最近不動産鑑定士の団体が大学で寄付講座を開設したというニュースをよく目にします。
2018年の春からは滋賀大学で「不動産学」の寄付講座が開設されるようですね。国立大学では初めてだそうです。
滋賀県不動産鑑定士協会が今春、滋賀大経済学部で「不動産学」の寄付講座を開設する。都道府県の協会が国立大で開講するのは初めてといい、現場の経験を生かした不動産の知識を学生に伝えることで、鑑定士の認知度向上にもつなげる狙いがある。2日に滋賀大と覚書を交わした。
寄付講座は4月から計15回、協会所属の鑑定士がリレー形式で行い、不動産の基礎知識や価格を左右する要因、賃料の求め方、取引の注意点や競売制度などを講義する。鑑定士の認知度向上や人材育成、社会貢献を目的に、協会が大学へ開設を提案した。大学はファイナンス学科の専門科目と位置付け、経済学部生約400人を対象にしている。
大津市の県庁で行われた調印式では、協会の浜本博志会長が「不動産に理解を深めることは、社会への見識を深めることにつながる。将来、不動産や建築、金融関連の企業に就職した際にも生かされる」とあいさつ。経済学部の小倉明浩学部長は「研究者と現場で活躍する鑑定士の知見を合わせることで、教育をより豊かにできる」と期待を語った。
引用 京都新聞|滋賀大に「不動産学」開設 鑑定士が講義、国立大で初
では、寄付講座とはどのようなものなんでしょうか?
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寄付講座とは?
寄附講座は、企業などからの寄附金によって、大学における教育・研究の豊富化、活性化を図ることを目的として、「寄附講座」(大学院研究科・専攻に置く場合を設置し、運営する制度です
似たようなものに、寄付研究部門というものもありますが、大学院研究科・専攻に置く場合を寄付講座、附置研究所などに置く場合を寄付研究部門といいます。
教育・研究の豊富化、活性化を図ることを目的とすると書きましたが、近年は採用難を受けて、将来の人材獲得につなげる目的で設置する企業も増えています。
冒頭で紹介した滋賀大学の例は、滋賀県不動産鑑定士協会が開講しますが、鑑定士の認知度向上や人材育成、社会貢献を目的としています。
寄付講座というと、理系・大学院を対象とした研究色の強いものが多いイメージですが、資格団体の認知度アップ、イメージアップのためにも活用されているんですね。
寄付講座の具体例(静岡産業大学)
静岡産業大学では、寄付講座の開講が多く、平成23年度には34講座が開講されました。そのうちの少しをピックアップして紹介します。
面白いところでは、ジュビロ磐田も寄付講座を開講しているんですね。
寄付者 | 講義内容 |
ヤマハ発動機 | 製造業の機能を「研究・開発」「製造」「販売・サービス」の 3 つに分けて解説。工場見学や経営トップの特別講義も実施します。 |
スズキ | 繊維の会社として創業し、二輪車、四輪車と展開を図ってきたスズキの歴史と、厳しい環境下での今後の取り組みについて学びます。 |
ジュビロ磐田 | ニュービジネスとしてのプロスポーツ」をテーマに、プロスポーツ運営についてグループワークを中心に実践的に学びます。 |
中部電力 | 日本を取り巻くエネルギー・地球環境の保全などの課題を総括。持続可能な社会構築のための様々な取り組みを学びます。 |
上の例は経営学部ですが、情報学部ではマスコミなどの開講が目立ちます。
寄付者 | 講義内容 |
だいいちテレビ | テレビは斜陽産業なのか? テレビの担う役割とは? 取り巻く環境の変化の中で、テレビはどうあるべきか、その現状と課題を学びます。 |
シャンソン化粧品 | シャンソン化粧品の誕生と歴史から、化粧品の持つ魅力とその役割などを学びます。女子バスケ部の話やメークショーもあります。 |
藤枝ロータリークラブ | 国際的奉仕団体のメンバーである経営者の方々から、業界・企業の具体例を交え、企業による地域・社会貢献についてお話を伺います。 |
藤枝市 | 税金から観光、環境、年金、福祉、防災、都市計画など生活に密接した藤枝市の仕事を紹介。市長の講義も予定しています。 |
藤枝市などの自治体も寄付講座を開講するんですね。
引用 静岡産業大学|地域における産官学連携-寄付講座の開設-
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寄付講座の仕組み
最後に寄付講座の仕組みについて簡単に触れておきます。
寄付講座の仕組みについては、文部科学省の通知「国立大学等の寄附講座及び寄附研究部門の実施の運用について 」に詳しく書かれています。
寄付講座は原則として2年の開講とし、5年までの期間を定めることができます。また、最長の5年経過後も、更新することもできます。
寄附講座等は、国立大学等における奨学を目的とする民間等からの寄附を有効に活用して設置運営し、国立大学等の教育研究の豊富化、活発化を図ることを目的とするものであること。
内容 | |
寄付講座の趣旨 | 寄附講座にあつては講座において行われる教育研究に、寄附研究部門にあつては研究部門において行われる研究に相当するものを実施すること。 |
寄付講座の教員 |
寄附講座等を担当する教員として採用する者の身分は一般職の非常勤職員とすること。ただし、外国人については、国家公務員法(昭和二二年法律第一二〇号)第二条第七項に規定する勤務の契約により雇用することもできること。 寄附講座等を担当する教員に対しては、別に定めるところにより、客員教授又は客員助教授を称せしめることができるものとすること。 寄附講座等の構成については、少なくとも教授又は助教授相当者一人及び助教授又は助手相当者一人を単位とすること。 寄附講座等を担当する教員は、当該寄附講座等の教育研究に従事するほか、その他の授業又は研究指導を担当することができるものとすること |
経理等 |
教員給与、研究費、旅費等寄附講座等に係る経費は、国立学校特別会計法(昭和三九年法律第五五号)第一七条により国立大学の学長に経理を委任された金額により経理し、支弁する。 |
期間 |
寄附講座等の存続期間は、原則として二年以上五年以下とする。 |