家を建てるときに押さえていけないといけない単語”建ぺい率”と”容積率”。今回は建ぺい率について説明してみます。
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建ぺい率とは?
まずは建ぺい率(建蔽率)の定義を確認しましょう。
建蔽率(けんぺいりつ)とは、敷地面積に対する建築面積の割合
これは建築基準法第53条に規定されています。また同一敷地内に2以上の建築物がある場合には、その複数の建築面積の合計です。割合なので%で表示されることが多いです。
文章だけでは分かりづらいので式にしてみましょう。
建ぺい率は都市計画において定められますが、用途地域によって建ぺい率の上限が建築基準法に規定されています。
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建ぺい率の計算方法は?
具体的に建ぺい率の計算方法を解説していきます!
上の建ぺい率の計算式をみて分かるとおり、建ぺい率を計算数る要素は「建築面積」と「敷地面積」のみです。
敷地面積とは?
敷地面積は単純に家を建てる土地の面積のことをさします。
前面道路が4m未満で、敷地にセットバックが必要な場合にはセットバック面積を除いた面積が敷地面積となります。セットバックについては、別記事「セットバックとは何?敷地後退の土地の売買の注意点は?」にて詳しく解説していますので、合わせてお読みください。
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セットバックとは何?敷地後退の土地の売買の注意点は?
不動産の広告などを見ていると、セットバックという言葉が記載してある物件を見かけることがあると思います。 敷地面積:150平方メートル ※セットバックあり20平方メートル セットバックは敷地後退ともいい ...
建築面積とは?計算方法について
建築面積とは、建築物の外壁、柱の中心線で囲まれた部分の面積のことです。もう少し詳しく定義してみましょう。
建築面積とは?
建築面積は、建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、庇、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合には、その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。
文章だと分かりづらいので図解してみます。庇などがある場合は、1mまでは建築面積に含まれません。1mを超える場合は、1mを超えた部分が建築面積に含まれます。
1階よりも2階が出ている場合には建築面積の判断に迷いますね。「建物を真上からみたときの面積」が建築面積です。
図解してみましょう。
建築面積の算定については次の面積は、算定から除外されます。
建築面積から除外される部分
- 地階で地盤面上1m以下にある部分
- 軒、庇、はね出し縁等で、外壁等の中心線から1m以上突き出した部分は、その橋から水平距離1mの部分
- 国土交通大臣が高い階法制を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分(外壁を有しない部分が連続して4m以上、柱間隔2m以上、天井高2.1m以上、地階を除く階数1)については、その端から水平距離1m以内の部分は、建築物面積に算入されない
参考 国土交通省|建築基準法施行令第二条第一項第二号の規定に基づく国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造(PDF)
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調査において建ぺい率の何を調べるか
売買する不動産、自分で買いたいと思っている不動産を調べる際に、建ぺい率の何を調べれば良いのでしょうか?
まずは、その土地の存する地域の建ぺい率を調べる必要があります。建ぺい率は都市計画において定められますので、用途地域と合わせて建ぺい率と容積率を調査します。ここでの建ぺい率は指定建ぺい率と呼ばれます。
地域において指定される建ぺい率と個別の土地の建ぺい率は異なります。下で説明していますが、防火地域内の耐火建築物や角地では建ぺい率のボーナスがあり、指定建ぺい率よりも緩和されます。この個別の建ぺい率を基準建ぺい率と呼びます。
土地の調査では、その土地にどれだけの大きさ(ボリューム)の建物を建てることができるかが大切です。基準建ぺい率を使って建築面積の上限を計算します。
建物付き(中古建物、建売住宅)の調査では、実際に建っている住宅が法令に合致しているのか遵法性を調べる必要があります。実際に使われている建ぺい率を計算し、基準建ぺい率を超過していないか(違反していないか)を調べます。ここで実際の建物の建ぺい率を使用建ぺい率と言います。
使用建ぺい率=実際の建物の建築面積 ÷ 敷地面積
では、実際に計算してみましょう。
建ぺい率の計算
下の設例で建築面積の上限を計算してみます。
200㎡の土地を仮定して、都市計画では建ぺい率が60%と指定されているとします。尚、都市計画で定められている建ぺい率を指定建ぺい率を呼んだりします。
さて、実際に計算してみましょう。
つまり、建築面積が120㎡までの建物を建てられるということです。
現在使用している土地の建ぺい率を計算する
中古住宅の売買をする場合、現在建築されている建物がその土地の建ぺい率の範囲内の大きさで建てられているか。建ぺい率に違反していないかの遵法性を調べます。
実際に使われている建ぺい率を使用建ぺい率と言いますが、どのように計算するんでしょうか。実際に下の例で計算してみましょう。
といっても、「建ぺい率=建築面積÷土地面積」の式に当てはめるだけです。
使用建ぺい率=50㎡÷200㎡=25%(使用建ぺい率)
土地に課せられた建ぺい率は60%なのに対して、実際に使用している建ぺい率は25%。建物の建築面積は基準建ぺい率の範囲内であることから、法に適して建てられていることが分かりますね。
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建ぺい率をオーバーしていた場合
建ぺい率をオーバーしていた場合。つまり
使用建ぺい率 > 基準建ぺい率
となっていた場合には更なる調査が必要です。
今は違法状態になっていても、建築をした当初では適法に建築されたが、その後の建ぺい率の変更などで違法状態となっている場合もあります。そのため建築時点では建ぺい率は何パーセントだったのか。どのような法規制になっていたのかを調べることが必要になります。
建築当時は適法であったが、その後の法令変更等で違法状態になってしまったたてものを「既存不適格建物」といいます。違法建築物なのか既存不適格建築物なのかを調べるには別記事「既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。」が参考になりますので合わせてお読みください。
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既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。
中古住宅の流通化を推し進める中で、調査上気をつけたいのが建物の遵法性です。遵法性(じゅんぽうせい)とは法律を守ってそれに従っているかどうか。つまり建物が適法に建てられているかどうかということですね。 ...
