高層マンションの課税については、以前から相続税や固定資産税で低層階と高層階が同じ評価(坪単価)なのはおかしいという問題提起がいたるところでありました。相続税については、高層階のマンションが節税対策に有利だと一時期からもてはやされましたし、やりすぎた税務申告についてはタワーマンションによる相続税対策が否認されたものもあります。
このような問題を背景に固定資産税の課税評価を実勢価格に合わせるために、高層階になるほど固定資産課税評価額が高くなるように調整することになるようです。
政府・与党は平成29年度税制改正で、タワーマンションなどの高層マンションにかかる固定資産税を見直すことが21日わかった。現在は床面積が同じであればどの階層でも同じ税額だが、実際の取引価格を踏まえて高層階ほど税負担を高く、低層階では低くなるよう調整する。与党の税制調査会で議論し、12月にまとめる29年度税制改正大綱に盛り込む。30年1月にも実施する方針
どのように課税が変わるかを調べていたところ毎日新聞ではこのように書かれていました。
見直しでは、地方税法を改正し、高層階ほど税負担を重くする方針。マンション1棟全体の税額は変えないため、高層階の所有者は増税になる一方、低層階の所有者は減税になる見通し。今後新築される20階建て以上(高さ60メートル以上)のマンションを対象とする方向で検討する。菅義偉官房長官は24日の記者会見で「課税適正化の観点から実際の取引価格を踏まえた方法を検討している」と述べた。
マンション1棟全体の税額は変えずに、マンション全体の内訳価格を高層階に大きく、低層階には小さく配分する形のようです。
検討されるのはタワーマンションと呼ばれる超高層マンションになります。1983年の新耐震設計基準の施行後、構造計算方法の必要な建物が60m以上とされたことから、地上20階以上を超高層マンション(タワーマンション)と呼ぶ目安とされています。ここから一般的にはタワーマンションは高さ60m又は地上20階以上と定義されています。
マンションの階層ごとの評価方法
では、マンション全体の価格から階層ごとの価格を導く方法はどのように行うのでしょうか。マンションの評価方法をおさらいしてみます。
通常、マンションは階層ごと、または同一階層でもその位置により快適性、収益性、機能性により効用差が認められ、この効用差によって価格が異なります。この階層別の効用差を「階層別効用比」といい、同一階層内における位置別の効用差を「位置別効用比」といいます。
階層別効用比とは、その実例
マンションの場合、上階にいくに従い、日照・眺望が優れ、快適性が増します。それに対応してマンションは上層階の方が高価格になります。最上階は熱がこもりやすく熱いのであまりよくない。最上階から1つ2つ下の階が最も良いなどと書かれている書籍もありますが、タワーマンションでは耐熱性などもしっかりしているので、ほとんどそのような話は聞かれません。最上階は避けた方が良い。というアドバイスが当てはまるのは低層のあまり品質の良くないマンションだけだと思います。
おさらいしますと、階層別効用比が生じる原因となる要因は主に次のものです。
- 日照
- 眺望
- 通風
- 騒音
- プライバシーの保護
- 安全性
- ブランド
ブランドも重要ですね。
位置別効用比とは、その実例
位置別効用比では、日照・採光が特に重要な要素となります。一般的に開口部の方位が南方を最高に、東方、西方、北方と快適性が逓減します。また眺望も重要ですね。海が見える、富士山が見える、スカイツリーや東京タワーなどのシンボルが見える、隣のタワーマンションの壁しか見えない。などでは全然部屋に対するイメージが異なります。
階層別効用比ほど画一的な処理が難しいので今回の課税評価見直しでは位置別効用比は考慮されないようですが、本来のマンション評価では階層別効用比と位置別効用比は両輪となって価値を決めるものです。
位置別効用比がが生じる原因となる要因をおさらいします。
- 日照
- 間取り
- バルコニーの有無と広狭の程度
- エレベータ、階段の位置
- 騒音
- プライバシーの保護
- 角部屋かどうか
- 眺望
まとめ
今回はタワーマンションの課税評価が変わります。ということを主目的とした記事だったので、階層別効用比についてはさらっと触れる程度でした。次はきちんと階層別効用比の具体的な数字や階層別効用比を使った階層ごとの評価方法についてもまとめたいと思います。