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私道とは?私道に接する土地は建築可能?公道との違いなどをまとめてみました。

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東京の原宿での私道の一例

筆者が原宿でみつけた私道

不動産の仕事をしていると公道や私道などという言葉がよくでてきますが、意外とその意味はきちんと理解されておらず、曖昧なまま使われています。

以前は公道にフォーカスを当てて文章を書いたので、今回は私道を中心に説明していきたいと思います。

参考 公道とは?公道の具体例と私道との違いをまとめてみました

私道の定義

私道)とは、個人または団体が所有している土地を道路として使用している区域のことである。国や地方公共団体が管理する道路である公道(公衆用道路)に対する概念である

引用:wikipedia|私道

市道と私道はどちらも読みが”しどう”となるので、それぞれ区別するために”いちどう””わたくしどう”と読まれる場合があります。

私道と公道の見分け方、違い

道路の所有者を調べていると、市道(道路法上の道路)の中にも個人の方が所有している土地が介在している場合が多々あります。ではこれは公道でしょうか?私道でしょうか?

公道か私道かを判断する場合、所有主体が公共機関なのか私人なのかは特に問いません。大事なのは管理主体。管理をだれが行っているかで公道と私道の判断を行います。

ですので、上の設例の場合は個人が所有していても公道となります。

繰り返しますが、公道と私道の違い(見分け方)は、管理主体が私人なのか、公の公共機関なのかです。所有者が個人であっても管理が公共機関(例えば市町村)であれば、公道です

逆に公共機関が所有者であるのにも関わらず私道である道は、私は実際には直面したことはありません。国が所有している土地を、民間団体が借りて道路として運営している場合などが考えられますね。しかし、調べたことが無いので実際にあるかどうかは分かりません。

通路と私道の違い

通路と私道についても混同しがちなので要注意です。

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路地状敷地などに設けられている道路状の部分も一般的に私道と呼ばれたりする場合があります。

しかし建築基準法の中では、この部分はそもそも道路ではなく通路という扱いになります。後述するように建築基準法上の道路の中に私道がいくつかありますが、厳密に区別する必要があります。

参考 道と道路の違い。建築基準法はどのように規定しているか。

私道の舗装は自費?

私道は個人などの民間人の所有なので、舗装などをする場合には自営工事(自費)にて行う必要があります。しかしながら市町村では私道の舗装工事に関して、補助金を交付している自治体もあります。道路の管理課などで聞いてみると良いと思います。

尚、富山市では下記の要件を見たいしている私道については補助を行っています。

  1. 原則として幅員が2.0メートル以上であるもの
  2. 通勤、通学、買物等に利用されているもの又は公共施設に通じているもの
  3. 家屋が立ち並び、かつ、境界が確定しているもの
  4. 舗装されている道路に接続されているもの
  5. 舗装について、敷地の所有権者その他の権利者の同意を得ているもの

建築基準法の中での私道

建築基準法には道路が厳密に規定されています。

なぜなら、土地に建物を建築する際、「建物を建築する敷地は、建築基準法に定める道路に2m以上接しなければならない。」という規定(接道義務)があり、どのような道路が建築基準法上の道路に該当するかを定めないと建築可能な土地かを判断できないからです。

建築基準法に定める道路にどのようなものがあるのかは以前書きましたので、その中から私道に関するものだけピックアップして説明します。

参考 第42条の道路の種類。建築基準法の道路を調べてみました。

位置指定道路

建築基準法第42条1項5号に規定されている道路を位置指定道路と言います。

都計法による開発許可で築造される道路(2号道路、開発道路)ではなく、政令で定める基準に適合した道で、特定行政庁から位置の指定を受けたものを位置指定道路といいます。

一般には開発業者(不動産業者)が施工、管理して、土地の分譲後は土地を購入した個人に管理(所有も)が移行します。不動産業者がそのまま所有しているものも多くありますが、その場合管理主体が誰なのかは曖昧な状態なっているものもあります。管理が私人なので私道です。

位置指定道路として建築基準法の道路に該当すると、私道であっても私道の変更・廃止は厳しく制限されます。

数区画の分譲での行止り道路に多いのが位置指定道路です。

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参考 位置指定道路(5号道路)は私道?その申請と廃道についてのまとめ

