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縄伸び・縄縮みとは?縄伸びの調査方法や縄伸び率について

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国土調査が終わっていない地域では未だに「縄伸び」「縄縮み」が生じている土地が多数あります。特に田畑や山林では実際の面積が登記面積と比べて数割増しや数倍になることも珍しくありません。

では、「縄伸び」「縄縮み」とはどういったものなんでしょうか。

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縄伸び・縄縮みとは?

縄伸び・縄縮みは、登記面積(公簿面積ともいいます)と実測面積を比較して、登記面積が実際の実測面積よりも小さいことを縄伸び、登記面積が実際の実測面積よりも大きいことを縄縮みといいます。

縄伸び・縄縮みとは?

  • 縄伸び:登記面積 < 実測面積
  • 縄縮み:登記面積 > 実測面積

登記面積とは?

法務局に備え付けられている全部事項証明書(登記簿謄本)には、表題部にその土地の基本情報を表すものとして「所在・地番」「地目」「地積」が記載されています。

この表題部に記載されている「地積」が登記面積(公簿面積)です。

登記面積って実際の面積と違うの?

そうですね。普通の人は法務局にある公的な書類に書かれている面積なので、正しい面積だと思ってしまいがちです。でもこれが実測面積と異なることが多いんです。

なぜ、登記面積と実測面積が異なることが多いかは明治時代まで遡ることになります。

登記面積と実測面積が異なる理由

登記面積はどのように測られた?

  • 国土調査が行われた。
  • 土地区画整理事業が実施済みである。
  • 土地改良がおこなわれた農地である。
  • 比較的新しい分譲であり分譲時に測量が行われている

これらの場合には登記面積は実際の実測面積と同じであることが多いです。

登記面積 = 実測面積

現在の不動産登記制度は、昭和35年に根幹が作られましたが(昭和35年法律第14号「不動産登記法の一部を改正する等の法律」)、地積については明治初期の地租改正事業の際に作られた地券台帳、明治17年に創設された土地台帳制度のものを引き継いでいます。

明治時代の測量を元にしているので、当然技術は未熟です。測量機器も現在のようなものはなく、それこそ縄で行われていたようです。

縄で測量していたから「縄伸び」って言うんだね!

国土調査や土地区画整理事業などで現地復元能力を有する正確な地図が作られ、土地の面積も正確に測られるようになりましたが、未だに法務局に備え付けられている地図は、明治初期に作成されたものが約半分と言われています。

縄縮みよりも縄伸びが多い理由

実際の土地の調査をしていると、縄縮み(実測面積より登記面積が大きい)よりも縄伸び(実測面積が登記面積より大きい)が多いことに気付くと思います。

実際の面積より小さく表示をするって損をしている気分?

そうですね。登記面積が実測面積よりも小さいということは、本当はもっと大きい面積なのに過小に登記されていることになります。損をしているような気がするんですが、なぜ縄伸びの方が多いんでしょうか。

それは、明治時代の土地台帳(面積)が税金算出の基礎となっていたからです。当時の地租(税金)は土地の面積を基準に計算されていたため、住民は税金の負担を減らすために土地を実際の面積よりも小さく申告することが多く、そのため縄伸びの土地が増えたと言われています。

当時の背景として、地租改正事業を早期に終わらせなければいけないという事情があったので、このような杜撰な地籍調査でも、厳しいチェックがなくとおってしまったということも要因の一つです。

縄伸びの調査方法

縄伸び・縄縮みのうち、圧倒的に多いのが縄伸びなので、縄伸びを前提に説明していきたいと思います。

調べている土地が縄伸びしているかどうか、これを調べるにはどうしたら良いでしょうか。測量をしてしまえば良いのですが、測量費用も高額になることから全部が全部測量をすることはできません。

自分である程度、縄伸びの可能性があるかを当たりを付けられるようにならなければなりません。当たりをつけるには登記簿ではなく、公図(法務局に備えられている地図)を見ることが必要です。

公図を調べる

公図と書きましたが正式には法14条地図です。

法14条地図を見ると、下には所在地番のほか、「縮尺」「分類」「種類」が記載されています。まずは「分類」を見てみましょう。法14条地図となっていれば縄伸びは無いと考えて良いでしょう。法14条地図は、現地復元能力を有する正確な地図です。

下に例を出しましたが、分類が”地図に準ずる図面”となっています。種類は”旧土地台帳附属地図”となっていますね。

こうなると要注意です。昔からの地図を引き継いだものが地図として使われているので、結果として登記面積も古いまま、昔の測量技術によって測られた面積が登記されている可能性が高くなります。

旧土地台帳附属地図は要注意

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地図の縮尺もチェックしよう

公図の縮尺はほとんどが「500分の1」か「600分の1」です。

地図の精度が低いのは「600分の1」です。ですので、600分の1の公図の場合は、縄伸びを疑いましょう。

600分の1の地図は要注意

さて、上で例として挙げた公図。どこのものかというと銀座の一等地のものなんですね。日本を代表する土地が法14条地図ではなく、いわゆる公図(地図に準ずる図面)だっていうことはかなり意外ですね。

地図の見本

 

縄伸び率

最後に縄伸び率について少しだけ説明をしてみたいと思います。

縄伸び率とは、実際の実測面積が登記面積に比べて何割大きいかという比率です。実測面積600㎡、登記面積500㎡で実際に計算してみます。

縄伸び率の計算

縄伸び率 = 600㎡(実測面積) ÷ 500㎡(登記面積)=120%

つまり、2割の縄伸び率です。

以前、地域の縄伸び率が2割なので、実際の面積は登記面積の2割増しだという荒っぽいレポートを目にしました。

縄伸び率というのは地域の標準というものはなく、2割の縄伸び率の土地の隣りが4割の縄伸び率いなったりすることが往々にしてあります。きちんと測量をするなり、公図上の面積を求積して概算でも個別の縄伸び率を計算する必要があります。




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