Jリートの物件取得を見ていたら、銀座2丁目の取引が出ていました。
URL 国内不動産信託受益権の取得に関するお知らせ【Gビル銀座中央通り01、Gビル吉祥寺02】(780.1KB)
取得したのは日本リテールファンド投資法人(以下JRF)です。JRFはJリートの先駆けの一つであり、三菱商事との関係が深い投資法人ですね。そのためイオン関連の施設を中心に運用しているところに特徴があります。
この取引が非常に興味深かったので、プレスリリースを基にその取引内容をまとめてみたいと思います。
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プレスリリースを基にした分析
取得資産の概要
Gビル銀座中央通り01
所在地:東京都中央区銀座二丁目6番16号
資産の種類:不動産信託受益権(準共有持分50%)
土地面積:394.53㎡
建物面積(延床):4,339.92㎡
建築時期:平成26年5月資料元 上記プレスリリース
資産の種類に不動産信託受益権とありますね。信託受益権についてはここでは詳しくは触れないこととします。不動産の所有者と不動産の使用収益をする委託者が別になるところが特徴です。所有権を信託会社(受託者)に移転する代わりに、信託受益権を取得して不動産の使用・収益を委託者が受けるんですね。証券化においては税制などの色々な面で信託受益権が多く活用されています。
次に準共有持分50%とありますね。共有持分の前に準が付いているのは、信託受益権が債権だからです。これが所有権(物件)なら共有持分となりますね。今回は権利の半分(50%)だけ売買しています。
売買の概要
証券化不動産の売買に当たっては不動産鑑定士による鑑定評価が行われます。今回はシービーアールイー(株)が鑑定をしていますね。
取得価格:13,000百万円
鑑定評価額:13,300百万円
収益価格(直接還元法):13,200百万円
収益価格(DCF法):13,300百万円
積算価格:10,700百万円(土地94.0%、建物6.0%)
取得価格は130億円。準共有持分が50%であることを考えると不動産の価格としては260億円(130億円÷50%)だと推測できます。
土地の価格を推定してみよう
この物件の価格は260億円と先ほど計算しました。ここで土地と建物に割り振って分けてみましょう。土地建物の内訳価格をだす方法には色々あるんですが、最も一般的な積算価格比による方法を用いてみます。
プレスリリースにより土地割合は94.0%、建物割合は6.0%でした(積算価格比)。260億円の94.0%である244.4億円(260億円×94.0%)が土地価格と計算できます。面積は394.53㎡なので㎡単価は6190万円(244.4億円÷394.53㎡)となります。坪単価ではなんと2億500万円(6190万円/㎡÷0.3025)です。
土地価格:244.4億円(推定)
単価:6190万円/㎡(坪2億500万円)
公的な価格とともに坪単価をプロットしてみました。隣りのビルが地価公示・地価調査の共通地点に指定されています。平成27年7月時点で坪8700万円ですね。
もうちょっと南西に行くと、中央商22という地点があります。実はこの地点、鑑定的には最も有名な地点でありまして、全国の地価公示・地価調査の地点で最も価格(単価)の高い地点です(山野楽器銀座本店)。この地点でも坪1.1億円なので、今回の取引がいかに高いかがよく分かります。やはり銀座は希少性が高いので売り物が出るととんでもない価格で取引されますね。
不動産の鑑定評価には規準義務というものがあって、公的価格(地価公示価格)と均衡をとることが定められています。隣りの土地で倍半分の値段なんですがこれってどうなんですかね。
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まとめ
実はこの取引とは別に森トラストも銀座2丁目の不動産を取得しています。
2019年にホテルの開業を検討中ということです。こちらは価格は載っていませんでしたが、インバウンドの波もありホテル業界は建設ラッシュで大量のマネーがなだれ込んでいますからね。相当な値段なんじゃないかと勝手に予想しています。
3月の後半になれば、平成28年の地価公示も発表されますね。このような取引状況をみてみるとまた価格も上昇するのかな?なんて予想しますが、どうなるのか楽しみですね。
※計算に間違いがあったらごめんなさい。
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追記|不動産ミニバブルの芽、マイナス金利で「利回り神話」-銀座坪2億円
2016年4月1日のブルームバーグの記事でも記者の桑子かつ代さんという方が銀座坪2億円の内容を取り扱っていました。
Jリート大手の日本リテールファンド投資法人は、2月にシャネルやティファニーなどが立ち並ぶ銀座2丁目の商業ビルの持ち分の半分を130億円、坪単価約2億円で取得すると発表した。賃料などを収益とした投資利回りは2.8%。調査会社のアイビー総研の藤浪容子氏によると、Jリートによる取得時の利回りとしては過去最低。クレディスイス証券の望月政広アナリストは「決して割安な投資とはいえない」とし、「今後2%台での取得が出てくるだろう」と述べた。
このような取引があると、バブルだバブルだとけん制する意見がよく出てきますが、バブルは事後でないと証明できないものです。安直な言葉で経済事象を片付けるのは良くないと思うんだけどな。と個人的には思います。
追記|オンワードHDが銀座三丁目の土地を坪1億4千万超で売却
8月末にオンワードHDが銀座3丁目の土地を売却したという報道がありました。ストリートビューで更地になっているとなっている角地、308.88㎡(約93坪)です。
銀座の並木通りと松屋通りが交差する角地なので、人通りも多い繁華性の高い場所ですね。
東洋経済ONLINEなどの記事を読むと、売買価格は総額135億円、売却先は阪急電鉄株式会社です。オンワードHDの売却時の帳簿価額は114億円だったようなので、譲渡益は20億にもなります。
単価は坪1億4400万円です。路線価では坪4,000万円程度なので、かなり強気の取引ですね。
売買された土地のすぐ北側、並木通り沿いには東京都の基準地(中央5-15)もありますが、9月中旬に発表される地価調査基準地価格はどうなるんでしょうね。みものです。