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にわか大家の激増で都心のアパート空室率は3割超?これ本当?

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12月に入りましたね。12月1日といえば流行語大賞発表の日。本日の午後5時に年間大賞とトップテンが発表されるようです。

URL:ユーキャン新語・流行語大賞

不動産業界で流行語大賞を決めるとすればどのような新語がはいるのでしょうか。

豊洲問題、サラリーマン大家、低金利、インバウンド

私が思うがままに羅列してみましたが、こんな感じでしょうか。この中でも”サラリーマン大家”は今年に限りませんが、最近のアパート投資の中ではホットなワードではないでしょうか。

昨日ですが、bloombergでこんな記事がありました。

タスの新事業開発部長、藤井和之氏は「相続税対策目的のアパート新築が影響している可能性がある」と述べた。資産を現金で保有するよりも、土地・建物の方が相続税の課税評価額が低く、アパート経営には節税効果がある。15年の税改正で課税対象者が広がったり、税額も増えたことで、アパート経営やマンション購入の動きに拍車が掛かった。国税庁の発表では、15年の大家の数(不動産所得申告者数)は3年連続増加の326万人。3年間で約3万7000人増えた。

引用:人口減なのに増えるアパート、空室率3割超-低金利でにわか大家

個人の大家が3年連続で増加しているんですね。この中にはさきほど書いたサラリーマン大家も含まれています。

大家増加の理由

記事にも書かれていますが、大家が増加している理由としては次の2点がよく言われています。

  • 課税対象者の拡大による相続対策目的のアパートの増加
  • 金融機関のスタンスの変化による個人投資家への融資の拡大と低金利

課税対象者の拡大による相続対策目的のアパートの増加

2015年1月1日から相続税の基礎控除額が引き下げられました。

従来の基礎控除額は、定額控除額5,000万円と、比例控除額(1,000万円×法定相続人の数)で計算されていました。しかし、2015年1月1日からは、定額控除額3,000万円と、比例控除額(600万円×法定相続人の数)で計算します。

そのため、従来であれば課税対象にならなかったであろう人が相続税の課税対象になる可能性がでてきます。結果相続税の節税対策としてのアパート投資が増加しています。遊休地をもっているような地主さんなどは特にアパートを建ててしまった方が節税効果が大きいので、投資目的というよりは節税目的でアパートを建てる方が多いです。

金融機関のスタンスの変化による個人投資家への融資の拡大と低金利

アパートを建てるなどの、賃貸物件への投資は地主などのお金持ちだけのもの。そのような考えが昔はありましたが、今は違います。

普通にサラリーマンとして企業に勤める傍ら、収益物件に投資する人が増えています。サラリーマン大家ですね。

以前は金融機関に融資申し込みをしても断られていたような人も、金融機関のスタンスの変化、そして昨今の低金利によりアパート投資がしやすくなっています。本業のサラリーの低下とも相俟って、副業として投資を始める人が増えています。

アパートの増加により空室率は上昇している?

さて、さきほどの記事。「人口減なのに増えるアパート、空室率3割超-低金利でにわか大家」のタイトルにもあるように、空室率3割超!なんて書かれています。

また記事を引用してみます。

調査会社タスによると、アパートの空室率は少なくとも13年以降は30%前後で推移していたが、昨夏から悪化し始め、今年9月時点では神奈川県37%、東京23区と千葉県が35%に達している。

引用:人口減なのに増えるアパート、空室率3割超-低金利でにわか大家

神奈川県では37%。東京23区と千葉県では35%と3割超の空室率が発生していると書かれています。

都心だけの数字ではありませんが、大東建託の空室率は2016年8月末で3.6%とIR資料に係れています。この数字は居住用だけではなく事業用も含めての空室率なので、居住用の空室率はもう少し空室率が小さい可能性もあります。

参考:大東建託が引き続き好調、4~9月経常最高益の650億円との報道が。

また賃貸物件のポータルサイト「HOME'S不動産投資」でも空室率を公表しています。東京都の平均の空室率は14.5%。大東建託のアパートよりも古いものを多く含んでいると考えられるので、空室率は大東建託よりも高くなりますが、それでも14.5%です。

参考:HOME'S|全国の賃貸用住宅の空室率一覧

区市町村別の空室率も発表されていますが、いちばん悪くてもあきる野市の23.0%です。3割を超えている地域はありません。千葉に行くと県平均で20.5%。悪い市町村では3割を超えるところもちらほらと出てきます。

記事に戻ってみると、空室率が3割越えの根拠は株式会社タスの資料のようです。さて、このタスの数字は信頼性があるのでしょうか?

タス空室率インデックスの危険性

以前「タス空室インデックス(空室率TVI)は満室の賃貸住宅を除いて計算をしているので注意が必要」の記事でも書きましたが、タスの空室率の算定方法は特殊です。

詳しくは前に書いた記事を読んでいただきたいんですが、満室のアパート・マンションは考慮せずに空室率を計算するんですね。そのため空室率が高めに査定されます。

2016-11-07_09h26_14

上の例では一般的な空室率の計算方法では

3室(空室)÷24室(全室)=12.5%(空室率)

と、計算し空室率は12.5%となりますが、上に記載してあるとおり、満室のアパートマンションは考慮しないため25.0%の空室率と計算されます。

市場では12.5%の空室率なのに、25.0%の空室率となってしまうんですね。上の例は極端な例ですが、満室のアパートマンションが増えれば増えるほど空室率が上昇するという訳の分からない計算なんです。

記事の空室率の計算が、タス空室率インデックスの計算方法と同じように計算しているかは正直分かりません。

しかしながら、同じ計算方法を用いて3割超と話しているのであれば、かなり強引な話になります。

3割超は言い過ぎでは?

もちろん3割超の根拠がしっかりとしている可能性もありますが、他の資料を見たり、都内の不動産業者さんの反応を見る限り、空室率3割超は言い過ぎじゃないかなという気がします。

特に空室率に関しては、物件やもっと細かいエリアで差が激しい指標です。東京23区や千葉などと大きいエリアで話してもあんまり参考にならないかな?と個人的には思います。

平成28年で貸家が増えたのはどの都道府県かの分析も行っています。

参考:住宅着工統計にみるアパートの増加、どの県が一番増加したのか?

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