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国土交通省が一定の品質基準を満たす中古住宅に建敷いて統一ブランドを付して、中古住宅流通を促進させる検討を具体化させる報道がありました。
国交省 中古住宅の品質をブランド化で流通を促進
国土交通省は23日、一定の品質基準を満たす中古住宅に対し、新たな統一ブランドを創設する方向で具体的な検討に入った。耐震性のほか、外観のきれいさなどを基準要件に含める。政府は中古住宅流通の市場規模を約10年間で倍増する方針を掲げており、ブランド化によるお墨付きで中古住宅への不安を払拭し、流通促進につなげる。
引用 産経ニュース
国が統一されたブランドを創設することによって、品質を保証。中古住宅の購入を検討する消費者に安心感を与え、中古住宅の流通を活性化させることが目的です。
品質基準
具体的な品質基準については、次回3月の検討会やその後の検討会によって骨子が固まってくるようですが、今考えられてるのは次の基準です。
- 新耐震基準に合致していること
- 建物状況調査(インスペクション)実施、結果を開示
- 構造上の不具合、雨漏りが認められないこと
- 既存住宅売買瑕疵保険が付与されること、または同等の自社保証
- 水回り、内外装の現況の写真を開示すること
- 広告・商談時に消費者の求めに応じて情報開示を行うこと(耐震性、瑕疵、現況と新築時の情報、回収履歴、共同住宅の場合は共用部の管理状況)
国に登録した事業者団体を通じて、「○○住宅(名称未定)」のブランドで売り出すことになるようです。品質基準が地域事情も踏まえて、各地の事業者団体が定め、物件ごとのブランド付与は各事業者が判断します。
ここまでが国交省の考えているブランド化の概要ですが、本当にこれで中古住宅の流通は促進されるんでしょうか?
ブランド化により中古住宅流通は促進されるのか?
宅建業者だけが知っているマイナーなブランドになりやしないかという懸念
普通、一般の消費者にとっては住宅は生涯一度の買い物。何度も購入するようなものではありません。ほとんどが一回。普通に生活していれば、多くて2回程度です。
住宅の購入について考える、勉強する機会も同じ程度です。当然売り手である宅建業者と買い手である一般消費者には持っている情報量に差が生じます。この中古住宅ブランド化についてもそうですね。宅建業者では、「こんな制度がはじまったか!」とみなさんに周知されることでしょうが、一般消費者はほとんど知りません。
中古住宅を買おうと探している購入者層はどうでしょう?このブランドをいつ知るんでしょう?
多分私が思うに、中古住宅を見に行った、宅建業者の説明の中でこのブランドを知ることになる人が多いと思います。この程度のブランドで、本当に流通が活性化されるの?って思いませんか。
新築を検討している人が、新ブランドが付いている中古住宅であれば、中古住宅でも良いな。と選択肢に入れてもらうのが大事です。はじめから中古住宅でも良いかと考えて内覧している層にいくら訴えてもパイはそれほど増えないんじゃないでしょうか。
中古住宅の活性化で大事なのは、新築を検討している層をどうやって取り込むか。だと思いますが、ブランド化ではその観点にやや欠けているような気がしてなりません。
事業者団体が定めた基準を信用できる?
次に品質基準です。ブランドは国が定めた「○○住宅(名称未定)」という商標で統一されますが、品質基準は各地方の事業者団体が個別に定めます。そしてブランドの付与判断も各事業者団体が行います。
枠組みだけ国で作るから、後は事業者団体でやってね。というスキームです。
今、中小の不動産業者と大手の不動産業者では、事業者数は7:3、もしくは8:2程度で中小不動産業者が多いと言われています。しかし、売り上げで考えるとこの比率は逆転します。大手が7割又は8割です。数の多い中小不動産業者が売り上げになると大手不動産業者に負けてしまう。
ここには大手ならではの情報量も大きな要素ではありますが、「信用力」が一番の違いだと言われています。
この大手には絶対勝つことのできない信用力を中小不動産業者が得ることができるようになれば、消費者にも安心を与えることができます。
この点、このブランド化の流れは「国の保証」という絶大なる信用力を付与してくれそうな気もします。
しかしながら、中身を見てみると、品質基準は事業者団体が定め、品質判断も事業者が行います。自分たちで良し悪しを判断して「この中古住宅良いですよー」と言って売るのとなんら変わらない気がしませんか?
本当に消費者の安心につながるんでしょうか。
また中古住宅には、築10年や20年程度の比較的築が浅い中古住宅と、築50年も経過しているようなかなり古い傷んだ中古住宅があります。
築浅の中古住宅であれば、今でも放っておいても売れていくような状態です。ブランドを付すことがなくても全然売れちゃうんですよね。売れないのは築50年などの傷んだ、古い住宅です。このような住宅には新ブランドを付与することはかなり難しいです。大規模な耐震工事をしないといけないでしょうし、瑕疵保険が付与される基準もかなり厳しいです。そんなリフォーム工事をしてしまったら、結構な高額リフォームになってしまいますね。一般的に築50年などの古い家を需要している層は、そこまでお金をかけたくない(かけられない)人々が多いです。ブランド付与のために、大規模なリフォームをやるようなインセンティブが働かないんじゃないでしょうか。
まとめ
色々と批判的なことを書きましたが、中古住宅の活性化は大変重要な事業です。うまくいくことを願っています。
この中古住宅ブランド化は国交省の「流通促進に寄与する既存住宅の情報提供制度検討会」にて検討されています。
委員はこちら。
- 池本 洋一|(株)リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長
- 市川三千雄|(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 専務理事
- 浴野 隆平|(一社)住宅生産団体連合会 住宅ストック研究会座長
- 大堀 一平|(一社)不動産流通経営協会 業務・流通委員会委員長
- 熊谷 則一|弁護士
- 齊藤 広子|横浜市立大学国際総合科学部 教授
- 城山 浩二|(一社)住宅リフォーム推進協議会 市場環境整備委員会委員長
- 中村 裕昌|(公社)全日本不動産協会 専務理事
- 西山 祐幸|(一社)住宅瑕疵担保責任保険協会 運営委員
- 深尾 精一|首都大学東京 名誉教授(座長)
全宅連も全日も両方入っていますね。
この議事資料を読んでいくと、中古住宅の従来のイメージ「不安」「汚い」「わからない」のイメージ払拭を第一に考えているようです。個人的には物件のイメージ払拭も大事ですが、不動産業界のイメージをクリーンなものに変えることも大事なんじゃないかな?と思ったりもします。