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地価・不動産の”三極化”という意味の分からない表現の煽り文

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不動産関連の文章を読んでいると「二極化」という言葉がよく出てきます。売れる物件はどんどん高くなっていき、売れない物件はどんどん安くなる。このような状態を指して二極化という表現が使われることが多いです。

たまに、「地価の三極化」「不動産の三極化」とうい言葉が使われた文章を読むことがありますが、「何か変な表現だな?」といつも感じていました。

今回は、「地価・不動産の三極化」について考えてみたいと思います。

三極化の使用例

アベノミクスが生んだ国内不動産市場の「三極化」問題|長嶋修

健美家という不動産投資関連のサイトのコラムで、長嶋修さんという不動産屋さんが書かれた文章があります。

参考:アベノミクスが生んだ国内不動産市場の「三極化」問題

長嶋修さんは有名な方で、さくら事務所という法人で個人向け不動産コンサルティングを行っていたり、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任し、インスペクションの普及などに勤めています。

長嶋修さんはよく「三極化」という言葉が好きなようで、たまに文章の中に使用します。「高い」「安い」という極のほかに、もう一つ加えて「三極化」という訳ですが、もう一つは「価値ゼロの不動産」。無価値の不動産を指しているようです。

もう少し使用例を探してみましょう。

日本の不動産は2極化ではなく「3極化」が進んでいる|内藤 忍

内藤忍さんという方も3極化という言葉を使用されています。あまり知らない人なんですが、資産デザイン研究所というところの代表取締をされているようですね。資産設計や投資についてのアドバイスなんかをされているのかな?

参考:日本の不動産は2極化ではなく「3極化」が進んでいる

上の文章の中で、地価公示を分析し地価についてのコラムを書かれています。3極化という言葉が使われている文章は次のとおり。

今回の発表を見ると、日本の不動産は2極化ではなく、「3極化」が進んでいるように思います。上昇が一服しつつある3大都市圏、資金が流れ込み上昇率が高くなってきた地方中核都市。そして、下落が続いている、それ以外の地方という構図です。

「3大都市圏」「地方中核都市」「それ以外の地方」を3極と表現しているようです。価格のトレンドで分けると、「上昇が一服」「上昇率が高い」「下落が続いている」という3極ですね。

「三極化」

これは不動産会社のホームページの中のコラムで書かれていましたが、「上昇」「横這い」「更なる下落」の3つを指して「三極化」が使われていました。

地価の変動率がプラスとマイナス、そして変動なし(ゼロ)の3つですね。この使い方の3極化が多いような気がします。

三極化とは

三極化という言葉を考える前に、普段よく使う二極化について考えてみます。

極(きょく、きわ、ごく)とは、これ以上ないこと、至高、きわみ、最果てを意味する。あるいは、自然科学の分野で polar の訳として、指向性・方向性をもつもの。あるいは正反対のものの偏りを意味する。なお、それぞれの極をあわせて両極(りょうきょく)ということがある。

引用:wikipedia|極

極という単語を調べてみましたがよく分かりませんね。しかし、端というイメージを持ってもらえると分かりやすいんじゃないでしょうか。地価や不動産の価格では、高いという端と安いという端ですね。

二極化(二極分化)とは、中間が減少して両極端に分かれる現象を指します。大都市への人口集中と農漁村の過疎化、貧富の格差の拡大などが典型的な例として挙げられていました。

中間が減少して両極端に分かれる現象というのは非常に分かりやすいですね。三極化についても3つの端に向かって、物事が偏っていくという現象だとイメージできます。

三極化の例は本当に三極化?

このようなイメージを元に、さきほど上げた「三極化」の例を考えていきたいと思います。

「高い」「安い」「価値ゼロ」の三極

まずは、「高い」「安い」「価値ゼロ」。安いの極限が価値ゼロなので、そもそも三極じゃないんじゃない?って思いますよね。

三極化のイメージと全く合致しません。

「上昇が一服」「上昇率が高い」「下落が続いている」の三極

これについても「極」なのかな?と考えるとそうではない気がします。高くなるものもあれば、安くなるものもある。高くなることが一服したものもある。という3つですので、みんなバラバラに動いているということですよね。二極化にもなっていません。

傾向がない。と言い換えた方が良さそうです。

「上昇」「横這い」「下落」

これも先ほどとほぼ一緒ですね。価格が上がるものがあれば、下がるものもある。据え置きのものもある。ということなので、三極化でも二極化でもありません。

まとめ

高いものは更に高くなっていく、安いものはどんどん安くなっていく。これが二極化です。地価が高い地域も上昇が一服し、中間層は高くなりました。これでは二極化でも三極化でもありませんね。

ウケる文章を書くにはキャッチーなコピーを使用した方が良いんでしょうけど、そのせいで文章が分かりにくくなってない?なんて感じたのでありました。




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