平成12年に施行されてから徐々に指定区域を増やしている土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域に関する書籍です。土砂災害防止法も平成26年11月に改正され、更に指定区域は拡大しています。
本書籍では土砂災害(特別)警戒区域について、37個の質問に答える形でその法律の内容、警戒区域に指定された場合の減価率、更には他の法律や条例との関連について詳しく解説されています。
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著者略歴
内藤 武美
1961年長野県木島平村生まれ。1991年不動産鑑定士登録。1987年~1993年大河内不動産鑑定事務所(東京都)勤務。1993年12月内藤事務所(長野市)設立。現在、内藤事務所有限会社代表取締役(書籍刊行時)
書籍内容
前述したとおり、Q1~Q37までのQ&A形式で文章は構成されています。詳しい項目は発行元のプロフレス(progres)のホームページに記載されています。
URL プログレス|Q&A 土砂災害と土地評価 警戒区域・特別警戒区域の減価率の算定法
概略でまとめると、項目としては3つ
- 土砂災害(特別)警戒区域とは?
- 土砂災害(特別)警戒区域の減価率はどのくらい?
- 他の規制との関連
土砂災害(特別)警戒区域とは?
土砂災害の発生原因は土石流、地すべり、急傾斜地の3つがあります。その3つについて、どのような場所が指定されるのかを具体例をもって説明してあります。
特別警戒区域内は建物の構造規制がありますが、その規制内容についても説明されています。
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土砂災害(特別)警戒区域の減価率はどのくらい?
不動産の評価に携わる者としては、土砂災害(特別)警戒区域に指定されるとどのくらいの減価がされるかが気になりますね。本著ではこの気になる減価率について論じられています。
警戒区域の減価率
不動産鑑定業務では、警戒区域に指定されているからといって、必ずしも個別に減価するとは限りません。
引用:Q&A土砂災害と土地評価 警戒区域・特別警戒区域の減価率の算定法
特別警戒区域については、建物の構造規制がかかるため減価なしという判断にはならないと思います。本著では固定資産税のさまざまな地方公共団体の評価事務取扱要領を紹介し、どのような減価率が固定資産評価の現場で採用されているかが記載されています。
また、不動産鑑定士の視点から防護柵設置を想定した費用や建築制限率、市場性の減退を考慮した減価率が示されています。
概ね▲30%程度となったようですが、建物の想定等によってかなり減価率は変わってきそうです。
他の規制との関連
特に固定資産税の課税のための土地評価に際しては、他の類似した減価率との併用の有無が問題となります。
他の類似した減価率については、例えば次のようなものがあります。
- 無道路地
- 急傾斜地特別警戒区域
- がけ地
- 都市計画道路予定地
- 高圧線(高架線)下地
- 砂防指定地
- 地すべり防止区域
- 宅地造成工事規制区域
- 浸水想定区域
その他、土砂災害(特別)警戒区域の減価率の適用範囲は宅地だけなのか?雑種地や原野にも適用されるのか?についても言及されています。
まとめ
本著は土砂災害防止法と不動産の価格との関連についてまとめられた例のない名著です。不動産鑑定士のみならず、税理士や固定資産税の評価担当者に対しても必ず一読すべき一冊なんじゃないでしょうか。
著者の内藤武美氏は本著だけではなく、土砂災害防止法と鑑定評価上の留意点というタイトルでEvaluationという専門誌にも寄稿されています。
土砂災害防止法と鑑定評価上の留意点(上)|内藤武美
土砂災害防止法と鑑定評価上の留意点(下)|内藤武美
また農地の評価・調査にも著書があります。