先日附属建物とは何か?主である建物とはどう違う?という趣旨の記事を書きました。
-
附属建物とはどのような建物を意味するのか。具体例など。
不動産登記において附属建物とはどのような建物でしょうか。 スポンサーリンク 附属建物とは 附属建物は準則で次のように定められています。 不動産登記事務取扱手続準則第78条第1項 効用上一体として利用さ ...
今回はより具体的な問題。2棟の共同住宅(アパート)の一方を附属建物として登記することの可否について考えてみます。
2棟の共同住宅(アパート)の一方を附属建物として登記することの可否
まず最初に何で附属建物として登記したがるの?2つの建物として登記すれば良いじゃない。という疑問がありますよね。一つを附属建物とすることによって1つの建物として登記ができるわけですが、これにはきちんとしたメリットがあります。
アパートを新築したと考えてみましょう。建物を建築したときは、登記することが必要となります。お金を借りてアパートを建築したとなると、表題部の登記だけでは足らず、所有権の保存の登記や抵当権の設定登記も必要になりますね。建物1棟で数十万円という登記費用がかかります。2棟なら単純に倍ですね。附属建物として登記した方が登記手数料がその分安く抑えることができます。
では、2棟の共同住宅(アパート)を一つを附属建物として、1個の建物として登記することはできるんでしょうか?
同一規模の2棟のアパートを1つの建物として登記することはできない。
同一規模の2棟のアパートを1つの建物として登記することはできない。
原則として、同一規模の複数棟のアパートを附属建物として扱うことはできないんですね。
理由を考えるために、まず附属建物についての条文を再確認してみます。
不動産登記事務取扱手続準則第78条1項
効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は,所有者の意思に反しない限り,1個の建物として取り扱うものとする。
不動産登記事務取扱手続準則第78条2項
1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居,店舗,事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には,その各部分は,各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする。ただし,所有者が同一であるときは,その所有者の意思に反しない限り,1棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする。
1個の建物として取り扱われるためには「効用上一体として利用される状態」が必要とされます。つまり附属建物には、主である建物の機能を補足する役割、または主である建物の機能を更に高める役割が必要とされます。
具体例を考えると、前者としては、居宅と便所(浴室など)があります。後者としては、居宅と車庫(物置など)があります。ここには明確な主従関係があります。
離れ屋は附属建物として登記されるのが一般的です。離れ屋は普通、台所や浴室等の設備がなく、離れ屋にとって母屋(主である建物)は必要不可欠な建物であり、ここにも明確な主従関係を認めることができます。建物の増築と似たような性格ですね。
同規模の2棟のアパートに主従関係は存在する?
同規模の2棟のアパートに主従関係が存在するかと考えると、主従関係は存在しないと一般的には考えられます。
各棟の共同住宅は、それぞれ独立してアパートとしての役割を果たしており、建物相互が関わりあって、「効用上一体として利用される状態」には無いと考えられることが一般的です。
では、2棟のアパートを1個の建物として登記することは不可能?
私が具体的に目にした例としては、離れて存在する2棟の建物を1棟の建物として判断して登記しているものを見たことがあります。下が実際の建物図面になります。
建物の個数の問題ですが、これはどうやって解釈して1個の建物となったんでしょうね...
まとめ
関連した記事として、下のような記事も書いています!参考にぜひどうぞ。