静岡県吉田町で、来年度から小中学校の夏休みを短縮させる取り組みを始めるようです。想定している夏休みの期間は最短で10日間。つまり2週間が休みになるだけです。
朝日新聞デジタル|子どもたちの夏休みを10日間に 静岡・吉田町の決断
静岡県吉田町は、来年度から小中学校の夏休みを最短で10日間に短縮する方針を決め、19日夜から保護者への説明会を始めた。背景には教員の長時間労働問題があり、授業日を増やして1日当たりの労働時間を減らすことが狙い。ただ、極端な日数減に保護者らからは「子どもたちがかわいそう」との声が出ている。
夏休みは今年度は24日を予定しているとのことなので、約5週間。これが2週間になるんですから、結構思い切った政策です。子どもの教育目的というよりも教師の教育環境の改善といったところが目的のようです。
教育的な観点からの検討にはあまり興味が無いんですが、この政策が人口動態に及ぼす影響に興味がありまして、そんなことしたら住宅の第一次取得者層が町から出ていってしまうんじゃないの?と思ったわけです。
上の記事でも”極端な日数減に保護者らからは「子どもたちがかわいそう」との声が出ている。”と書かれていました。私も同じ考えで、こんな地域だったら隣町にでも家を建てようかなって思う人が増えるんじゃないのかな?と思うんです。
まだ方針が発表されて、保護者説明会を始めた段階なので、影響がでるのは今後にはなると思いますが長期的にみていきたいなと思い、現状についてをまとめてみます。
静岡県・吉田町
吉田町は静岡県のほぼ中央に位置する海に面した小さな町です。牧之原市と焼津市に挟まれています。
吉田町の人口動態
吉田町の人口は29,000人程度、世帯数は14,400世帯を若干切る程度です。
人口推移は平成25年頃には年間で1%程度の人口減少が見られましたが、減少率は改善しつつあり、今年はほぼ横ばいにまで回復しています。吉田町だけでは分かりづらいので、静岡県全体での人口推移(%)との比較もしてみましょう。
平成25年からの4年間ほどは静岡県全体の人口減少よりも激しい人口減が見られましたが、平成29年4月になって回復。横ばい程度になっています。平成24年以前は人口増加がみられる流入の多い町だったことが分かります。
吉田町の高齢化率
吉田町の平成28年4月現在の高齢化率は23.4%とかなり若い町です。県内35市町村の中では4番目に若く、県全体の高齢化率は27.6%です。
吉田町の地価推移
続いて、土地価格の推移です。
静岡県の行っている地価調査基準地価格の住宅地の平均価格推移(%)を調べてみました。
最近は需要が強いのか、価格が上昇中です。県内全域でそうかというと、そうでもなく静岡県全体での住宅地の平均変動率は△1.1%の減少となっていることから、土地取引が活発なようです。
静岡県の資料から抜粋すると、隣接する焼津市や牧之原市、では2~4%の下落となっています。周辺市に比べて土地価格が堅調であることが分かります。この資料から推察するに、周辺市からの流入もかなりあるんじゃないでしょうか。
これからの吉田町はどうなる?
夏休みを最低で10日間程度に縮小にする方針は吉田町にこれからどのような影響を与えるでしょうか。たいした影響を与えないかもしれません。しかし、住宅の第一次取得者層(30代~40代)にとってはインパクトの大きなニュースだと思います。
第一次取得者層である30代~40代は子どもが小学生に入学する世代でもあります。逆にいえば、子供が小学校に入学するタイミングで住宅を新築する(中古住宅を購入する)人はかなり多く見られます。小学校の学区によって同じ町内でも人気のエリア、不人気のエリアができ、地価にも影響します。
まず、夏休みが短くなることによるメリットデメリットを考えてみましょう。
夏休みが短くなるメリット
- 教諭の負担が軽減
- 共働き世帯にとっては、学校に行く日数が増えることによって負担が軽減。夏休みは児童クラブなどはありますが、親が子供を見なければいけない時間が増加します。夏休みが短くなるということはその分だけ、親の負担が減ります。
夏休みが短くなるデメリット
- 長期の休みを利用した家族旅行が難しくなる。
- 一日の小学校の教育時間が短くなることによって、子供の帰宅が早くなる。結果としてフルタイムの共働きが難しくなる。
- 子どもが可哀そう。
休みの短期化は人口動態や地価にどのような影響を与える?
簡単にメリット・デメリットを上で上げてみましたが、メリットとデメリットのどちらが大きいかは一概には言えません。朝日新聞の記事では”極端な日数減に保護者らからは「子どもたちがかわいそう」との声が出ている。” とも書いてありますし、親としてはネガティブなイメージを持っている方の方が多いんじゃないでしょうか。
教師からすればメリットは大きいのかも知れませんが、教師の数には限界がありますし、教師の待遇が改善しても人口が増えるわけではありませんし、地価が上昇するということもないでしょう。
しかし、子育て世代、住宅の第一次取得者層に否定的なイメージがあれば、近隣市町に転出してしまうことが考えられます。最近は人口が増加し、特に若い世代が多い健全な人口バランスを有した吉田町ですが、今後はどうなるのでしょうか。
私の予想としては、人口流出が多くなり、不動産需要が弱含みになると思っているのですが、どうなっていくのでしょうか。2年後、3年後。更にはもっと先になってみないと結果は分かりませんが、夏休み短期化は興味深い方針だと思います。
今後も各種統計を集めて、影響を探っていきたいと思います。