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[書籍紹介] 不動産取引における 心理的瑕疵の裁判例と評価

更新日:



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売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、売り主は買い主に瑕疵担保責任を負います(民法570・566条)。

瑕疵の内容は「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」環境的瑕疵」「心理的瑕疵」4つに大別されます。

瑕疵の種類

  • 物理的瑕疵
  • 法律的瑕疵
  • 環境的瑕疵
  • 心理的瑕疵

この書籍「不動産取引における心理的瑕疵の裁判例と評価」は、心理的瑕疵について裁判例を紹介するとともに、自殺・孤独死等のある不動産の市場実態、現価率の査定、心理的瑕疵があった場合のその不動産の取扱いについて弁護士・不動産鑑定士の視点から詳しく説明がなされています。

書籍

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概要

いわゆる《事故不動産》をめぐる多くの裁判例を詳解するとともに、賃貸・売買市場での取引実態を解明し、心理的瑕疵による減価率の査定手法を具体例をあげて解説した初めての書です。不動産取引において心理的瑕疵の問題に遭遇された方の手助けになり、不動産取引の円滑化と紛争の未然防止に役立てれば幸いです。

著者略歴

宮崎裕二:弁護士(第1章担当) 
仲嶋 保:不動産鑑定士(第2章担当)
難波里美:不動産鑑定士(第3章担当)
高島 博:不動産鑑定士(第4章担当)

書籍内容

本書籍は、心理的瑕疵のうち自殺や他殺、孤独死に焦点を当てて解説がなされています。

第1章|不動産取引における心理的瑕疵

第1節として心理的瑕疵の意味や不動産に心理的瑕疵があった場合の義務の説明があります。この章は弁護士の先生が執筆されていることもあり、膨大な裁判例が紹介されています。裁判例の中には、どのような場合は説明義務が生じるのか、損害賠償が発生した場合の賠償額算定の基準のような不動産関係者が気になるポイントについての記述があります。

1章の最後に任売時の損害賠償額がまとめられていますが、土地建物代金の1%~25%となっており、ほとんどが10%未満です。競売の評価ではもうちょっと大きな減価率を使っているんじゃないでしょうか?

第2章|心理的瑕疵物件の賃貸・売買市場の実態

核家族化が進み独居老人が多くなった現代社会で、孤独死・孤立死が問題となっています。では心理瑕疵物件が賃貸市場・売買市場でどのように扱われているんでしょうか。

 

賃貸市場では、賃貸不可能な期間を6か月~1年を設けるとともに、再募集の際には半額とするなどの措置が取られています。

売買市場では、自殺や火災による死亡、孤独死などの瑕疵要因があったばあ、時価相場よりも減価をして売り出されます。瑕疵の内容によって減価率は異なるものの、概ね4~5割程度です。

第3章|心理的瑕疵による減価率の査定手法

減価率の査定手法としては次の4つがあります。

減価率査定の4手法

  • 忌み施設から当該減価率を査定する手法
  • 競売における市場性減価から当該減価率を査定する手法
  • 不動産業者に対するヒアリング調査ならびに売買実例から当該減価率を査定する手法
  • 裁判例から比較して当該減価率を査定する手法

土地の心理的瑕疵の場合は概ね△5~10%、土地建物の減価率は△30%が多く使われているようです。減価率は画一的なものではなく、地域性や事件からの経過時間、事件がどこまで地域に広まっているかなどの要因を総合的に考慮して判断する必要があります。

第4章|心理的瑕疵のある賃貸用不動産の取扱い

心理的瑕疵のある物件は不動産業者によって呼称が異なりますが、一般的には「事故物件」と表示されます。

宅建業者としては、建物賃貸借契約にあたって事故の内容をどこまで賃借人に説明するか、いつまで説明するかが問題となります。告知の時期については、一回入居者があれば、その次の入居者には告知しないという後続入居型、10年などの期間を区切ってその期間内であれば告知するという期間型、風評がなくなるまで告知を続けるという風評消滅型などの色々な方法があります。

まとめ

膨大な裁判例や不動産業者へのヒアリングにより忌み物件、事故物件の市場実態を明らかにした書籍はほとんどありません。不動産鑑定士にとっては、どのくらいの減価を生じるのかが最も気になりますが、減価率の査定や損害額としての減価も正面から論じられています。

「心理的瑕疵による減価率の査定手法」という論文が載っています。

 

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