まとめ
今回は階層別効用比率と位置別効用比率を紹介するだけとなってしまいました。次回はマンション一室の積算価格をどのように導くのかを具体的に説明したいと思います。