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不動産実務TIPS

鑑定評価

H29年度の鑑定評価モニタリングの立入検査結果が発表されました。

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平成29年の鑑定評価モニタリングの結果が公表されています。

国土交通省では、鑑定評価モニタリングの一環として、「不動産鑑定業者を対象とする立ち入り検査実施要綱」及び「不動産鑑定業者に対する立入検査の実施方針」に基づき、不動産鑑定業者への立入検査を実施しています。

URL 国土交通省|不動産鑑定評価等の適正な実施について(平成30年3月23日付け)

モニタリング検査の概要

毎年検査が入るのは50業者です。

昨年は50業者中、40業者(厳重注意7業者、助言33業者)に行政指導が実施されました。今年の指導された業者数は25業者でした。

行政指導には例年厳重注意と助言がありますが、その内容は今年は開示されていません。

モニタリングの対象となった評価目的

全ての不動産鑑定評価がモニタリングの対象となる訳ではなく、鑑定評価の依頼目的によって重点的にモニタリングされます。モニタリングの対象となる依頼目的は次の3つ。

モニタリングの対象となる鑑定評価

  • 証券化対象不動産の鑑定評価
  • 財務諸表の作成に係る鑑定評価
  • 資産評価に係る鑑定評価

参考 国土交通省|鑑定評価モニタリングについて

改善の内容について

改善の内容については、不動産の鑑定評価における各手順において多種多様な指摘がなされているので、全部はまとめません。気になったものだけ記載していきたいと思います。

全てを知りたい人は、公表されているモニタリングの検査結果をご覧ください。

URL 日本不動産鑑定士協会|国土交通省からの通知に対する対応について ~鑑定評価モニタリングにかかる立入検査の検査結果(改善を要する事項)~

対象確定条件の背景や類型の区分について、依頼目的や対象不動産の現実の利用状況を考慮し、適切に行うこと。

現実には建物がある場合の評価について「現況を所与とする鑑定を行う」と記載しながら、更地としての評価を行っている。

対象確定条件は大事なところですが、実務では軽視されやすいというか定型文になりがちな部分だと思います。

実際には建物があるのに更地として評価をするときの記述は、「現況は工場の敷地として利用されているものの、建物等が存しないものとしての評価(独立鑑定評価)を行う」などとなるのでしょうか。

また、自用の建物及びその敷地の評価で単純に「更地価格 + 建物価格」としているものも危険ですよね。

例え「更地価格 = 建付地価格」だとしてもそのことを明示した方が分かりやすいと思います。実際の鑑定評価書をみると、意外と「更地価格 + 建物価格」が多いですよね。

価格形成要因の分析に当たり、一般的要因の分析を適切に行うこと

一般的要因の分析に関する内容の記載がない

一般的要因の分量って難しいですね。さすがに記述が無いのは大問題です。

でも長すぎる評価書も読みづらいですよね。評価に関する部分は薄っぺらなのに、一般的要因の分析(経済報告をコピペしただけ)が数ページにもわたり、大部分を占める評価書もありますね。

鑑定評価を知らない依頼者さんからしたら厚い評価書になるのでそれっぽく見えるでしょうが、同業者から見るとかえって薄っぺらに見えます。

個別分析に当たり、価格形成に重大な影響を与える要因の分析を適切に行うこと

貸家及びその敷地の評価に置いて、貸室の稼働状況等についての記載がない。

対象不動産の画地条件の記載がない

この2つの指摘はなかなかのレアケースではないでしょうか。

画地条件の記載のない評価書なんて見たことがありません。モニタリング検査の対象となる鑑定業者って仕事量も多くて、それなりにきちんとした鑑定業者だと思っているんですが、色々あるんですね。

個別分析に当たり、対象不動産の現状の用途や個別的要因を踏まえ、最有効使用の判定を適切に行うこと

最有効使用が複数記載されており、一つに絞られていない

最有効使用が複数書いてある鑑定評価書は何度か見かけたことがあります。

書いている先生とそのことについて話したこともあるんですが、「店舗としての一体利用も考えられるが、戸建ての分譲も考えられる」などと言われましたが、「それならどうやって価格を求めるの?」と疑問に思った記憶があります。

大先輩だったので、何も意見はしませんでしたが。

原価法の適用に当たり基準に定められている項目に則り適切に運用すること

土地の減価修正、建物及びその敷地一体としての減価修正に関する記述がない

土地の減価修正ですね。鑑定基準にあるのは知っていましたし、記載しなければいけないのも知っていました...(自粛)

収益還元法の適用に当たり基準に定められている項目に則り適切に運用すること

土地残余法の適用に置いて、想定されている建築物が土地の最有効使用に係る建築物と異なる。

土地の最有効使用が、収益性からみた土地の最有効使用(土地残余法適用にあたっての想定建物)と異なることは一般的だと思っていたんですが、違うんでしょうか?

例えば、戸建住宅用地が最有効使用と判断しても、土地残余法の適用においては共同住宅を想定することはごく当たり前のことです。

鑑定評価報告書等に記載しなければならない事項について、適切に記載すること

不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査における基本的事項及び手順について、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価との相違点及びその妥当性の根拠が不明確である。

いつも妥当性の根拠についての記載が悩むんですよね。この文量で十分なのかな?と悩みながら書いています。

突っ込まれたらアウトなのかもしれません。

過去の立入検査結果について

過去の立ち入り検査結果についても、公表時に記事を書いています。

以前どのような内容で注意を受けているのかを確認することは、鑑定評価書の質を上げるためにも必要なことです。是非およみください。

記事 H27年度の鑑定評価モニタリングの立入検査結果が発表されました。

記事 H28年度の鑑定評価モニタリングの立入検査結果が発表されました。

個人的には、平成28年に指摘されていた、「更地評価は高圧線下地の減価は行わない」という指摘は、なかなか面白い指摘でした。

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