空室率はアパート経営、ビル経営をする際には重要な指標となります。1棟ごとの空室率、エリアごとの空室率、県内での空室率などの指標が発表されています。
公表されている空室率インデックスの中に株式会社タスの空室率TVI(タス空室インデックス)があります。この空室率インデックスですが、空室率の計算方法にかなりの違和感が残るんですよね。
今日はタスの空室率インデックスについて書いてみたいと思います。
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TAS賃貸住宅市場レポート
株式会社タスは毎月「TAS賃貸住宅市場レポート」をリリースしています。最新の10月28日発行のものをみると、目次は次のとおり。
- 2016年8月期|首都圏賃貸住宅市場
- 2016年8月期|関西圏・中京圏・福岡県賃貸住宅市場
- 2016年第2四半期|1都3県賃貸住宅市況図
- 東京23区ハイクラス賃貸住宅の市場動向
賃貸住宅指標としては空室率インデックスなど4つの項目の分析がなされています。
- 空室率TVI
- 募集期間
- 更新確率
- 中途解約確率
今回注目しているのは空室率TVI(タス空室率インデックス)です。
空室率の計算の仕方
賃貸面積、戸数、賃料などいずれかをベースにしますが、今回は簡単に戸数ベースで空室率を計算してみます。
ベースはどんなものでも一緒ですが、分子には空室、分母には全室が入ります。
4棟のアパートで下図のような設例を設けてみます。窓が黄色になっているのは賃貸されている部屋と考えてください。
このアパートの空室率は何パーセントでしょうか?
3室÷24室=12.5%(空室率)
一般的な計算方法では12.5%が空室率となります。
では株式会社タスの計算方法では何パーセントの空室率となるでしょうか。
空室率TVIでの空室率の計算方法
タス空室率インデックスでの空室率の計算方法は変わっていて、分母が総戸数(総室数)ではありません。
分母は入居者を募集している建物の総戸数であり、満室稼動している建物の個数は含まれていません。この計算方法で上の設例の空室率を計算してみましょう。
左の2棟は満室稼動なので、空室率の計算には入りません。左の空室が存する建物が空室率計算の対象となります。空室率は次のとおり
3室÷12室=25.0%(空室率)
空室率が倍になってしまいましたね。なんか変な感じですね。
日銀の金融システムレポート
タスの空室率インデックスは日本銀行の金融システムレポートでも引用されている有名な指標になりまうが、日本銀行の金融システムレポートでも次のように注記されていました。
図表 IV-1-6 で用いた空室率指数の分母の戸数には、入居者を募集している建物の総戸数のみが含まれており、満室稼働している建物の総戸数は含まれない。したがって、満室稼働の建物に少数の空室が発生すると、指数計算の対象となるため空室率指数は低下する一方、空室が埋まり満室稼働の建物が発生すると、指数計算の対象外となり空室率指数は上昇する。
このため、同指数の短期的な動きを解釈する際には注意が必要である。