今日の話は書類の作成についてです。
私は不動産鑑定士という仕事をしているので、鑑定評価書という書類を日々作成しています。適正な不動産の価格を出すということはもちろん大事ですが、私がもう一つ鑑定評価書を作成する上で気をつけているのは「いかに読みやすい書類を作成するか」ということです。
そんな中、先日依頼者さんと打ち合わせをしているときにこんなことを言っていただきました。
(依頼者さん)
「うちも色々な鑑定士さんに評価書を作ってもらっていますが、一番見やすく、読みやすかったです。」
色々な修正もいただいてしまったので、お世辞8割と思っていますが、やはり嬉しいですね。さっそくブログに書いてしまうくらい嬉しかったです。
そんなこともあり、今日はいささか調子にのって「分かりやすい書類を作成する3つのポイント」についての私なりの考えを紹介していきたいと思います。
文章を分かりやすく簡潔に
書類の作成において一番大事なのは、みなさん分かり切っていると思いますが「文章」です。私も小さい頃から読書感想文のような文章を書くことを苦手としてきましたし、今でも文章を書くということに苦手意識を持っています。
ですので、こうしたら読みやすい、分かりやすい文章が書けますよ!と私が言うことはできません。
ただ、私が気をつけているのが次の2つです。
- 必要以上に文章を長くしない
- 主語・述語を明確に
文章は短く
必要以上に文が長い文章はどうしても分かりづらくなります。相手の国語読解力を試すテストをしている訳ではないので、分かりやすいに越したことはありません。
特に私が書いているような不動産鑑定評価書は専門用語が多く、ただでさえ分かりづらい書類になりがちです。よく不動産鑑定評価書を発注しているような方でしたら、何がどこに書いてあるのか、専門用語の意味なども熟知して読んでもらえるので、多少長い文章でもすらすら理解して読んでもらえるのかもしれません。
しかし、同業の私でさえ長い文章の鑑定評価書を読んでいると、???とはてながたくさん頭がよぎることがあります。
長い文章は、読み手が読みづらいばかりか、書き手にも問題を与えます。私でもよくあるんですが、長い文章を書いていると、分の最初と最後がきちんとつながっていない場合があるんですよね。文の前半と後半がかみ合わない、論理一貫していない文章となってしまいます。
分かりづらいばかりか、頑張っても分からない文章は問題外ですね。
短く、簡潔に
これが相手が読みやすい文章を書く上で、大事なポイントです。
主語・述語は明確に
主語・述語が不明確な文章は多いものです。また述語が複数でてくる文章は、文としては正しいものの読みづらい文章の代表です。
一つ例を出します。
小さな気遣いも大事だと思ったのは、アルバイトの経験から感じるようになった。
一つの分の中に「思った」「感じる」という2つの述語が登場します。実に分かりづらい文章ですね。
改善すると次のような文になります。
アルバイトの経験から、小さな気遣いも大事だと感じるようになった。
実はこの文章は先日紹介した本「文章力の基本」からの引用になります。この書籍の中に書いてあることは、実に簡単なことばかりです。しかし、文章を書く際にいつも心にとどめておきたい大事なことばかりです。
参考 [書籍紹介] 文章力の基本 簡単だけど、だれも教えてくれない77のテクニック
グラフ、地図などをたくさん使う
1つ目のポイントは「文章を分かりやすく簡潔に」でした。続いてのポイントは「グラフ・地図などをたくさん使う」です。
これはもう分かりますよね。文章だけの書類ってすごく読むのに疲れるんです。図やグラフを書類に挿し込むことによって、直感的に理解しやすくなります。そればかりか、文章で疲れた脳みそを休憩させてくれる働きもあります。
数字や文字の羅列は予想以上に脳を使います。本でもよく章の間にコラムや挿絵がありますよね。ビジネス書類の中に、コラムや挿絵を入れることはほぼ不可能ですが、図やグラフで脳をコーヒーブレイクさせてあげましょう。
私が不動産鑑定の修業時代、上司の先生に常に言われていたことがあります。
パッと見てパッと分かるように作れ
そのときは、正直「うるさいなー」くらいにしか思っていなかったんですが、自分ひとりで書類の作成からクライアントへの説明、納品をするようになってようやくこの言葉が自分の心に響いてくるようになりました。
素人にも分かりやすい書類を作ると下手に変な質問が多くなって困る。なんてことをおっしゃっている(悪徳?)鑑定士さんもいましたが、その逆です。
分かりやすい書類は、依頼者さんが読みやすいだけでなく、無用な質問を減らし、大切な自分の時間が削られることも減らしてくれます。
書類にグラフや図表を挿し込むために
書類に図表やグラフをいれることは、慣れていないと大変なことです。
例えば書類の中に地図を入れることを考えてみます。住宅地図、グーグルマップなどたくさんの地図がありますが、元の地図は何でも良いです。
ワードやエクセルにこのような地図を挿し込むときに、みなさんはどうしてますか?スキャナーで取り込んで画像ファイルにして、「図の挿入」というのが一般的なんでしょうか。スキャンして画像ファイルにしただけではそのまま挿入できないこともありますね。図の余分なところをカットしたい(トリミング)、文字を入れたい。などと加工することも多いかと思います。
プリントスクリーン(PrintScreen)キーを使って、パソコンの画面のスクリーンショットを撮る人も多いんでしょうね。
私もパソコンの画面をスクリーンショットで切り取って、PDFやWebから画像ファイルを保存することをよくしますが、プリントスクリーンキーなどは使いません。なぜなら、その後の加工が大変ですし、キャプチャーしたい範囲の選択が任意でできないんですよね。
ここでおススメしたいのがフリーソフトの「スクリーンエスプレッソ”Screenpresso”」です。使い方は以前書いたので記事を読んでいただくとしますが、大変便利なスクリーンキャプチャ・編集ソフトです。
簡単に図を挿入することができるようになるので、面倒で図を挿入するのをやめてしまうなんてことが、私も無くなりました。
参考 スクリーンキャプチャ・編集ソフト”Screenpresso”を使って、イメージ豊かな書類を作ろう。
デザインを考えた文章にする
ただ闇雲に読みやすい文章にして、図表・グラフを増やせば良いという訳ではありません。文章であれば文字の大きさやフォント、明朝体とゴシック体をどのように使い分ければ、資料として見栄えがするかということも大事な要素の一つです。
図表やグラフについても、色分け、値をどのように表示するのかなど、読みやすい書類にするにはまだまだ考える余地があります。
それらをひっくるめてここではデザインと表現します。
以前に記事にしたので個別具体的なデザインについては書きませんが、デザインを考えることで文書の野暮ったさがなくなりますし、パッと見たときに「おっ、なんか違うな?」と思わせることができます。
書類の作成を飯のタネとしている者としては、こだわりたいところの一つです。
参考 [書籍紹介] 伝わるデザインの基本 よい資料を作るためのレイアウトのルール
まとめ
いかがだったでしょうか。私もまだまだ勉強中なので、日々改善させていきたいなと考えています。
仕事の中で、他社の作った書類なども見る機会も多いんですが、個人事務所の中ではそれなりに見やすい書類を作っているつもりです。ただし、大手の事務所はさすがに違います。私もそこまでクオリティをあげていきたいと思っているんですが、書類作成のコスト(主に時間)が高くなるだけですし、見やすい書類を作成したところで報酬が上がるわけではありません。
でも理想の書類に近づけられるように日々精進ですね。