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なぜ相続税路線価は減少しているのか。路線価地区が消滅する理由はなに?

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課税目的だけではなく、土地の取引の指標としても活用されている相続税路線価。

こんなに便利な路線価ですが、路線価が付設されている地域がどんどん減少しているのを知っていましたでしょうか。

これは平成24年の財務省の予算執行調査によるものです。

URL 財務省|平成24年度予算執行調査の調査結果の概要(PDF)

土地評価基準作成鑑定評価等経費については外部有識者による意見もとりいれて、効率性に難ありという調査結果が公表されました。

URL 財務省|総括調査票 (PDF)

この調査はどのようなものだったのか。そして実際に減少した路線価がある市区町村を調べてみました。

平成24年度予算執行調査の調査結果の概要

事案名

土地評価基準作成鑑定評価等経費(財務省:一般会計)

概要

国税庁においては、相続等財産の課税に当たって、納税者等がその時価を算出するこ
とは困難であるため、納税者サービスとして路線価図等を作成・公表し、相続税等の課
税価格を算出できるようにしている。

予算額

24年度 3,356百万円 (23年度 3,335百万円)

調査結果

路線価については、市町村が実施する固定資産税評価路線価格(3年に1度評価替え)
とのバランスにも配慮しつつ毎年調査し、設定している。 また、その他標準地については、3名の土地価格精通者からの意見を参考に価格を算定しているが、その意義は低い。
さらに、評価地点数についても過大である。なお、土地評価については、複数の公的評価制度が存在しているほか、民間セクター等における不動産取引情報も充実しており、相続税路線価制度の意義を問い正す時期にあるのではないか。

今後の改善点・検討の方向

以下についての改善・検討を行い、効率性の向上を図る必要がある。
・ 固定資産税路線価の更なる有効活用を図ることにより、相続税路線価の調査規模を縮小することが可能か、関係省庁と調整・検討すべき。
・ その他標準地の評価について、3名の土地価格精通者の調査を原則1名とすることが可能か検討すべき。
・ 調査地点数の更なる削減に努めるべき。 また、複数の公的評価制度や民間の取引情報が存
在する中で、今後の相続税路線価制度の在り方を検討し、意義を明確にするべきである。

平成28年の路線価の状況

いうまでもなく、相続税路線価は国税庁のHPで公表されている資料になります。相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用されるという建前のほか、不動産業者が相場を調べるのに活用したりと、一般の不動産取引の指標としての役割の方が一般の国民には大きかったりするんじゃないでしょうか。

平成27年から平成28年に路線価のなくなった市町村

ありませんでした。

年々路線価の敷設されている市町村が減っているというイメージがあったんですが、全県で路線価の無くなった市町村はありませんでした。

平成24年と現在を比較すると間違いなく減っているので、もうちょっと前の年度と比較しなくてはいけなかったのかもしれません。

また時間を見つけて調べてみたいと思います。

平成25年の反映状況

さて、平成24年に行われた予算執行調査の調査結果ですが、平成25年の財務省の資料にどのように翌年の予算に反映したのかが記載されていました。

URL:財務省|反映状況票(PDF)

予算額

平成24年度予算 3,356百万円 → 平成25年度政府案 3,154百万円

評価の側で路線価算定の業務に携わることの多い不動産鑑定士ですが、年間30億円も予算が使われていたんですね。多いか少ないかは判断が付きかねますが、大切な税金を使って行う事業なので有用性の検証はしっかりしてもらいたいところです。

今後の改善点・検討の方向

  • 固定資産税路線価の有効活用について、相続税路線価の調査規模を縮小することが可能か、関係省庁と調整・検討すべき。
  •  一地点当たりの土地評価精通者を原則1名に変更できないか検討すべき。
  •  調査地点数の更なる削減に努めるべき。
  •  今後の相続税路線価制度の在り方を検討し、意義を明確にすべき。

反映の内容等(平成25年度予算に反映したもの)

  • 固定資産税路線価の更なる活用を図るため、路線価地域から倍率地域に変更するとともに、約1.2万の調査地点を削減することにより、経費の削減を図る。
  • 土地評価精通者にかかる「その他標準地」約 33.9 万地点のうち約 10万地点について、一地点当たりの土地評価精通者数を3名から2名へ変更することにより、経費の削減を図る。

また、全局のうち4署において、全ての「その他標準地」の土地評価精通者数を3名から1名へ変更することを試行的に行う。

まとめ

平成26年以降の予算についてはまだ調べていないんですが、気になるところなのでまた後で調べてみたいと思います。

相続税路線価を縮小する際に固定資産税路線価を有効活用すると書かれています。いうまでもなく固定資産税路線価は市町村が独自の財源で行っている事業になります。こちらも多額の税金を用いて行っている事業になるんですが、それを国が勝手に活用しますって正直虫がよくない?と感じてしまいますがいかがでしょう。

相続税や贈与税にも使うんであれば、市町村にお金を少し渡してよ?なんて思う市町村は出てこないんでしょうか。

平成29年は47の市区町村で路線価が消滅!

平成28年では路線価の減少がありあませんでした。しかし、平成29年になると状況は一変します。

なんと47の市区町村で路線価が消滅してしまったのです。

具体的な分析は別記事「路線価が消滅?H29年の発表で路線価の無くなった市町村を調べてみました。」で書いています。参考にしてみてください。

路線価が消滅?H29年の発表で路線価の無くなった市町村を調べてみました。

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