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鑑定評価

鑑定評価額と比準価格、収益価格はどのような関係?価格のバランスってあるの?

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不動産の鑑定評価書をみると色々な価格が記載されています。

結果としての鑑定評価額のほかに、鑑定評価額を導くために計算された比準価格収益価格積算価格などの試算価格があります。特に土地を評価するに当たっては比準価格収益価格はほぼ必ずでてきます。たまに開発法による価格なども出てきますが今回は割愛します。

今回はその試算価格(比準価格や収益価格)と結果としての鑑定評価額のバランスについて、平成28年地価公示の結果を例にして書いていきたいと思います。

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語句説明

鑑定評価額

教科書的な定義は抜きにしまして、時価を指します。市場価値とも言い換えられますね。

比準価格

鑑定士と話していると、「ひじゅん」という言葉を頻繁に耳にすると思います。比準価格とは実際に市場において取引された取引価格をもとにして計算された試算価格です。

実際に取引された価格をもとに計算されているので極めて現実的な価格ではありますが、それは類似した取引事例を豊富に集められたときのみです。実際は(特に商業地などは)類似した取引事例が豊富にあるなんてことは多くないことから、比準価格の精度は類似性の高い(規範性の高い)取引事例をどれだけ豊富に集められるかということに掛かってきます。

収益価格

収益価格はその不動産の収益性の観点からアプローチした試算価格です。土地(更地)の評価の場合は、その土地に店舗や共同住宅などの収益性のある建物を建築することを想定し、収益計算をすることにより土地価格を導きます。収益を目的として売買されるような商業地などは極めて意義のある試算価格ですが、如何せん想定要素が多いことがネックです。収益価格の精度は収益計画をいかに正確に現実的にえがくことができるかということに掛かってきます。

また、住宅地などではそもそも収益性を目的とした取引が少ないことからどんなときでも万能。という価格ではありません。

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 H28年地価公示における試算価格のバランス

今回は商業地をとりあげてみたいので、平成28年地価公示の各地域別の最高価格地の試算価格のバランスを調べていきたいと思います。

PDF H28年地価公示の県別商業最高地

地価公示は同じ地点を2人で評価をしているので、AとBの2人分の価格を掲載します。

北海道地区

[table id=17 /]

札幌中央5-1:北海道札幌市中央区南1条西4丁目1番1外

参考 平成28年鑑定評価書(札幌中央5-1)

東北地区

[table id=18 /]

仙台青葉5-1:宮城県仙台市青葉区中央1丁目813番

参考 平成28年鑑定評価書(仙台青葉5-1)

関東地区

[table id=19 /]

中央5-22:東京都中央区銀座4-5-6

参考 平成28年鑑定評価書(中央5-22)

[table id=20 /]

横浜西5-1:神奈川県横浜市西区南幸1-3-1

参考 平成28年鑑定評価書(横浜西5-1)

中部地区

[table id=21 /]

名古屋中村5-2:愛知県名古屋市中村区名駅1-2-2

参考 平成28年鑑定評価書(名古屋中村5-2)

関西地区

[table id=22 /]

大阪北5-28:大阪府大阪市北区大深町4-20

参考 平成28年鑑定評価書(大阪北5-28)

中国地区

[table id=23 /]

広島中5-1:東京都中央区銀座4-5-6

参考 平成28年鑑定評価書(広島中5-1)

九州地区

[table id=24 /]

福岡中央5-9:福岡県福岡市中央区天神1-11-11

参考 平成28年鑑定評価書(福岡中央5-9)

各地域について

各地域の試算価格を羅列してみましたが、分かりづらいのでまとめてみました。それぞれの評価地点もまとめたいため、AとBの価格は平均をとりました。AB間の価格はそれほど乖離していないことから問題はないかと思います。

[table id=25 /]

全ての地点において

比準 > 鑑定 > 収益

という関係になっています。どちらかというと比準価格寄りに決定されていることから、収益価格よりは比準価格を重視して鑑定評価額を決定していることも分かります。

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まとめ

ちょっと前にH28年地価公示の価格上昇として由布院の商業地の地点について調べました。

全国有数の温泉地"由布院"の地価が上昇していることについての考察

平成28年地価公示の公表資料を読んでいたら、"地価の上昇がみられた個別地点"についての考察が書かれていました。 ほとんどが都市部の話しだなと思って眺めていたら、一つだけ地方のものがありました。それが大 ...

試算価格のバランスについて知りたくなったのは由布5-2を調べたことがきっかけです。

[table id=26 /]

参考 平成28年鑑定評価書(由布5-2)

このように由布5-2では収益価格が比準価格よりも高位になっています。それも平成28年からです。収益価格は比準価格より低位でなくてはいけないという決まりもありませんし、特に商業施設(土地建物)の評価では収益価格が積算価格よりも高く試算されることは頻繁にあります。

ただ試算価格の調整文を読んでみてもなぜ高いのかがいまいち理解できなかったんですよね。収益価格の試算のページも開示されるようになったら分かるんでしょうけど、なぜ平成27年と比べて収益価格が5割も上昇したのかは気になるところです。

因みに熊本地震により由布院も被害が出たようですが、営業も元気に再開している旅館も多いようです。ゴールデンウィーク中も9割近くの旅館が営業をするようですね。

参考 由布院温泉観光協会




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