空き家対策特別措置法の施行などもあり、空き家については自治体と不動産屋、そして空き家所有者も関心が高まっています。
具体的に空き家をどのようにすれば良いのか。空き家所有者は何がなんでも手放したい!早く売ってしまいたい!と思っている方が少なくありません。
都会に出てしまった人が田舎に残してきた実家などは特にそうですね。親戚も少なくなってきて地元に帰ることもなくなり、実家を管理するのも大変なので手放したいという話はよくあることです。
しかしこのような家はかなり築年数が経っており、建物はオンボロ。手放したいとはいうものの、売却した後に色んな瑕疵が出てきて責任を求められても困っちゃうというのが空き家所有者の本音じゃないでしょうか。
さて、このような古い建物に対する責任はどのように回避すればよいでしょう?
売買にあたって、よく耳にする言葉「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」について解説します。
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売買契約における瑕疵担保責任とは?
売買契約の目的物。つまり中古住宅に、買い主が知らなかった欠陥や損傷などの瑕疵(かし)がある場合に、売主が負う責任のことを瑕疵担保責任といいます。
「瑕疵(かし)」とは、欠陥や損傷、破損などによって、目的物たる不動産、中古住宅が通常有すべき品質・性能を欠くことをいいます。具体的には雨漏りなどですね。このような瑕疵には物理的な損傷だけではなく、心理的な瑕疵(自殺や他殺物件)や法律的な瑕疵(建築不可能物件)も含まれます。
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瑕疵担保責任は無過失責任です。
つまり、売主が瑕疵の存在を知らなかったとしても責任を負います。知らなかったことについて、過失がないとしても責任を負うというのが特徴です。
民法の規定(瑕疵担保責任)
- 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
民法566条もみてみましょう。
- 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
- 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
- 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
宅建業法の規定(瑕疵担保責任)
- 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第570条において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
- 前項の規定に反する特約は、無効とする。
瑕疵担保責任を負う期間
売り主は瑕疵担保責任をいつまで負うのでしょう?民法では、原則として、売主は買い主が瑕疵の存在を知ったときから1年間の瑕疵担保責任を定めています。
ただし、不動産の売買契約書において、これとは異なる期間を定めることもできます。
空き家売買における瑕疵担保責任をどう扱う?
所有者の側からすると、なるべく瑕疵担保責任は軽減したいものです。田舎の山村集落の空き家などでは、安くても良いからなるべく責任がないように簡単に売却したいという所有者ニーズは多くあります。
では、瑕疵担保責任の免責条項を定めることはできるのでしょうか?
瑕疵担保責任の免責条項を定める。
瑕疵担保責任を定める民法第570条は任意規定とされているので、不動場の売買契約上、売り主が瑕疵担保責任を負わないとする特約は有効です。
瑕疵担保責任の免責条項ですね。
しかしながら、売り主が瑕疵を知っていたときはどうでしょう?例えば、中古住宅に雨漏りがあるのを知りながらにして黙って売ってしまった場合です。瑕疵とは隠れた欠陥を指します。売り主が知っていた欠陥は瑕疵ではありません。そのため瑕疵担保責任の免責はなくなります。欠陥があった場合は必ずきちんと買い主に説明した上で、その欠陥の中身を承知の上購入してもらう必要があります。
瑕疵担保責任の免責条項を入れられない場合
瑕疵担保責任の免責条項はいつでも有効という訳ではありません。一部例外があります。
売り主が不動産業者(宅建業者)であった場合
今は空き家所有者の個人ば売り主であることを想定して話していたのですが、売主が宅建業者であった場合は、不動産売買契約に瑕疵担保責任の免責の特約は入れることができません。
売り主が宅建業者で、買い主が宅建業者でない場合、宅建業法により「売り主が瑕疵担保責任の期間を引渡し日から2年以上の期間とする特約」を除いて、民法上の瑕疵担保責任を軽減する特約は無効となります。
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消費者契約法が適用される場合
消費者と事業者が売買当事者であった場合、つまり事業者が売り主、買い主が個人などの消費者であった場合は消費者契約法が適用される可能性が大です。
ここに、事業者とは法人(株式会社、有限会社、合同会社、その他の営利法人、財団法人、社団法人、宗教法人、医療法人、地方公共団体、その他法人格を有するもの)、その他の団体を指します。また、個人であっても事業として(例えばアパート運営)契約の当事者となる場合は事業者として扱われる場合があります。
消費者契約法は弱者である消費者(個人)を保護する法律です。
事業者の損害賠償の責任を免除する条項、その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることが定められており(消費者契約法1条他)、消費者契約法が適用される場合は、瑕疵担保責任の免責特約は無効となる可能性が大きいです。
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契約書に「現状有姿渡し」とあった場合の扱いは?
契約書に「現状有姿にて引き渡す」と明文化されているものがあります。つまり引渡し時の現状でそのままその目的物(中古住宅)を引き渡すという内容です。
では、この内容で「瑕疵担保責任の免責」の特約の合意がなされたといえるのでしょうか?
答えは一般的にはNOです。今の現状で引き渡すということと、売買の後で瑕疵の責任を負わないとすることは全くの別物です。
現状渡しの合意がなされていても、瑕疵担保責任は売り主に残ると考えるのが一般的です。
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まとめ
契約において大事なのは、売り主と買い主が契約内容を熟知して、その内容に納得しているということです。
瑕疵担保責任の免責特約があるからといって、不誠実な契約!ということではありません。瑕疵担保責任がどのような責任か、免責の特約を入れると買い主・売り主にどのような効果が生じるのか。これを熟知して納得して契約することが大事です。