先日の宅建業者の評価額査定根拠説明義務について調べていたところ、(公社)全日本不動産協会のホームページに気になる文言が書かれていました。以下抜粋します。
価格査定の依頼
例えば、売却希望者から物件価格の査定依頼が入った場合、価格査定のみを業務として受託するときは宅建業法(以下法)に抵触せず、調査料等を請求すること は可能と考えられます。ただし、不動産鑑定評価法(昭和三十八年七月十六日法律第百五十二号)33条、36条に禁止される不動産鑑定業務に類する価格評価 を行うことは出来ません。
全日本不動産協会という団体が、事業者(宅建業者)向けにQ&A形式で質問に答えた回答です。今日はこの文言について考えていきたいと思います。
現在はこのような記述はなくなっていますが、問題提起のために論点を分析します。
鑑定評価とは
まず最初に不動産の鑑定評価を行うことは不動産鑑定士の独占業務になります。
(不動産鑑定士でない者等による鑑定評価の禁止)
第36条 不動産鑑定士でない者は、不動産鑑定業者の業務に関し、不動産の鑑定評価を行つてはならない。
では、不動産の鑑定評価とはそもそも何でしょうか。これも法律にきちんと記載があります。
(定義)
第2条 この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。
不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することが不動産の鑑定評価です。
宅建業者による価格査定とは
では、宅建業者による価格査定とは何でしょうか。
宅地建物取引業者による価格査定書は、本来「宅地建物取引業法第34条2の2第2項」に基づく「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務」を根拠として作成されるものです。これは媒介行為の一環として依頼者に提示されるもので、その目的を離れて(つまり不動産仲介業務を前提としないで)、あるいは査定の対価として報酬を受け取って作成されたものであれば、宅建業法と鑑定法の二つに違反することとなります。
つまりは、仲介(媒介)を前提としていない価格査定は認められていません。
全日本不動産協会のQ&Aの検証
先の2つをまとめたところで、全日本不動産協会のQ&Aを検証していきましょう。
売却希望者から物件価格の査定依頼が入った場合、価格査定のみを業務として受託するときは宅建業法(以下法)に抵触せず、調査料等を請求することは可能と考えられます。
媒介契約を前提としないでも価格査定業務を受託しても良いですよと書かれていますね。基本的に全てが鑑定法違反になります。
例外は農地等に関する適用除外(鑑定法第52条)だけです。農地を農地として鑑定評価する場合は、不動産の鑑定評価には含まれないものとされています。この場合は鑑定士の独占業務ではありませんので宅建士の査定も合法とされます。
(農地等に関する適用除外)
第52条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該評価等の行為は、この法律にいう不動産の鑑定評価に含まれないものとする。
一 農地、採草放牧地又は森林の取引価格(農地、採草放牧地又は森林以外のものとするための取引に係るものを除く。)を評価するとき
まとめ
(公社)全日本不動産協会は宅建業者の業者団体です。うさぎのマークでお馴染みの方の団体ですね。通称全日です。もう一つの大きな組織はハトのマークでお馴染みの(公社)全国宅地建物取引業協会連合会、通称全宅連です。
公益法人格を取得した団体でもありますし、数万の宅建業者をリードする団体でもあります。是非法令遵守でコンプライアンスに気をつけた活動をしてもらいたいものですね。
参考までに数年前に鑑定士協会連合会が出した鑑定評価類似行為の防止についての広告を載せておきます。