還元利回りとは何でしょうか?
還元利回りはどのように求めればよいのでしょうか?
この記事では還元利回りの定義を確認するとともに、還元利回りの求め方について解説します。
還元利回りとは
還元利回りはCapitalization Rateと英語表記します。
カタカナではキャップレートなどと呼び、キャップと略すことも多いです。
還元利回りは、純収益(NOI)から不動産の価格を求める際に使用する利回りです。
次の下の式のように、純収益を還元利回りで割り返すことにより不動産の価格(収益価格)を試算します。
還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用する率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測にともなう不確実性含むものである。
鑑定評価基準より
還元利回りと割引率の違い
還元利回りに似たものに割引率があります。
還元利回りも割引率も共に不動産の収益性を示すもので、収益価格を求めるための利回りです。
まず、不動産鑑定評価基準で割引率の定義を確認しましょう。
割引率は、DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測にともなう不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。
鑑定評価基準より
つまり、割引率は還元利回りとは違って、将来の収益見通しにおいて反映された変動予測は含まれません。
計算式の導き方は省略しますが、割引率と還元利回りの間には下の関係式が成り立ちます。
分かりやすいように具体例をあげて還元利回りを計算してみましょう。
設例
割引率(Y)は5%、純収益は年間で1.5%ずつ増加していくとされるとき、還元利回り(R)はいくらか?
還元利回り(R)=5%-1.5%=3.5%
つまり、純収益(賃料)が上昇していく局面では還元利回りは割引率よりも小さく、不況時のように純収益(賃料)がどんどん小さくなっていく局面では還元利回りは割引率よりも大きくなります。
還元利回りの求め方
還元利回りを求める方法は、不動産鑑定評価基準に5つが列挙されています。
- 類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
- 借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法
- 土地と建物に係る還元利回りから求める方法、
- 割引率から求める方法
- 借入金償還余裕率から求める方法
類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
類似の不動産の取引事例との比較から求める方法は、対象不動産と類似の不動産の取引事例から求められる利回りをもとに、取引時点及び取引事情並びに地域要因及び個別的要因の違いに応じた補正を行うことにより求めるものです。
取引事例の収集及び選択については、取引事例比較法の適用方法に準じます。
取引事例から得られる利回り(取引利回り)については、償却前後のいずれの純収益に対応するものであるかに留意する必要があります。あわせて純収益について特殊な要因(新築、建て替え直後で稼働率が不安定であるなど)があり、適切に補正できない取引事例は採用すべきでないことに留意する必要があります。
この方法は、対象不動産と類似性の高い取引事例に係る取引利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効です。
借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法
借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法は、対象不動産の取得の際の資金調達上の構成要素(借入金及び自己資金)に係る各還元利回りを各々の構成割合により加重平均して求めるものです。
この方法は、不動産の取得に際し標準的な資金調達能力を有する需要者の資金調達の要素に着目した方法であり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れています。
式は次のとおりです。
R=RM ×WM + RE ×WE
- R:還元利回り
- RM:借入金還元利回り
- WM:借入金割合
- RE:自己資金還元利回り
- WE:自己資金割合
土地と建物に係る還元利回りから求める方法
土地と建物に係る還元利回りから求める方法は、対象不動産が建物及びその敷地である場合に、その物理的な構成要素(土地及び建物)に係る各還元利回りを各々の価格の構成割合により加重平均して求めるものです。
この方法は、対象不動産が土地及び建物等により構成されている場合に、土地及び建物等に係る利回りが異なるものとして把握されている市場においてそれらの動向を反映させることに優れています。
式は次のとおりです。
R=RL ×WL + RB ×WB
- R:還元利回り
- RL:土地の金還元利回り
- WL:土地の価格割合
- RB:建物の還元利回り
- WB:建物の価格割合
割引率から求める方法
割引率から求める方法は、割引率をもとに対象不動産の純収益の変動率を考慮して求めるものです。
この方法は、純収益が永続的に得られる場合で、かつ純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効です。
還元利回りと割引率との関係を表す式は次のとおりです。
R=Y-G
- R:還元利回り
- Y:割引率
- G:純収益の変動率
借入金償還余裕率から求める方法
借入金償還余裕率の活用による方法は、借入金還元利回りと借入金割合をもとに、借入金償還余裕率(ある期間の純収益を同期間の借入金元利返済額で除した値)を用いて対象不動産に係る純収益からみた借入金償還の安産性を加味して還元利回りを求める方法です。
この場合において用いられる借入金償還余裕率は、借入期間の平均純収益をもとに算定すべきことに留意する必要があります。
この方法は、不動産の購入者の資金調達に着目し、対象不動産から得られる収益のみを借入金の返済原資とする場合に有効です。
式は次のとおりです。
R=RM-WM-DSCR
- R:還元利回り
- RM:借入金還元利回り
- WM:借入金割合
- DSCR:借入金償還余裕率(通常は1.0以上であることが必要)
DSCRはDebt Service Coverage Ratio(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)の略で、元利金返済カバー率ともいいます。
不動産から得られる収益によって、借入金の返済をどの程度カバーできるかを示した値です。
DSCR=NOI ÷ 元利金と利息の返済額
DSCRが1.0未満ということは、不動産から得られる純収益よりローン返済が上回ることを意味します。ですので、通常1.0以上であることが望ましいです。