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既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。

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中古住宅の流通化を推し進める中で、調査上気をつけたいのが建物の遵法性です。遵法性(じゅんぽうせい)とは法律を守ってそれに従っているかどうか。つまり建物が適法に建てられているかどうかということですね。

ここでいう法律とは、建築基準法やその他建築基準法に基づく条例、都市計画法や消防法などが主なものです。

新築時は適法に建物が建築されたとしても、その後の法改正、または増築・改築などによって現在の法律を満たさなくなってしまうこともあります。

それを既存不適格建築物といいますが、違反建築物との違いにも触れながら解説していきます。

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違法建築物とは?

法律を遵守して建てられた建物を違法建築物といいます。これは新築時だけでなく、その後の増築で違法な状態となってしまったものも指します。

固い表現書くと次のようになります。

違法建築物

建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づいて許可に付した条件に違反した建築物

新しい建物であれば遵法性には問題ない、違法建築物ではないと思いがちですが、実際には違法建築物は多く見られます。

具体的な例を一つあげると屋根裏部屋(ロフトなど)です。屋根裏部屋は一定の条件を満たすと床面積が容積率に不算入となります。

屋根裏部屋が床面積不算入となる条件

  • 最高の内法高さが1.4m以下
  • 広さが階下の面積の2分の1以下
  • その他(特定行政庁の取扱い)

その他では、階段の形状(固定式か、収納式か)、床の仕上げ等に制限が加えられることがあります。

建築確認や完了検査の際は、床面積不算入の要件を満たした状態で各種検査をクリアし、その後違法状態にするケースは何度か私も見たことがあります。これは代表的な違法建築物の例の一つです。

違法建築物に対する是正指導について

建築基準法第9条第1項において、「建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づいて許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる」と規定されています。

違反建築物の是正に関して、行政指導を無視したり、是正を行わない場合は、建築基準法第9条1項、7項、10項に基づく、工事停止、使用禁止、除却などの行政命令が出されることになります。

また、違法建築物を安易に引き受けた設計者、施工業者には責任が及びます。知りながらに取引を仲介した宅地建物取引業者も同じです。

関係者の処分について

  • 設計した建築士…建築士法による処分
  • 施行した建設業者…建設業法による処分
  • 宅地建物取引業に係る取引をした業者…宅地建物取引業法による処分など

メモ

違反建築物については、法人重課の罰金を最高で1億円まで引き上げるなどの罰則の強化や報告・検査制度充実・強化が、平成16年の建築基準法の改正で図られています。

既存不適格建築物とは

似たものに既存不適格建築物があります。

新築や増改築の際には適法だったものの、その後の法改正によって現行の法令に適合しなくなってしまう場合があります。このような建築物を「既存不適格建築物」といいます。違法建築物は前記のような是正市道が行われる可能性がありますが、既存不適格建築物にはそのような法令上の義務はありません。

ただし、建築確認を要する増改築工事、模様替え、用途変更などをする際は、改正後の現行の法令に適合させることが求められます。

メモ

平成16年の建築基準法の改正によって、既存不適格建築物について、放置すると劣化して著しく危険又は有害となるおそれのある建築物に対する勧告・是正命令制度が創設されました。

既存不適格建築物と違法建築物の相違

「既存不適格建築物」と「違法建築物」は違法性(遵法性)の点では大きく異なっていますが、いずれの場合においても「現在の建物と同じものに建て替えることはできない」という点については同じものです。

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既存不適格建築物かどうかを調べる

既存不適格建築物かどうかを調べるには、まず市役所などの自治体で建築計画概要書を取得します。

建築計画概要書の閲覧は、違反建築物の建築の未然防止、無確認・違反建築物の売買等の防止を目的として設けられた制度であり、建築主、敷地面積、床面積、構造、高さ、階数等の建築物の概要及び付近見取図、配置図が記されています

建築計画概要書を確認することで、どのような計画で建築確認がおりたのかが分かります。

実際に計画どおりの建物が建築されたかどうかを確認するために、完了検査の後に交付される検査済証も確認します。

これで、建物の遵法性を確認することができます。

専門家として調査をするには、当時の法令がどのようなものか、規制内容が現在までにどのような変遷で変わっているかも確認しなければなりません。

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年表で建築基準法の改正、主な変遷が分かりますので、建築当時の行政法規をひもとくことができます。これって本当に便利。

