伊賀市の借りている土地が、不当に高いのではないかというニュースが11月27日に報じられました。
URL Yahooニュース|「高すぎる?」疑惑の賃料 伊賀市の土地賃借で市議から批判
記事の中には賃料の額も書かれていたので、実際に高いのかどうかを不動産鑑定士の視点から検証してみたいと思います。
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高すぎる地代問題の概要
伊賀市がバスの転回スペースとして民間所有の土地を借りている訳ですが、その民間企業が、伊賀市の有力議員の親族が役員を務める会社とのことです。
人間関係などの経緯は元記事を読んでいただきたいと思います。
地代等のまとめ
- 地積:約3000平方メートル
- 地代:月額362,500円
- 契約期間:19年3か月
賃借している場所
市が借りている土地は伊賀神戸駅の北方200m付近とのことです。場所は特定できませんでしが、googleマップを見ると空き地ばかりの場所です。
伊賀市の中心市街地(市役所付近)からも10km以上離れています(直線距離)。まわりにも中規模の住宅団地がある程度ですし、あまり繁華性がある場所とはいえませんね。
地代の検証
資産評価システム研究センターの地価マップで調べてみると、付近の固定資産税の標準宅地の価格は15,500円程度、坪5万円が土地の相場のようです。
単純に面積に単価を掛けて土地価格を出してみます。
土地価格
3000平米 × 15,500円 = 46,500,000円
4650万円と計算できました。駐車場で大きいですし、1平米当たり1万円でも十分な価格かもしれません。そうすると総額は3000万円ですね。
記事から年額地代が分かりますので利回りを計算してみましょう。
年額地代
月額 362,500円 × 12か月 = 年額 4,350,000円
利回り
435万円(地代)÷ 4650万円(土地価格)=9.4%(地代利回り)
支払い賃料ベースの利回りですが、地代利回りは9.4%と求めることができました。もし、土地価格が3000
万円なら地代利回りは14.5%です。
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地代の坪単価の計算
地代の坪単価も計算しましょう。賃料は一般的に土地(地代)は年額、建物(家賃)は月額を用いるのが普通です。
地代の坪単価
年額 4,350,000円 ÷ 約3000平米 = 1,450円/㎡ = 年額坪 4,800円
地代の年額坪4,800円ってどのような地域をイメージするでしょうか。田舎の人口数万人規模の幹線道路沿いのショッピングセンターの地代がだいたいそれぐらいだと思います。
土地単価が坪10万円ぐらいのイメージの地域ですね。
伊賀市が借りている土地の相場は坪5万円程度なので、なかなか良い地代だな。と分かると思います。
9.4%の地代利回りは高いのか?
利回りの水準の実態把握については、不動産鑑定士の地域会が調査を行っており、中部圏でも「中部圏における定期借地権実態調査報告書」というものが平成24年11月に発行されています。
市の契約の形態が分かりませんが、参考になるものとして一般事業定期借地権の利回りがあります。同報告書では前回、今回では5~6%と報告されています。
それと比べると9.4%や14.5%という利回りはいささか高いような気がしますね。
契約期間は19年3か月なので、地代の支払総額は8300万円にものぼります。
土地の価格の倍近くの地代を支払ってまで、賃借にこだわった理由は何なんでしょうか。総額8300万円も支払うのならば、購入してしまった方が安かったのでは?と思ってしまいますね。
土地価格と地代支払総額
土地価格 4650万円 < 地代支払総額 8300万円
まとめ
元記事を読んでみると、所有者は有力議員の長男が役員をしていたようですね。
賃料は市が独自に積算したようですが、担当者は「平成23年に駅前の道路を整備した際に実施した鑑定の結果に基づき、適切な賃料を算出した」と述べているようです。
鑑定をしたから妥当だ!なんて逃げ道のように書かれていますが、6年も前の、しかも用地買収のための鑑定を元に積算されて、それを鑑定士の責任にされたらたまったものじゃありませんね。
数十万円支払って、不動産鑑定士に地代を鑑定評価してもらうという発想はなかったのでしょうか。