山林・林地の法規制の一つに森林法の調査があります。
その中で「地域森林計画対象民有林」があるのですが、実務をしている人でも知らない人も多いんですね。
この記事では地域森林計画対象民有林とは何なのか、どのような規制があるのか、そして調査方法について説明したいと思います。
地域森林計画対象民有林とは?
地域森林計画とは、都道府県知事が、全国森林計画に即して、民有林について森林計画区別に5年ごとに10年を一期としてたてる計画で、都道府県の森林関連施策の方向及び地域的な特性に応じた森林整備及び保全の目標等を明らかにするとともに、市町村森林整備計画の策定に当たっての指針となるものです。
都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、その森林計画区に係る民有林(その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺の地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。)につき、五年ごとに、その計画をたてる年の翌年四月一日以降十年を一期とする地域森林計画をたてなければならない。
森林計画区は全国で全158計画区があります。
地域森林計画対象民有林は、地域森林計画の対象となっている民有林です。
民有林ですから、当然国有林は外れます。
森林計画の種類
森林計画は都道府県知事が定める地域森林計画だけではありません。次の3つがあります。
- 農林水産大臣が定める「全国森林計画」
- 都道府県知事が定める「地域森林計画」
- 市町村が定める「市町村森林整備計画」
当記事で説明しているのは、2つ目の地域森林計画になります。
地域森林計画で定められる事項
地域森林計画対象民有林では、計画の中で次の事項が定められます。
- 対象とする森林の区域
- 森林の有する機能別の森林の整備及び保全の目標その他森林の整備及び保全に関する基本的な事項
- 伐採立木材積その他森林の立木竹の伐採に関する事項(間伐に関する事項を除く。)
- 造林面積その他造林に関する事項
- 間伐立木材積その他間伐及び保育に関する事項
- 公益的機能別施業森林の区域(以下「公益的機能別施業森林区域」という。)の基準その他公益的機能別施業森林の整備に関する事項
- 林道の開設及び改良に関する計画、搬出方法を特定する必要のある森林の所在及びその搬出方法その他林産物の搬出に関する事項
- 委託を受けて行う森林の施業又は経営の実施、森林施業の共同化その他森林施業の合理化に関する事項
- 森林病害虫の駆除及び予防その他森林の保護に関する事項
- 樹根及び表土の保全その他森林の土地の保全に関する事項
- 保安林の整備、第四十一条の保安施設事業に関する計画その他保安施設に関する事項
地森計とも略されます
地域森林計画対象民有林は「地森計(ちしんけい)」と略されることも多いです。
地森計と書いてあったら、逆に地域森林計画対象民有林のことだと分かるようにしておきたいですね。
地域森林計画対象民有林の規制
では、地域森林計画対象民有林に該当していたら、どのような規制があるのでしょうか?
地域森林計画の対象となると、森林法が適用されます。
逆にいえば、地目・現況が山林・林地であっても、地域森林計画対象民有林でなければ、森林法の対象とはなりません。
伐採・伐採後の造林に届出が必要
森林法の適用を受ける森林は、伐採及び伐採後の造林をする際には、届出が必要になります。
森林所有者等は、地域森林計画の対象となつている民有林(略)の立木を伐採するには、農林水産省令で定める手続に従い、あらかじめ、市町村の長に森林の所在場所、伐採面積、伐採方法、伐採齢、伐採後の造林の方法、期間及び樹種その他農林水産省令で定める事項を記載した伐採及び伐採後の造林の届出書を提出しなければならない。(略)
届出の流れ
- 伐採を開始する日前90日から30日までの間に伐採及び伐採後の造林の届出書を提出する。(届出をされた内容に不備がなければ通知書等が送付されます。)
- 造林を完了した日から30日以内に伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書を提出する。
1haを超える場合は林地開発許可が必要
1haを超える開発行為をする場合は、林地開発許可が必要になります。
開発行為の目的によっては50%以上も森林を残さなければならない可能性もあります。
所在する都道府県に確認してみてください。
参考 林野庁|林地開発許可
地域森林計画対象民有林の調査
市町村の林務課などの森林の担当部署で調査を行います。
森林計画図・森林簿で地域森林計画対象民有林の区域内か区域外かを確認します。
最近では、都道府県のGISなどでネット上での調査が可能な自治体もあります。
参考 和歌山県地理情報システム
最終的には直接自治体に出向いて確認することが大事ですが、事前調査をネットでしておくと効率的な調査が可能です。
林地台帳
平成28年の森林法改正によって、林地台帳という制度も発足しています。
林地台帳は市町村が整備するものですが、整備の準備期間が平成31年3月末まで設けられています。まだ私もほとんど目にしていませんが、森林の土地所有者や林地の境界に関する情報などが整備・公開されることになります。
林地台帳については、別記事「林地台帳とは?以前からあった森林簿とは何が違うの?」にて詳しく解説していますので、合わせてお読みください。