借地権には借地権割合というものがあります。
借地権割合とは、更地価格に対する借地権の価値の占める割合です。
借地権に似たものに使用借権がありますが、使用借権割合というものはあるのでしょうか?そもそも使用借権に価値はあるのでしょうか?
判例や相続税評価、不動産鑑定評価基準、損失補償基準についての取り扱いについてもまとめてみました。
使用借権とは?
使用借権とは、借主が貸主から無償で物(今回なら土地)を借り受けて使用する権利のことをいいます。
ここで重要な点は、無償である点です。
金銭の対価が生じているのであれば、それは賃貸借となります。
使用借権がみられるケース
使用借権は無償で物の貸し借りをするものです。
土地などの価値の高いものを無償で貸し借りする場合、貸主と借主が親族であることがほとんどです。
親の土地に子供が住宅を建築するような場合が典型的な使用借権のケースです。
使用借権の特徴
土地の使用借権の場合、借地借家法の適用は受けません。
使用借権の目的物の返還時期は、次のようになります。
- 契約に定めた時期
- 時期を定めなかった場合は、目的に従った使用収益の終了時
- 当事者が返還時期並びに使用収益の目的を定めなかったときには、貸主はいつでも返還を請求できる
貸主・借主の死亡により使用借権はどうなるのか
使用借権は、借主の死亡によりその効力が失われます。
しかし、貸主の死亡によっては使用借権は消滅しません。
これは、貸主の死亡によって使用借権が消滅してしまうとすると、借主が不測の事態によって不利益を被ることになってしまうからです。
借主の死亡によって使用借権が消滅するということは、使用借権が相続の対象とならないということです。
使用借権に価値はあるのか
使用借権は譲渡することができません。
また、借地借家法の適用も受けないので、譲渡に関して地主の承諾に代わる許可(借地借家法19条)を得ることもできません。
このように使用借権は借地権と異なり、流通性がほとんどありません。
使用借権の目的が居住用建物の場合、土地所有者(土地の貸主)は容易に土地の返還を求めることはできません。
つまり、土地の使用借権は、使用借主が使用収益をしている限りにおいては、土地賃借権に近い性質を有するともいえます。
そのため、使用借権には財産的な価値が存在するとも考えられます。
不動産鑑定評価基準おける使用借権の価値
不動産の価格に関する専門家が不動産鑑定士です。
不動産鑑定士が鑑定評価する際の基準(不動産鑑定評価基準)では、使用借権は触れられていません。
借地権についての基準はありますので、それに準じて評価をするものと考えられます。
判例における使用借権の価値
土地の使用借権をめぐる過去の判例では、使用借権に価値があると明確に認められています。
参考判例 最高裁第三小法廷平成6年10月11日判決
この判例では、使用借権の価値を更地価格の5%と認定しています。
割合の判定に当たっては、建物の老朽化や残存年数、当事者の関係などの個別の事情が考慮されます。
また、東京地裁平成15年11月17日判決では、更地価格の15%が使用借権の価値として認定されています。
損失補償基準における使用借権の価値
公共用地を取得する際の価格評価の基準が「公共用地の取得に伴う損失補償基準」です。
損失補償基準によれば、使用借権に対する補償は「使用貸借による権利に対しては、当該権利が賃貸借であるものとして前条の規定に準じて算定した正常な取引価格に、当該権利が設定された事情並びに変換の時期、使用および収益の目的その他の契約内容、使用および収益の状況等を考慮して適正に求めた割合を乗じて得た額をもって補償するものとする」と書かれています。
つまり、賃借権の一定割合の限りにおいて、使用借権は財産的価値があるものと扱われています。
また、損失補償基準細則では、当該割合を「賃借権に乗ずべき適正に定めた割合は、通常の場合においては、3分の1程度を標準とするものとする」と定めています。