農地を宅地へと地目変更する場合、農地転用許可書が必要なのはもちろん(農地法第4条・第5条)。当該土地の現況が宅地として認められることが必要です。
建物の建築工事が最後まで完了した場合は問題となることはありませんが、建築工事が途中で建物が完成していないとき、どの程度の工事の進捗状況ならば宅地への地目変更が可能かが問題となります。
宅地とは?
宅地の定義は不動産登記事務取扱手続準則第68条(地目)に定められています。
第68条3号(宅地)
建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
登記上の地目は現況主義をとっているので、農地転用の許可を得たとしても当然には宅地への地目変更は認められません。
工事のいつの段階で宅地となる?
宅地の造成工事が終わったのみでは、宅地への地目変更は認めないこととされています。
対象土地を宅地に造成するための工事が既に完了している場合であっても、この土地が建物の敷地に供されているとき、又は近い将来それに供されることが確実に見込まれるときでなければ、宅地への地目変更はしない
昭和56年8月28日、民三第5402号民事局長通達
造成工事からさらに進んで建物の基礎工事が完了しているときは近い将来確実に建物の敷地に供されることと見込まれ、宅地への地目変更が可能となります。
次の各号のいずれかに該当するときは、対象土地が近い将来建物の敷地等に供されることが確実に見込まれるものと認定して差し支えない。
- 建物の基礎工事が完了しているとき。
- 対象土地を建物の敷地等とする建物の建築について建築基準法第六条第一項の規定による確認がされているとき。(建築確認)
- 対象土地を建物の敷地等とするための開発行為に関する都市計画法第二十九条の規定による都道府県知事の許可がされているとき。(開発許可)
- 対象土地を建物の敷地等とする建物の建築について都市計画法第四十三条第一項の規定による都道府県知事の許可がされているとき。(市街化調整区域における建築許可)
昭和56年8月28日、民三第5403号民事局第三課長依命通知
建物の基礎工事は、単にコンクリートブロックを並べただけのようなものは認められません。布コンクリートで擁壁をし、水道・ガス・下水道などの建物に付随する設備の工事が行われた状況になり、はじめて宅地への地目変更が可能となったと解されます。
建物の建築されていない造成団地の地目は?
○○ニュータウンなどの大規模造成団地には空地も多くみられます。もちろん建物の基礎もありません。ではこのような土地の地目は何になるんでしょうか?宅地?雑種地?
第68条3号(宅地)
建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
宅地の定義を再掲しましたが、宅地は原則として建物が現存することを前提にしています。最低でも基礎工事などが済んでいることを求めています。
しかしながら、先ほど記載した「昭和56年8月28日、民三第5403号民事局第三課長依命通知」の2~4のとおり、都市計画法、農地法、建築基準法等において要求される許認可を得ており、利用目的が公文書により明らかにされているときは、建物が近い将来建築される蓋然性が高まります。
造成団地などでは、開発行為による許可(都市計画法第二十九条の規定による都道府県知事の許可)を得ている場合がほとんどです。団地内には水道・下水道や電気などのライフラインも整備されていることから、建物の建築工事が具体化していなくても近い将来建物が建築されるものとして、宅地として認定されることがあります。
山林を切り開いた別荘団地は?
上の記述は全て農地に関するものです。
高原型の別荘地では山林を切り開いた造成団地も存在しますが、同じように宅地と認めることができるでしょうか?
「昭和56年8月28日、民三第5403号民事局第三課長依命通知」は農地を農地以外のものとする場合の登記官の判断基準を示したものですが、山林の場合も同様に扱うものと解されています。
しかしながら、別荘地の中には、道路や上下水道などは整備しても樹木が生い茂った状態のままのものもあります。別荘地であれば樹木がそのままの方が多いのかもしれませんね。このような場合は、近い将来建物の敷地等に供されることが確実とは見込まれないと判断され、山林から宅地への登記申請が受理されないことも多いようです。