抵当権は、貸したお金が返してもらえないときに、担保に入れた不動産を金銭に換え、そこから他の債権者よりも先に返済してもらえる権利です。
特徴としては、きちんと返済している間は、債務者(または物上保証人)がそのまま不動産を使うことができることです。
これを民法はこのように規定しています。
- 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
この記事では抵当権の詳細な説明ではなく、抵当権の実行について解説します。
抵当権の実行とは?
債権が弁済されないとき、債権者が担保に入れた不動産を売却し、その代金から債権の弁済に充てます。これを抵当権の実行といいます。
抵当権実行の流れ
具体的には債権者(金融機関など)が、目的物所在地を管轄する地方裁判所に抵当権の実行を申し立てます。
そして競売開始決定がだされると、差押の効力が発生します(差押の登記がなされる)。
競売が実施され、買受人が現れて売却許可決定がなされると買受人は代金を納付して目的物の所有権を取得します。
より詳細な、実務的な抵当権の手続きが知りたい場合は次の書籍が参考になりました。
抵当権の実行はいつからできる?
抵当権の実行、具体的には不動産競売の要件は次のとおりです。
- 抵当権が存在する
- 被担保債権が存在する
- 履行遅滞の状態にある
つまり、抵当権の実行は履行遅滞の状態になってからできるようになります。
ただし、債権者(抵当権者)の側が履行期の到来を立証する必要はありません。言葉を代えると、担保権実行のためには債務名義は不要です。
競売による売却価額が少なかった場合は?
競売による売却価額が少なく、借金の返済が全てできなかった(完済できなかった)場合はどうなるのでしょうか。
落札代金が債権の弁済に不足する場合、弁済を受けられなかった部分についての債権は当然に存続します。
しかし、残った債権は担保のない無担保債権となります。