2月9日の自民党、国土交通部会で宅地建物取引業法にインスペクションを位置づける方針を決め、同部会で法案についての説明がありました。
条文の審査をした後、2017年2月下旬には国会に提出される見込みです。
◆政調、国土交通部会
12時(約1時間) 701
議題:1、宅地建物取引業法の一部を改正する法律案の概要について
2、海上交通安全法等の一部を改正する法律案の概要について
3、その他
今回の改正の一つの目玉、インスペクションについて説明をしたいと思います。
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ホームインスペクションとは?
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行う専門業務です。
アメリカでは中古住宅の過半の取引がホームインスペクション(住宅診断)を経た後に行われており、既に制度として浸透しているようです。
国土交通省からは「既存住宅インスペクション・ガイドライン」というものも平成25年6月に策定されています。
国土交通省では、中古住宅・リフォームトータルプラン(平成24年3月)に基づいて、消費者が中古住宅の取引時点の物件の状態・品質を把握できるようにす るため、第三者が客観的に住宅の検査・調査を行うインスペクションにつき、検査・調査を行う者の技術的能力の確保や検査・調査の項目・方法等のあり方につ いて検討を行い、今般「既存住宅インスペクション・ガイドライン」をとりまとめました。
引用:国土交通省|「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の策定について
インスペクションの目的は?
インスペクションの目的は、ホームインスペクション(住宅診断)を行うことによって売り主と買い主の不安を解消するということが第一です。
インスペクションのメリット
- 建物に対する不安がなくなる(特に買い主)
- 必要な補修・修繕が明確になることによりリフォーム費用を含めた支払総額が分かる
- 建物の情報が売り主・買い主ともに対称になる。
メリットばかりかと言われれば、逆にデメリットとなる部分も存在します。
特に仲介業者にとっては、売買がまとまりかけたのにインスペクションにより見つかった欠陥で売買が中止となってしまったら何も良いことがありません。売り主にとっても高い査定が付いていたのにインスペクションにより予定していなかった瑕疵が見つかって売買価格を下げざるを得ない場合も出てきます。
適正な売買、中古住宅の流通活性化を目指すならば必要なことですが、一回の売買行為だけをみるとデメリットになってしまいます。
ホームインスペクションの内容
ホームインスペクションの内容は業者によって異なり、きちんと統一した調査内容はまだ無いようです。
国土交通省では他の既存制度等とともに検査項目一覧表をまとめています。
木造戸建住宅
RC造共同住宅
引用:国土交通省|既存制度等における検査項目一覧表
検査時間は2~4時間、サービス料金は5~6万円程度が多いようです。基本的な調査項目の他に、床下・屋根裏の詳しい調査や耐震診断を付加すると追加料金がかかります。
宅建業法改正によりインスペクションは義務化される?
中古住宅の取引においてインスペクション(建物診断)が義務化されると誤解している人がまだ多いのですが、インスペクションが義務化されるわけではありません。
インスペクションは義務ではない
では何が義務化されるのでしょうか。それは、中古住宅取引の際のホームインスペクション(住宅建物診断)の説明の義務化です。期日は2018年4月からです。具体的にいうと、宅建業者は2018年4月の取引(重要事項説明)の際に次のことを行わなければならなくなります。
中古住宅の取引においてやらなければならないこと
- 媒介契約を結ぶ際に、インスペクター(インスペクション事業者)を斡旋(あっせん)できるかどうかを媒介契約書に記載する
- 売買契約締結前に買い主に行う重要事項説明の際に、インスペクションが実施されたかの有無、インスペクションが行われたときはその結果について説明すること
- 売買契約の成立時に建物の状況について当事者双方が確認した事項を記載した書面を交付すること
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主な資格・事業者など
公認ホームインスペクター(住宅診断士)
NPO法人日本ホームインスペクターズ協会が認定する民間資格です。
まだまだ普及はいまいちといったところでしょうか。東京でも150人程度、地方にいけば県内に一桁人数です。
全国で検索すると598人となっているので、600人弱の方が現在(2016年2月)登録されているようです。
URL:日本ホームインスペクターズ協会
インスペクションNext
住宅設備大手の株式会社LIXIL(リクシル)の子会社株式会社LIXIL住生活ソリューションが手がける「新・住宅診断サービス」です。
国土交通省の既存住宅現況検査ガイドラインをベースに、住宅性能、設備(公立)などの住宅価値を生活者の視点で測った住宅診断サービスです。
住宅検査センター
戸建住宅、集合住宅、事務所ビル他建築物の調査診断、コンサルティングを主たる業務として行っている会社です。
一般的な住宅、共同住宅の建物診断のほか、フラット35(中古戸建て・中古マンション)の適合証明書や耐震基準適合証明書に関するサービスも行っています。
URL:株式会社住宅検査センター
まとめ
中古住宅をメインで扱う不動産業者としてはインスペクションの知識も身につけたいところですね。インスペクションに関する資格については次の記事にまとめてありますので、是非ごらんください。
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インスペクション(住宅診断)の資格には何がある?公認ホームインスペクターにホームインスペクター。
国交省で中古建物の取引の際、インスペクションを義務付けるような動きがあるとの記事を書きました。 参考 中古住宅市場の活性化のためにインスペクションが必須に?そもそもインスペクションとは何? 2月9日の ...