既存道路

建築基準法第42条1項3号に規定されている道路のことを既存道路(又は3号道路)と呼びます。

建基法の適用及び都市計画区域に指定される以前から存在した4m以上の道

法の規定の無い時代からあった道路は、建築基準法上の道路として認めましょうよ。という規定であることから、3号道路に該当するものは古くからあるものばかりです。そのため道路境界が判然しないものなどが大半です。

管理や所有は問われていないので、既存道路には公道のものも私道のものもあります。ただ、公道であればほとんどが1号道路に該当する場合が多いので、3号道路といえば一般的には私道が多いです。古くからの大規模別荘地でデベロッパーが道路を管理している場合などが一例です。

2項道路

建築基準法では道路を幅員4m以上と定義していますが、法第42条第2項は、「建築基準法施行時、現に建築物が建ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したもの」は、道路とみなし、その中心線からの水平距離2mの後退線をその道路の境界線とみなすと規定しています。

つまりは2項道路は本来必要な4m以上に満たないんだけど、実際建物が建ち並んでいるのにその道路を建築基準法上の道路として認めないのは困ってしまうので、4m未満でも建築基準法上の道路に認めます。といった救済措置のような道路です。

2項道路も先の既存道路と同じで、管理や所有は問われていないので公道のものも私道のものもあります。

赤線、赤道、里道などといった昔からの道(法定外公共物)も2項道路に指定されているものが多いですが、これらの道は公共物なので公道となります。

参考 2項道路(みなし道路)は公道?通行権などのまとめ

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開発道路

建築基準法第42条1項2号に規定されている道路を開発道路と呼びます。

建築基準法第42条1項2号

都市計画法 、土地区画整理法 (昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法 (昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法 (昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 (昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法 (第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路

都市計画法の開発許可を伴う開発行為によって築造された道路のことを開発道路と言いますが、開発道路だからといって、公道か私道かは分かりません。

開発道路は、公園、緑地などの公共施設の一つとして築造されます。公共施設は原則として開発行為に関係のある公共施設の管理者に引き継がれるのが通常です。開発道路が市道と接続しているのであれば、市道の管理者である市に管理が引き継がれます。

しかし、管理が引き継がれない場合もあります。また、3年などの決まった年数を経過後に管理が引き継がれるケースもあります。私道か公道かを整理すると次のようになります。

  • 市町村に管理が引き継がれれば公道(市町村道)
  • 開発業者等がそのまま管理をするのであれば私道(開発道路)

参考:開発道路(2号道路)は私道?幅員などのまとめ

私道と固定資産税

私道には、公共の用に供するもの(例えば、通り抜け道路のように不特定多数の者の通行の様に供されている道路)と専ら特定の者の通行の様に供するもの(例えば自分しか使わない袋小路の行き止まり通路)の2つがあります。

私道のうち、公共の用に供するものは、その私道の価額は評価しないことになっています。

具体的には課税主体である市町村の判断事項になりますので、原則的なことしかいえませんが、不特定多数の者が通行する私道については非課税となる可能性が高いです。

非課税とならずとも、独自の補正率をもって評価額を減じていることもあります。市町村の資産税担当で確認してみると良いでしょう。

道路交通法と私道

不動産実務、建築実務とはやや離れますが、道路交通法と私道についても色々な問題があります。私有地である私道でも道路交通法が及ぶのか。っていうことですね。

これについては、以前記事に書きましたのでそちらを参照してもらいたいですが、私道であっても「一般交通の用に供するその他の場所」であれば、道路交通法が及ぶというのが結論です。

私道での運転練習は無免許運転?道路交通法は私道にも及ぶのか。

例としては大学の構内の道路でも一定の場合には、道路交通法が及ぶんですね。したがって、駐車禁止も切られますし、シートベルトの着用義務もあります。

まとめ

先日、「知らないと危ない「道路」の4つの注意点」という記事を読みました。書かれているのは、長島修さんという有名な不動産屋さんです。

この中で公道と私道の説明がなされていました。記事を引用します。

1つ目は「 道路の属性 」。「 公道 」か「 私道 」かということです。公道とは、国や県、市区町村など、自治体が持っている道路を指します。私道は私道( わたくしどう )と呼び、個人や法人の所有になっているもの。

素人のために分かりやすく書いたので、このような文章になったのかも知れませんが、厳密には間違いですね。公道と私道の判断をする際に、誰が所有者であるかは問いません。注意したいものですね。




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