まとめ

違法建築物と既存不適格建築物との違いは明確になりましたでしょうか。

違法建築物は法令上の用語では「違反建築物」と書かれています。一般的には「違反建築物」と呼ばれるので違反建築物という親しみやすい表現を使ってみました。

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既存不適格建築物となってしまう建物には、建ぺい率や容積率の規制がオーバーしてしまい、違法常態となってしまう建築物が多くあります。

建ぺい率・容積率を解説する記事も書いていますので、是非参考にしてみてください。

東京都杉並区での既存不適格建築物の事例

2017年春のニュースですが、東京都杉並区で大規模マンションの敷地内に戸建て住宅が新築され、マンションが建築基準法の規定を満たさない状態となっているという報道がありました。

新築時では適法だったので、違法建築物(違反建築物)ではなく、既存不適格建築物ですが、新聞などの報道では違法建築という単語でニュースとなっていました。

このマンションは昭和46年建築の11階建て。訴状などによると、マンションの底地と周辺の計約3千平方メートルを敷地として建築確認を申請し、確認を受けた。
マンションの区分所有者は、底地の約1700平方メートルについて所有者と借地契約を締結。残る約1300平方メートルはマンション駐車場として利用されていた。

敷地全体の所有権を平成25年、不動産業者「フロンティアライフ」(東京都目黒区)が競売で取得。
その後、フロンティア側から駐車場部分を購入した不動産業者「グローバル・キャスト」(埼玉県所沢市)が住宅6棟の新築を計画し、建築確認を申請した。

区は26年1月、マンション管理組合とフロンティア社に対し、「住宅ができるとマンションが違法建築になる」として、駐車場部分を管理組合に売却するか賃貸借契約などを結ぶように文書で行政指導。
指定確認検査機関にも建築確認証の交付留保を指示した。

引用 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170424-00000068-san-soci

マンションの敷地が二重使用によって減少してしまったため、「容積率」違反の状態となっています。

カーサ桜上水(問題となったマンション)

問題となったマンションは東京都杉並区下高井戸2丁目10−21の「カーサ桜上水」です。Googleのストリートビューでみても、マンションの駐車場となった場所にきれいな分譲住宅が6棟確認することができます。

マンション住民の提訴は住宅分譲業者の勝利

違法状態となってしまった、マンション(カーサ桜上水)の住民は、集団訴訟を起こしますが、地裁の判断は、戸建て住宅を新築・分譲したグローバル・キャスト社の勝利となりました。

カーサ桜上水のその後

2017年12月の報道です。

東京都杉並区のマンションの住民が、敷地だった場所に住宅が新築されてマンションが違法建築になったとして、住宅を建てた業者側に住宅の撤去などを求めた訴訟の控訴審は14日、住民側が訴えを取り下げ、東京高裁で訴訟が終結した。同種訴訟で和解が成立したためで、住宅は今後撤去され、違法状態が解消される見通し。

引用毎日新聞|違法建築解消見通しで解決

地裁で負けてしまったマンション住民の訴訟ですが、高裁での判断がどうなるかと気にしていたら、和解となったようです。

住宅は解体撤去され、違法状態は解消されるとのことでした。

分譲住宅となっていた土地ですが、マンションの管理組合が住宅の敷地を業者側から買い取ることも和解の内容となっているようです。

そもそもこの問題はなぜ起こった?

そもそもが、マンションの敷地(土地)について、敷地権の登記がなされていなかったことが今回の事件の原因です。

敷地権の登記がされていれば、マンションの建物と土地(共有持分)は一体として扱われ、別々に売買の対象とすることはできませんでした。

敷地権の制度が1983年にできたのに対し、カーサ桜上水は昭和46年に建築。敷地権の制度ができる10年前にできたマンションだったんですね。

敷地権の登記がなされていないマンションは、古いマンションにまだまだ多いです。

売買の際は、マンションの敷地になっているかどうかを確認しないと怖いですね。




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