住宅着工統計が2017年1月末に公表されています。この統計は2016年(平成28年)の数字をまとめたものになります。1か月でこの膨大な統計データを各市町村から集計、分析して公表するんですね。頭が下がります。
さて、発表された住宅着工統計ではどのような結果になっているんでしょうか。2016
年の住宅データ、特にアパートなどの共同住宅のデータをさらっとおさらいしてみましょう。
URL:政府統計の窓口|住宅着工統計
住宅建設・共同住宅建設の動向(H28年)
住宅の新設着工戸数はここ数年は増加傾向にあります。消費税増税(5%→8%)のあった平成26年には10%近く減少していますが、その後は消費税増税の影響も少なく増加傾向です。
平成27年1月からは相続税の基礎控除額が引き下げられたことにより、相続税の課税対象者の拡大されました。その影響で、相続税対策によるアパート建築も増えています。もう一つの要因として、金融機関のスタンス変化、特に融資条件の緩和によりサラリーマン大家と言われる個人投資家が増えていることも一因となっています。
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5年前(H23年)と比較すると貸家の戸数は46%増加しています。戸数で比較すると持ち家を抜いているんですね。
同じものをグラフにしてみました。
持ち家よりも貸家の戸数の方が少ないことに違和感を感じる方も多いかと思います。そうですよね。まわりを見渡して住宅よりアパートの方が建築されているって変ですよね。これは建物の棟数ではなく、あくまで戸数で計算されていることが理由です。
8室あるアパートを1棟建築した場合、これは1戸ではなく、8戸とカウントされます。そのため貸家の方が多くなるのです。
本当にこんなにアパートが増えて良いんでしょうか?人口減少社会に突入している昨今。アパートの空室率も上昇しているようです。
参考:にわか大家の激増で都心のアパート空室率は3割超?これ本当?
同じように、面積の増減を表にしてみました。やはり貸家は増加していますね。
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都道府県別の貸家の建築状況
アパートが増加した都道府県は?
前年と比較して、戸数が大幅に増加した都道府県はどこでしょう?
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大都市部でアパートなどの貸家が増えているものだとばかり思っていたんですが、なんと増加率1位は長野県(36.8%)。長野県といえば移住促進に力をいれており、移住したい県のランキングがあるといつも上位にランクインしますね。そんなイメージはあるものの、貸家が増えているのは意外でした。
次いで、富山(36.7%)、徳島(32.4%)、福島(30.7%)、新潟(27.4%)、熊本(24.6%)と続きます。福島県や熊本県は災害もあった地域ですね。福島県は被災時には住宅が足りなくなって住宅地価格も上昇したりしていましたが、最近もまだ住宅が足りていないんでしょうか。
熊本県も地震がありました。地震があると土地価格よりも賃貸物件に需要が殺到します。神戸の大震災時にもアパートの賃料が高騰するといったことが起こりました。
アパート建築が進まなかった都道府県は?
逆にアパート建築が減少した都道府県はどこでしょう。ワースト1位は和歌山県(△29.2%)で、昨年よりも着工件数は減少しています。
次いで、宮城県(△13.9%)、岩手県(△11.3%)、福井県(△5.7%)、京都府(±0.0%)となっています。東日本大震災の被災地となった宮城県と岩手県が2・3位です。福井県は貸家建築が進んでいるので震災はあまり影響がないんでしょうね。
どういった傾向があるのか、さっぱり読み取れません。
ちなみに東京は全国の中で24番目、64,500件から72,214件へと+12.0%の増加でした。全国的には+10.5%の増加なので、東京はやや上といったところでしょうか。
人口動態と貸家建築の相関
人口の増加率と、貸家の着工件数の増加率にはどのような関係があるんでしょうか?人口が増えている地域では、貸家(アパート)の建築が進む。という仮説がぱっと浮かびますが正しいのでしょうか?
仮設がただしければ、右上がりの直線が浮かび上がるような散布図になっているはずですが、全くそういうことはなさそうですね。相関係数も△0.28とマイナスになりました。ほぼ無相関。両者に相関はないということですね。
PDF:貸家の新設着工戸数の推移
まとめ
地方部の方がアパート建築が増えているというのは意外な結果でしたね。理由は分かりませんでしたが、もし判明したら記事にしたいと思います。