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弁護士などの士業の有資格者は逮捕されると資格をはく奪されてしまうのか

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私は不動産鑑定士という資格を有しています。

先日、青森県の官製談合で不動産鑑定士が逮捕されるという事件が起こりました。

記事 青森県の不動産鑑定士が官製談合で逮捕されました。

そこで一つの疑問です。

有資格者は、逮捕されると資格をはく奪されてしまうのでしょうか?

資格者の欠格事由とは?

資格者はその資格を規定する法律で欠格事由が定められています。

例えば、私の保有する不動産鑑定士。

不動産鑑定士の欠格事由

不動産の鑑定評価に関する法律 第16条(欠格条項)

  1. 未成年者
  2. 成年被後見人又は被保佐人
  3. 破産者で復権を得ない者
  4. 禁錮以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しないもの
  5. 公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
  6. 第二十条第一項第四号又は第四十条第一項若しくは第三項の規定による登録の消除の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
  7. 第四十条第一項又は第二項の規定による禁止の処分を受け、その禁止の期間中に第二十条第一項第一号の規定に基づきその登録が消除され、まだその期間が
  8. 満了しない者

代表的な資格である弁護士についても調べてみましょう。

弁護士の欠格事由

弁護士法 第7条(弁護士の欠格事由)

次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。

  1. 禁錮以上の刑に処せられた者
  2. 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
  3. 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から三年を経過しない者
  4. 成年被後見人又は被保佐人
  5. 破産者であつて復権を得ない者

もう一つ、国家公務員についても調べてみます。

国家公務員の欠格事由

国家公務員法 第38条(欠格条項)

次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

  1. 成年被後見人又は被保佐人
  2. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
  3. 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
  4. 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十二条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
  5. 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

禁固以上とはどのような刑罰があるのか

逮捕されたときに関係しそうなのは、「禁固以上の刑に処せられ」というところですね。

では、禁固以上の刑罰には何があるのでしょうか。

日本の刑罰の種類

刑罰の種類は下のとおり、禁固刑以上なので、禁固懲役死刑が欠格事由に該当します。

刑種 内容 分類
死刑 刑事施設内において絞首(刑法第11条) 生命刑
懲役 刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる(刑法第12条) 自由刑
禁固 刑事施設に拘置する(刑法第13条) 自由刑
罰金 原則一万円以上の財産刑(刑法第15条) 財産刑
拘留 一日以上三十日未満刑事施設に拘置する(刑法第16条) 自由刑
科料 千円以上一万円未満の財産刑(刑法第17条) 財産刑

逮捕されるだけでは、資格ははく奪されない

逮捕されるだけでは資格ははく奪されません。

刑が確定し(有罪判決をうけ)、その刑が禁固以上(禁固、懲役、死刑)であったとき、はじめて資格がはく奪されます。

また、資格を受けようとするものは、禁固以上の刑に処せられた過去があると、資格を取得することはできません。

執行猶予と資格の欠格事由

では、執行猶予がついた場合はどうなるのでしょうか。

執行猶予

執行猶予(しっこうゆうよ)とは、罪を犯して判決で刑を言い渡された者が、定められた一定の期間(執行猶予期間)中に刑事事件を起こさなければ、その刑の言い渡しが将来にわたり効力を失うという制度

執行猶予中は有罪判決を受けたと同じ立場になりますので、執行猶予中は欠格事由に該当します。

しかし、執行猶予を取り消されることなく(刑事事件を起こさない)、無事に猶予期間を満了すれば、刑の効果は将来にわたって効力を失います。

つまり、執行猶予を無事満了すれば、欠格事由に該当しないこととなります。

実刑判決を受けた場合は?

有罪判決が、実刑だった場合はどうでしょうか。

一生欠格事由に該当するのでしょうか。

刑法34条の2では次のように定められています。

刑法 第34条の2(刑の消滅)

  1. 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
  2. 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

刑期満了から罰金以上の刑に処せられないで10年を経過すると刑の効力を失います。

つまり、無事に10年を過ぎれば欠格事由に該当しなくなります。




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