不動産鑑定士が不動産実務に役に立つ情報(TIPS)を綴ります

不動産実務TIPS

鑑定評価

独占業務資格に類似した名前の資格はどこまで許されるのか。不動産鑑定士を例にして。

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資格には名称独占ができるものがあり、その資格を有していないと名称を名乗ることができません。

私の場合は不動産鑑定士ですが、この不動産鑑定士という名称、似たような名前はどこまで許されるのかな。そんな疑問をもったので調べてみました。

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国家資格とは

まずは資格とは何かということを調べなくてはいけません。不動産鑑定士は国家資格なので国家資格について調べてみます。

国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。

引用 文部科学省ホームページ(国家資格の概要について)

国家資格は、法律で設けられている規制の種類により次のように分類されています。

国家資格の種類

  • 業務独占資格:弁護士、公認会計士、司法書士のように、有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格
  • 名称独占資格:栄養士、保育士など、有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格
  • 設置義務資格:特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格
  • 技能検定:業務知識や技能などを評価するもの

業務独占資格と名称独占資格

名称独占資格は、資格が無くてもその業務を行なえます。しかし資格が無ければその名称を名乗ることができません。国家が信用を付すことによって権威付けをしています。

名称独占資格は、その資格がなければ名称を名乗ることができない

では弁護士や公認会計士、不動産鑑定士などの業務独占資格は名称独占資格ではないので、資格が無くてもその名称を名乗れるのかというと、資格無しに名称を名乗ることはできません。

業務独占資格は弁護士には弁護士法、公認会計士には公認会計士法、不動産鑑定士には不動産の鑑定評価に関する法律などの根拠法が存在しますが、根拠法に名称独占規定があるからです。

業務独占資格にも、名称独占規定により名称を独占することができる

名称独占規定

名称独占規定が根拠法のどの条文に記載されているかはwikipediaが詳しいのでそちらを参照してください。

参考 業務独占資格の一覧

不動産鑑定士について具体的に見ていきたいと思います。

不動産の鑑定評価に関する法律 第51条 (名称の使用禁止)

不動産鑑定士でない者は、不動産鑑定士の名称を用いてはならない。

不動産鑑定士の資格を有していない人は、不動産鑑定士の名称を使ってはいけないよ。と記載してありますね。では類似した名称はどうなんでしょう。調べてはみたんですが、なかなかのグレーゾーンのようです。

不動産鑑定士に類似した名称の資格

不動産鑑定士に類似した名称ということで、〇〇鑑定士を探してみました。

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古民家鑑定士

古民家鑑定士は民間資格です。

古民家鑑定とは、厚生労働省認可財団法人職業技能振興会が認定する古民家鑑定士が、築50年以上の古民家を独自の調査項目により目視鑑定するものです。

不動産(古民家)の時価を鑑定評価するものではなく、その古民家に再び住むことや柱や梁などの古材を再利用することが可能かを鑑定し、文化的な価値が資産的にいくらになるのか、またカーボンニュートラルによる二酸化炭素の削減効果はどのくらいか等を具体的に評価するものです。

正直何の役に立つのかはよく分かりませんね。

住宅鑑定士

個人の方が多分、勝手に使っている名称だと思います。

この記事を書こうと思ったきっかけでもあるんですが、googleアラートで鑑定評価に関する記事を拾っていると、引っ掛かったのが住宅鑑定士の方のホームページでした。

一級建築士や宅地建物取引主任士、その他諸々の資格を有している方のようですが、住宅鑑定士と称しているのが引っ掛かります。

不動産鑑定士という名称を使用している訳ではもちろんないのですが、類似したものってどれぐらい許されるんでしょうね。個人的には住宅鑑定士なんて名称が浸透してしまったらそれこそ問題なのでどこかで取り締まってほしい気はするのですが、どうなんでしょう。

この方のホームページを見ると、"資産としての不動産の価値を客観的な視点から分析します。"とあります。具体的な内容は分かりませんが、経済価値としての不動産の市場価値を判定しているんでしたら、法律的には完全にアウトでしょうね。

2017年9月追記

ホームページが削除されていました。住宅鑑定士という呼称も使わなくなったかもしれません。

ひよこ鑑定士

ひよこ鑑定士という名称の資格があるものだと思っていたんですが、正確には「初生雛鑑別師(しょせいひなかんべつし)」という民間資格の一つです。

なぜか有名なひよこ鑑定士、しかし実際にひよこ鑑定士の方とお会いしたことはありません。どこに存在するのか...

調べてみたら毎年の受験者は10名程度、合格者は2、3人のなかなかの狭き門のようです。現在の有資格者も少なく、日本に110名、海外で70名となかなかワールドワイドに活躍されているようです。

その他

「鑑定士 資格」で検索すると次のような検索キーワードが出てきます。やっぱり美術品等の鑑定が多いですね。

鑑定士の付く資格

  • 宝石鑑定士
  • ブランド鑑定士
  • 美術鑑定士
  • 筆跡鑑定士
  • ダイヤモンド鑑定士
  • 骨董鑑定士
  • 紅茶鑑定士
  • 風水鑑定士

まとめ

古民家鑑定士のホームページを見ていたら、「古民家の状態・価値を評価するプロ」と紹介されていました。言うまでもなく、不動産を価格をもって表示する行為は不動産鑑定業法の違反になります。といことは、良い・悪い・普通などと判定するのでしょうか。

住宅の状態を判定する業務という意味では、2018年からきちんと制度化されるインスペクションの方が方が優位にたちそうです。

 




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