建築基準法を理解する上で、もっとも基本的なことがらが、建築物という用語を確認することです。
というのも、建築基準法は、建築物についての基準を定めた法律だからです。
建築基準法 第1条(目的)
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
ここでは、建築物の定義を確認するとともに、建物とは何が異なるのかについても説明していきます。
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建築物の定義
建築物は建築基準法の第2条第1号で定義されています。
建築基準法第2条(定義)
一 建築物
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
つまり、土地に定着する工作物のうち、以下のものを建築物と定義しており、建築設備も建築物に含まれます。
- 屋根及び柱若しくは壁を有するもの
- これに附属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設
観覧のための工作物とは?
観覧のための工作物とは何でしょうか?
具体的には、野球場やサッカー場、競馬場などのスタジアムを指します。
このような観覧のためのスタジアムは屋根のない部分も建築物として取り扱われることになります。
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建築物から除かれるもの
括弧書きで「鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。」とも書かれています。
跨線橋(こせんきょう)という用語は難しいかもしれません。
跨線橋(こせんきょう)は、文字のとおり、線路をまたいで、架けられた橋です。駅のホームをつなぐ通路をイメージすると分かりやすいかもしれません。
このような跨線橋などは建築物として扱われません。つまり建築基準法の対象となりません。
建築設備とは?
建築物には建築設備も含むと書かれています。
建築設備とはどのようなものでしょうか。
建築基準法第2条(定義)
三 建築設備
建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
建築物と建物は何が異なるのか?
建築基準法では建築物という用語が使われており、建物という用語は使われていません(宅地建物取引業という言葉では出てきます)。
では、建物という用語が使われる法律には何があるでしょう?
建物とは?
不動産登記法や民法では建物という用語が使われており、建築物はでてきません。
その中で、不動産登記規則で建物が定義されています。
不動産登記規則第111条(建物)
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
不動産登記法にいう建物は、具体的には「定着性」「外気分断性」「用途性」の3要件を満たす建造物のことをいいます。
別記事「建物が登記できる要件は何?3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」を説明します。」では、具体例をあげてこの3要件について説明しています。
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建物が登記できる要件は何?3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」を説明します。
不動産の登記を調べているとき、建物が登記されていないことって多々ありますよね。建物が現実に存在するのに建物の登記がないのには色々な理由があります。 では、そもそも建物として登記ができるようになるには、 ...
参考にしてみてください。
建物と建築物との違いは?
定義をみながら建物と建築物の違いについて考えてみましょう。
建築物には、門扉や塀も含まれます。しかしながら、門扉や塀は工作物と呼ばれ、建物には含まれません
工作物の定義
「工作物」とは、人為的な労作を加えることにより、通常、土地に固定して設置されたものをいう。
参考 建設廃棄物処理ガイドライン
また、屋根のない観覧施設(スタジアムなど)も建築物に含まれるとされていますが、建物には含まれません。
不動産登記事務取扱手続準則第77条では、スタジアムの観覧席は屋根を有する部分のみが建物に該当すると記載されています。
不動産登記事務取扱手続準則第77条(建物の認定基準)
建物として取り扱うもの
- 野球場又は競馬場の観覧席。ただし,屋根を有する部分に限る。
門扉・塀、屋根のないスタジアムの観覧席の例をみても分かるとおり、建築物は建物よりもやや広い概念だということが分かると思います。
wikipediaにも、工作物の箇所で建物と建築物の違いについて、下のように記述されています。
工作物
建築関連の法律等で、門・塀・電柱・建物・トンネル・溝渠など、地上または地中に、人工的に製作し設置された建造物等。建築物については建築基準法に定義されており、建物は不動産登記法上の「建物」は建築物よりは対象範囲が狭くされている
更に具体的に、どのようなものが建築物に該当するかが、下で紹介する書籍には記載されています。
海水浴場の休憩所は建築物に該当するのでしょうか?大規模なテントは建築物に該当するのでしょうか?海上ホテルは?
建築物に該当するかどうかは実務的には非常に難しい問題です。さらに建築物について知りたい方は、下の書籍などを参考にしてみてください。