用途地域の指定されていない郊外に駅や高速道路のインターチェンジなどが新設されると、便利になる反面、周辺環境に悪影響を及ぼす建築物が増えることも事実です。
その際、よく利用されるのが「特別用途制限地域」です。
特別用途制限地域とは?
特別用途制限地域は、都市計画法第9条14項に規定されています。まずは条文を確認してみましょう。
都市計画法第9条14項
特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。
都市計画法第9条では、第1~12項で用途地域(第一種低層住居専用地域や商業地域など)、第13項では特別用途地区が規定されています。
特別用途制限地域の具体的な内容は市町村などの地方公共団体の条例により定められます。地域の自治体が定めることができるので、フレキシブルな対応が可能な地域地区の一つです。
特別用途制限地域が指定される場所
特別用途制限地域が指定される場所はどんな場所でしょうか。条文を振り返ってみると、「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内」とあります。
このことから分かるのは、特別用途制限地域が指定される場所は、準都市計画区域又は非線引き都市計画区域の白地地域ということになります。白地地域というのは用途地域が指定されていない地域を言いますね。
特別用途制限地域は市街化区域内では指定されないということがお分かりでしょうか?市街化区域では用途地域を定めなければならないとされているので、市街化区域に特別用途制限地域が指定されることはありません。
特別用途制限地域は農用地との重複指定も可能
特別用途制限地域が重宝される一つの要因としては、農用地区域との重複指定も可能だという点も見逃せません。
インターチェンジや新駅の新設によって急激な発展が予想されるような地域では、従前農地が広がっているケースが多々見られます。農地が広がる地域では、農業振興地域内の農用地が指定されていることが多いのですが、農業振興地域は用途地域内に指定することはできません。逆に考えると既に農業振興地域に指定されている地域には、用途地域を指定することはできないのです。
しかし、特別用途制限地域には農業振興地域との重複指定ができないという規定がないため、同一土地に特別用途制限地域と農業振興地域を指定することが可能です。
特別用途制限地域で何を制限するのか?
「その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう」に特別用途制限地域を定めるのですから、これに反するような建築物を制限します。というと曖昧すぎますよね。
地域によって何を制限するのかは様々ですが、主に次のようなものを制限するために利用されています。
- 射幸心をあおる恐れのある遊戯施設(パチンコ、マージャン店など)
- 風俗施設(キャバレー、モーテル、ラブホテルなど)
- 周辺環境に影響を及ぼす可能性のある業種の工場
「周辺環境に影響を及ぼす可能性のある業種の工場」と書くと曖昧ですが、具体的には火薬、石油類、ガスなどの危険物の貯蔵・処理の量が多い施設を制限する指定が目立ちます。
市町村が独自に制限をかけることもありますが、既存の用途地域(第一種住居地域や第一種中高層住居専用地域など)を準用して同等の内容で制限をかけることも多くあります。
この用途地域準用型は、特に線引き廃止されたことをきっかけに特別用途制限地域が指定されたようなエリアで取られる制限内容です。
用途地域、特別用途地区との違いは?
特別用途制限地域は、用途地域や特別用途地区と同じ都市計画法に定められた「地域地区」の中の一つです。
名前も似ていて紛らわしいですが違いを明確にしておきましょう。
用途地域
用途地域は、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定める. もので、
特別用途地区
特別用途地区は、中高層階住居専用地区、商業専用地区、特別工業地区、文教地区など以前は11種類が定められていました。平成10年の都市計画法改正により、その種類や制限内容、名称などが各地方公共団体で自由に定めることができるようになりました。
特別用途地区の特徴は次のとおりです。
- 用途地域内に指定(制限の強化)
- 名称や制限内容を地方公共団体が自由に定められる。
用途地域、特別用途地区との違いは?
まとめましょう。特別用途地区は用途地域内に指定されます。ここは重要ですね。
特別用途制限地域は「用途地域内には指定されない」ので、特別用途制限地域と特別用途地区は重複して指定されることはないです。
用途地域の指定がないエリアでは「特別用途地区」を指定して建築規制を行うことができないので、特別用途地区に代わり「用途地域の指定のない場所」で指定するものとして、特定用途制限地域が平成12年都市計画法改正時に設けられました。
まとめ
もう少し特別用途制限地域について知りたいという方は、(一財)土地総合研究所の研究論文、「特定用途制限地域の意義-地方分権社会と環境時代という対立構造の中で-」に詳しい分析が書かれています。参考にどうぞ。