物件の建ぺい率を調べるには?
今までは建ぺい率を仮定しましたが、実際に不動産を調査するときはどのように調べればいいでしょうか?家を建てたい土地、売買したい土地の建ぺい率を調べるにはどこで分かるのでしょうか。
建ぺい率は、その不動産のある市町村の市役所・町村役場で調べます。部署名は各役所によって異なりますが、都市計画課などという名称の部署で教えてくれます。似たような名前の部署がない場合は受付などで「都市計画について調べたい」と伝えれば担当部署を教えてくれます。
建築予定地が角地の場合には、+10%の建ぺい率のボーナスを受けられる場合があります。地域として指定されている建ぺい率(指定建ぺい率)があり、色々な特典や制限を考慮して個別の土地の建ぺい率が決まります。その土地ごとの建ぺい率を基準建ぺい率と呼びます。
建ぺい率の角地緩和については、別記事で説明していますので是非参考にしてください。
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建ぺい率の角地緩和とは?要件はなに?
不動産を扱うものなら誰でも知っている建ぺい率の「角地緩和」。今日は建ぺい率緩和の要件の一つである、角地緩和について説明していきます。 スポンサーリンク まず建ぺい率とは? 当たり前のように建ぺい率とい ...
建ぺい率制限の緩和
建ぺい率の制限については以下の3つの緩和規程があります(建基法第53条3・4・5項)。
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耐火建築物の緩和
建ぺい率の限度が80%とされている地域以外の地域で、かつ、防火地域内の耐火建築物について認められるもので、原則的に10%の建ぺい率上乗せとなります。
ただし、同一敷地内に2棟以上の建築物がある場合は、その全てが耐火建築物でなければなりません。また当該敷地が防火地域の内外にわたる場合は、敷地内のすべての建築物が耐火建築物であれば敷地全体を防火地域であるとみなして、その全てに緩和措置が受けられます。
かど敷地等の緩和
かど敷地(角地)等とは、特定行政庁が規則で指定する土地で、道路の交差点、道路と公園、道路と河川等に、当該敷地の2辺以上がある一定の割合で接している敷地がその対象となります。
角地緩和については別記事で詳細に説明しているため次の記事を参考にしてください。
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建ぺい率の角地緩和とは?要件はなに?
不動産を扱うものなら誰でも知っている建ぺい率の「角地緩和」。今日は建ぺい率緩和の要件の一つである、角地緩和について説明していきます。 スポンサーリンク まず建ぺい率とは? 当たり前のように建ぺい率とい ...
なお、かど敷地の指定内容については、地域ごとでかなり異なりますので直接当該地域の特定行政庁に問い合わせることが必要です。
建ぺい率制限を受けない場合
以下の条件を満たした土地は、建ぺい率が10割(100%)となって、建ぺい率制限を受けません。
- 建ぺい率が80%とされている地域内であり、かつ、防火地域内に耐火建築物を建築する場合
- 公共性の高い建築物(巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊等)
- 安全上、防火上及び衛生上支障のないものと特定行政庁が認めて、建築審査会の同意を得て許可するもので、周りに公園・広場・道路・河川等の空地がある建築物
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まとめ
一概に建ぺい率と言っても、色々な意味合いで使われる建ぺい率があったことを覚えているでしょうか?
建ぺい率の種類
- 指定建ぺい率
- 基準建ぺい率
- 使用建ぺい率
実務ではそれぞれを理解して、混乱することなく使い分けなくてはいけません。「建蔽率(けんぺいりつ)って、敷地面積に対する建築面積の割合」のことでしょ。と簡単に考えがちですが、結構奥が深いんですね。
実務に役立つ本の紹介
容積率の一般的な知識は、この記事でまとめた知識を覚えていただければ十分だと思います。
しかし、実務で十分な知識には到底及びません。例えば床面積の解釈にしても、統一的なものがなく個別解釈で運用されていることもまだまだ多くあります。
” 改訂版 確認申請[面積・高さ]算定ガイド ”は容積率を算定する上で、重要な床面積について、かなり詳しくまとめられている冊子です。
床面積の章の目次も記載しておきますので、会社に一冊いかがでしょうか。
第1章 面積
- 建築面積と床面積の違いがすぐに分かる対照評
- 敷地面積を最大にする方法
- 吹きさらしバルコニーでも構造により算入・不算入が分かれる建築面積
- 築造面積は工作物の水平投影面積
- 算定方法に個別解釈がまだまだ多い床面積
- 容積率の基礎となる延べ面積の算定方法
- 住居系地域なら水平距離7m以上が有利な有効採光面積 ほか