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アパートローンは過熱していない。との日銀総裁の判断はこれいかに?

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12月20日は日銀の金融政策決定会合でした。その際の記者会見で黒田東彦総裁は「アパートローンは過熱していない。」という旨の発言をされたようです。

日銀総裁、不動産向け融資「過熱感はないが適切なリスク管理を」

日銀の黒田東彦総裁は20日の金融政策決定会合後の記者会見で、金融機関による不動産向け融資が増加していることについて、都市部を中心とする貸家需要の増加があると指摘した。現時点では「過熱はしていない」との認識を示したが不動産向け融資は長期にわたり金融機関の経営に影響を与えると説明。「リスク管理をしっかりするよう促していきたい」と語った。具体的には融資実行後の物件の状況把握が必要との考えを示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

引用:日本経済新聞

あれ?これって一般国民の肌感覚とはかなりずれていますよね。明らかにアパートローンは過熱しているような気がします。

参考:にわか大家の激増で都心のアパート空室率は3割超?これ本当?

上の記事にも書きましたが、今の日本では大家が激増しています。そしてその理由は主に2つが言われています。

  • 課税対象者の拡大による相続対策目的のアパートの増加
  • 金融機関のスタンスの変化による個人投資家への融資の拡大と低金利

相続目的のアパートが増加しているっていうのと、金融機関のスタンスの変化による個人投資家の増加です。

大家になるためには元々が地主、又は資産家である必要があります。でもサラリーマンでも投資がしたい!以前は金融機関はそんな不動産投資を始めたい人には冷たい立場でした。高い年収やほかに資産が無いと貸してくれなかったんですよね。

でも今は違います。投資案件がそれなりの収支が見込むことができれば、融資の決裁がおりてしまいます。そのため、ごく普通のサラリーマンが不動産投資を始めやすくなったといわれています。

アパートは増加している。

これは統計にもよくあらわれています。

下のグラフは国土交通省の発表している最新の建設着工統計(平成28年10月)です。

直近の数字ではやや下がっていますが、持ち家や分譲住宅と比べて明らかに昨年一昨年よりよくなっている数字がありますね。それが貸家(アパート、賃貸マンション)です。

前年同月比では12か月連続の増加、昨年同月比では22.0%の増加となっています。

中古アパート・マンションの価格が上昇している。

数の増加だけではありません。不動産の現場にいると、明らかにこれ高いね?と思う中古アパート・マンションの取引が多く見受けられます。

地方でもこんな状況なので都会では尚更でしょう。

謄本を取ってみると、買い主はほとんど東京などの都心部の個人または法人です。地方圏ではまだまだ高い利回りの物件が残っているということでしょうか。

こんな田舎の何もないところでグロス8%とか大丈夫?などと心配してしまいます。中には新築できるんじゃない?なんて価格の取引もあります。

アパート融資の拡大

これは金融機関の融資額の拡大にも直結します。

銀行や信用金庫の不動産向け融資が急増している。日銀によると、今年4~6月期の新規貸出額は前年同期比22.0%増の3兆1271億円に達し、バブル期の1989年に記録した4~6月期のピーク(2兆7679億円)を27年ぶりに更新した。日銀が今年2月にマイナス金利政策を導入したことで、運用難に陥った資金が不動産市場に流入しているためだ。

新規貸出額は都市銀行や地方銀行など145行と、265信用金庫の合算。不動産向けは年度末にかけて膨らむ傾向があり、今年1~3月期は15.7%増の4兆4113億円と、全四半期を通じて過去最高となった。4~6月期は1~3月期に比べて総額は減ったが、伸び率では上回り、増加ペースは加速している。

引用:Yahoo!ニュース|不動産融資、バブル期上回る=マイナス金利で流入―4~6月

不動産融資が過熱しているというニュースは今年の夏ころから頻繁に目にします。上の記事にもあるとおり、不動産向け融資はバブル期(1989年)に記録したピークを27年ぶりに更新するほどの勢いです。

不動産向け融資は年度末にかけて膨らむ傾向があるので、今年度末に向けてまだまだ増加することでしょう。

金融機関のスタンスの変化は?引き締めがくる?

金融機関の人と話していても、アパートローンについては異常だという話はたまにでてきます。金融機関も融資先は喉から手が出るほど欲しいので仕方ない面もあるのかもしれません。それにしてもじゃぶじゃぶとお金を出しすぎですよね。

「金融庁が不動産投資への融資を引き締めようとしている」なんて話題もたまにでてきます。1年前からそんな話をしている気がするので、そろそろか?って思う反面、引き締めは無いんじゃないか?とも感じてしまいます。

アパート増加により空室率も上昇してきているらしいので、金融機関もリスク管理が難しい判断が必要になりますね。

後になって儲かったのは、アパートの建築会社と管理会社で、大家だけ泣きを見る。なんてことが無いと良いですね。




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