隅切り(すみきり)という不動産用語を知っているでしょうか。漢字は隅切りのほか、すみ切り、角きりなどとも書かれます。
この記事では隅切りと表記します。
隅切りとは?
隅切りとは、道路の交差点の角を曲がりやすくするために切り取ること、角を削ることをいいます。文字にすると分かりづらいので下の図をご覧ください。
丁字路の図がありますが、角が切り取られています。この部分を「隅切り」と言います。隅切りを設けることで、大きく膨らむことなく曲がることができるばかりでなく、進行方向の視認性があがり対向車などの障害物が見やすくなります。
隅切りは都道府県道などの公道だけでなく、開発道路や位置指定道路に見られる私道であっても必要とされており、道路を新設する場合には、既存道路への接続部分に隅切りを設けることが必要となります。
具体的には、都道府県の条例や開発指導要綱などに規定されています。概ね同じような基準が規定されていますが、それぞれの地方自治体によって基準は様々ですので個別で確認することが必要です。
隅切りの具体例
隅切りにはどんなものがあるでしょうか?
長野県のホームページに指定道路の技術基準(すみ切りの基準)が掲載されていました。分かりやすかったので、引用して具体例を説明していきます。
一般的な隅切り
図では隅切り部分の2辺が2mと定められています。これは全国統一ではなく、各地方自治体により異なりますし、道路の幅員などによっても異なってきます。
三角形の長辺が2mと定められている場合も多いです。
一般的な隅切り
建築基準法42条2項道路との交差
建築基準法42条2項道路、つまりセットバック(敷地後退)のある場合の隅切りの例です。セットバック部分についてはゆくゆくは道路となることが前提となりますので、セットバック後の道路線(道路後退選)を前提として隅切りが設けられます。
鋭角に接続する交差部
交差点が鋭角な場合、鈍角な場合には要注意です。別の規定が設けられている場合があります。特に鈍角の場合には隅切りを設けなくても良い場合があります。ほとんどの場合は、120度を超える角度の場合は隅切りが不要となります。調べていたら150度の自治体もあったので各自治体でご確認ください。
水路のある交差部
新設道路の間に水路が介在する場合は、水路を含んで隅切りを設けます。水路部分に私道を設ける場合には別途占用許可が必要となる場合が多いです。
歩道のある既存道路との交差部
間に歩道が存在する場合です。
中間で屈曲する部分の隅切り
道路がクランチとなっている場合でも隅切りが必要となります。
公図と現況が異なっている場合
不動産を調査していると、公図と現況が異なっている場合がよくあります。現況では隅切りがなされているのに、公図上は長方形、隅切りがなされていないケースなどです。
このような場合は、まず現況と公図が異なっていることを正確に把握する必要があります。自治体によっては敷地後退部分や隅切り部分の買い取り制度や寄付制度、助成金などが用意されている場合がありますので、確認しましょう。
また、隅切り部分については現況道路として利用されていますので、固定資産税・都市計画税については課税が免除されている場合があります。もし免除されていなければ、免除が可能かどうかについても確認します。
隅切り部分の建築基準法の扱い
隅切り部分が分筆されて道路管理者の所有になっている場合は別ですが、現況隅切りでも所有が一体となっている場合は、建築確認においては敷地面積に隅切り部分を含めることができます。
つまり隅切り部分は、実際には利用できなくても建ぺい率、容積率の計算では隅切り部分面積を含めて計算することができます。その分だけ大きな建物を建築することができます。
裏を返せば、建ぺい率や容積率の上限一杯の建物を建築した後、隅切り部分を自治体に寄付した場合、現在の建物が既存不適格建物となってしまう可能性もありますね。
終わりに
より深く隅切りを考察したい人はポータルサイト「デイリーポータルZ」の記事が参考になります。参考になるっていうよりも面白いです。最後には歴史的な考察もありますので、是非お読みください。