ロードサイド店舗を出店する際に、賃借人が賃貸人に建物の建設費用を預けて、事業用建物の賃貸借契約をするときがあります。
このとき、建物の建設のために賃貸人に預けるお金を建設協力金といいます。
なぜこのような建設協力金が授受されるのでしょうか。オーナー側のメリットは何でしょうか?
この記事では建設協力金について解説します。
建設協力金は保証金のはしり
建設協力金の歴史は古く、戦後までさかのぼります。
戦後しばらくの間は銀行の融資に制限があり、ビルの建設費用の融資を受けることが困難で、お金の調達が容易ではありませんでした。
当時はビル需要は旺盛でしたが、反面資金不足もありビルを豊富に供給する体制は整っていませんでした。
しびたねビルの需要者(賃借人)がビル建設のための資金を賃貸人に預託し、ビルの建築資金を補うという方法がとられました。
この金額が建設協力金です。
建設協力金は、金銭消費貸借契約(金銭の貸し借り)の性格のもとで授受される金銭と理解されています。
建設協力金差し入れ方式
建設協力金差し入れ方式は別名オーナー方式ともいいます。
建物賃貸借をかりた有効利用の方式であり、郊外型店舗やスーパーの出店などでよく利用されます。
出店者が自分の希望する店舗の建築プランを立て、その建物を土地所有者名義で建設してもらい、建設工事費の大部分又は全部を、出店者が建物賃貸借契約開始時に一時金として預け入れます。
出店者は出来上がった建物を借り(出店者=賃借人)、営業をして利益を上げ、その中から土地所有者(=建物所有者)に賃料を払います。
建築費用として預け入れた一時金は、建物賃貸借契約期間中に分割して返済します。
このときの一時金は建設協力金と呼ばれます。
建設協力金と敷金の違いは?
まずは敷金の定義です。法律用語辞典を引用したいと思います。
敷金とは
家屋等の賃貸借に際し、賃貸人が、賃貸借終了の時に賃貸人に家賃の滞納その他債務不履行がなければ返還するという一種の停止条件付返還債務を負担して、賃借人から取得する金銭をいう(民法316・619Ⅱ等)
停止条件付返還債務などと難しい書き方がされていますね。もう少し簡単に説明しましょう。
敷金とは、賃借人が賃料を支払わないとか、その他債務不履行を担保するために預け入れるものです。
建設協力金と敷金の一番の違いは、賃貸物件の買い主に承継されないということです。
建設協力金は金銭の貸し借りなので、新所有者(新賃貸人)に返還を請求することはできません。
建設協力金のメリット・デメリット
建設協力金差し入れ方式による出店のメリット・デメリットは何でしょうか。
建設協力金のメリット
- オーナーがテナントを募集する必要がない
- 地主の相続税の節税対策になる
- テナントが希望する仕様で建築が可能
- 通常長期間の賃貸借契約となることが多く、事業の安定化が可能
建設協力金のデメリット
- テナントが希望した仕様で建築されるため、その後の転用が難しい
- 周辺賃料と乖離した賃貸借契約が結ばれていることが多く、法的安定性に乏しい
- 建築費用の高騰により、着工後に賃料や建設協力金で紛争になるケースがある