税法上の区分で「建物」「建物附属設備」「構築物」の3つがありますが、その区分については曖昧な人が多いと思います。
耐用年数の適用等に関する取扱通達
- 第1節 建物
- 第2節 建物附属設備
- 第3節 構築物
「建物」「建物附属設備」「構築物」の定義を再確認するとともに、具体例と主な耐用年数を解説していきたいと思います。
建物とは
建物(建築基準法では建築物と言います)、は、土地に定着し、人の出入りすることができる構造のもの一般を指す名称です。
固定資産税の建物認定の現場でも不動産登記法に則って行われるケースが多いので、不動産登記法の建物の定義を確認してみましょう。
不動産登記規則第111条(建物)
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
この条文を読むと、建物は3つの要件を満たしていることが必要であると分かります。
- 屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し(外気分断性)
- 土地に定着した建造物(定着性)
- その目的とする用途に供し得る状態にある(用途性)
ちょっと難しい話になりましたが、具体例をあげると、住宅、共同住宅(アパート・マンションなど)、店舗、工場などが建物です。
建物の定義や具体例について、詳細に知りたい方は別記事「建物の種類の一覧とその判断基準をまとめてみました。」「建物が登記できる要件は何?3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」を説明します。」
参考 建物が登記できる要件は何?3要件「定着性」「外気分断性」「用途性」を説明します。
建物の耐用年数
税法では、恣意性を排除する目的で「資産の種類」「構造」「用途」の別に耐用年数が定められています。
参考までに住宅・共同住宅の耐用年数を転記しておきます。
構造用途 | 耐用年数 |
木造・合成樹脂造のもの | 22年 |
木骨モルタル造のもの | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造のもの | 38年 |
金属造のもの(4mm超) | 36年 |
金属造のもの(3mmを超、4mm以下) | 27年 |
金属造のもの(3mm以下) | 19年 |
引用 国税局|主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)
建物附属設備とは?
建物附属設備とは、電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、運搬設備等の家屋と一体となって家屋の効用を高める設備をいいます。
建物附属設備の具体例
- 電気設備
- 給排水設備
- 衛生設備
- ガス設備
- 冷房、暖房、通風又はボイラー設備
- 格納式避難設備
- 店用簡易装備
衛生設備についての定義があいまいな点がありますが、一般的には、給水設備・排水設備・消火設備・給湯設備・し尿浄化設備・ガス設備を総称したものを言います。
建物附属設備の耐用年数
建物附属設備の耐用年数の具体例を紹介します。
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
アーケード・日よけ設備 | 主として金属製のもの | 15年 |
その他のもの | 8年 | |
店舗簡易装備 | 3年 | |
電気設備(照明設備を含む。) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
その他のもの | 15年 | |
給排水・衛生設備、ガス設備 | 15年 |
引用 国税局|主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)
尚、木造建物の附属建物については、建物と一括して償却することが認められています(同じ耐用年数を適用することができる)。
ただ、節税の観点からは、別の耐用年数を用いて減価償却費を大きくした方が経費計上を多くできます。
木造建物の特例
建物の附属設備は、原則として建物本体と区分して耐用年数を適用するのであるが、木造、合成樹脂造り又は木骨モルタル造りの建物の附属設備については、建物と一括して建物の耐用年数を適用することができる。
細かい話にはなりますが、「附属」「付属」なのか迷うことってありますよね。こちらの記事「「附属」と「付属」の違い。使い分けについて説明します。」を読んでいただければすっきりと解決すると思います。
参考 「附属」と「付属」の違い。使い分けについて説明します。
構築物とは
構築物とは、土地の上に築造された建物(建築物)以外の工作物のことをいいます。
建物附属設備と構築物の違いは、建物に附属しているかどうかです。建物に附属しないで機能する工作物が構築物です。
構築物は多岐にわたるので、代表的なものだけ例示したいと思います。
構築物の具体例
- 塀・門扉
- 橋梁
- 水泳プール
- すべり台などの遊戯用具
- 舗装設備
- サイロ
- トンネル
アパート投資では建物・建物附属設備・構築物の区分をすることで節税効果アップ!
賃貸用の投資物件、具体的にはアパートやマンションを購入した場合、土地と建物だけの勘定を分け、建物附属設備や構築物の勘定項目に購入費用を振り分けないケースがみられます。
しかし、建物の耐用年数よりも建物附属設備や構築物の耐用年数の方が短いのが一般的なので、きちんと建物附属設備や構築物勘定に購入費用を振り分けることによって、短期的には減価償却を大きくすることができます。
減価償却を大きくすることができるということは経費をそれだけ計上することができるということなので、利益を減らすことになり、節税効果を生み出すことができます。
建物価格を建物・建物附属設備・構築物にどのように配分したら良いか分からない。
そんなときもあると思います。新築時の建築請負工事の見積書を売り主さんから取得することによって、建物・建物附属設備・構築物の割合を推測することができます。
基本的には税理士さんに相談すれば対応してくれるはずです。
今お願いしている税理士さんが、アパート経営の税務にうとい、節税に関する提案をしてくれない、なかなか意見が合わない。という場合は、税理士を紹介してくれるエージェントサービスもあります。
知っている税理士が、アパート経営の税務に詳しい税理士とは限りません。どの分野に強い税理士かを見極めた上で税理士選びをしましょう
紹介に関しては無料となるので、試しに税理士探しをしてみてもいいかもしれませんね。