都市計画道路は都市計画施設の1つです。
都市計画施設は、道路や公園のような都市施設で、都市計画により建設が決定されたものです(都市計画法第11条)。
都市計画法 第11条(都市施設)
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設を定めることができる。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
- 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
- 公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
- 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
- などなど
都市計画道路による建築制限にはどのようなものがあるのでしょうか?
スポンサーリンク
都市計画道路とは?
都市計画道路の調べ方
都市計画道路は、その名前のとおり各市町村役場の「都市計画課」で調べます。
都市計画に関する情報は、最近ネットで公開されていることも多いので、自治体のホームページで探してみると良いです。
参考までに公開している四国中央市の都市計画図を引用します。
赤い線がありますね。これが都市計画道路です。
既に事業が終わって道路になっているところもありますし、道のない部分に赤い線が描かれている部分もありますね。
これが新設道路の予定線です。
都市計画道路には事業が終わった既設の部分や、拡幅・新設があります。
都市計画道路の種類
都市計画道路には次の5種類があります。
不動産を調査する上では、都市計画道路の種類まで調べることは稀だと思いますが、知識としては頭の中に入れておくと役に立ちます。
都市計画道路の種類
自動車専用道路(都市高速道路・都市間高速道路、その他の自動車専用道路)
幹線街路
区画街路
特殊街路(主に自動車以外の交通のために供される道路)
駅前広場(道路の一部として整備される交通のために供される広場)
特殊街路は主に自動車以外の交通のために供される道路です。自動車以外の交通とは、歩行者、自転車、新交通システムなどを指します。
都市計画道路ができるまで
都市計画道路ができる(供用開始といいます)には、どのような手順があるのでしょうか。
都市計画には、単に計画が決定しているだけの段階(計画決定)と、その計画を具体的に事業として行うことが決定されている場合(事業決定)の大きく分けて2つの段階に分けることができます。
都市計画道路ができる流れ
- 都市計画決定
- 事業認可
都市計画決定がなされるまで
都市計画決定がなされるまでには、大まかに次のような流れが行われます。
都市計画決定がなされるまで
- 測量説明会
- 現況測量の実施
- 用地測量の実施
- 都市計画の決定
測量説明会では、計画道路の沿線の市民へ、「事業内容」「測量」についての説明会を行います。
現況測量の実施の段階では、計画道路及びその周辺の建物や道路を測量士、現況平面図を作成します
その後権利調整や現地調査を実施し、境界確認作業の準備を行います。
最後に、都市計画決定を行います。
事業認可から供用開始まで
都市計画道路の事業決定から供用開始までの大まかな流れです。
事業認可から供用開始まで
- 事業概要説明会
- 用地測量の実施
- 事業着手の手続き
- 用地説明会の開催
- 用地折衝・協議
- 契約・補償金の支払い
- 物件移転
- 工事説明会と工事の実施
- 都市計画道路の完成(供用開始)
スポンサーリンク
都市計画道路による建築制限
持っている不動産、又は買いたいと思っている不動産に都市計画道路の線が掛かってしまっているとき、どのようなことに注意しなければならないでしょうか?
都市計画道路の予定地内の敷地にはどのような建築制限がかかるのでしょうか。
都市計画決定の段階と事業決定されている段階では異なるので、分けて説明します。
都市計画決定での建築制限
都市計画決定の段階では都市計画法第53条・第54条の規制がかかります。
都市計画法 第53条(建築の許可)
都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
許可の規準が都市計画法第54条です。
都市計画法 第54条(許可の規準)
都道府県知事等は、前条第一項の規定による許可の申請があつた場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない。
- 当該建築が、都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画のうち建築物について定めるものに適合するものであること。
- 当該建築が、第十一条第三項の規定により都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、当該立体的な範囲外において行われ、かつ、当該都市計画施設を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないと認められること。ただし、当該立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限る。
- 当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。
イ 階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと。
ロ 主要構造部(建築基準法第二条第五号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること
条文だと分かりづらいですね。
まとめると、都市計画道路の予定地内では、「地階の無い2階建てまでで、木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などの非堅固な建物」しか建築できないこととなります。
非堅固な建物は、木造・鉄骨造・コンクリートブロック造。対する堅固な建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の建物を指します。
つまり、都市計画決定がなされると、「容易に移転し、または除却することができる建物」しか建築されないということです。
このことは、事業が実施されたときの補償費用を増大させないことも目的の一つです。
都市計画道路の中には、計画決定がされてから数十年事業化の見込みもない計画道路も多数あります。
そこで一部の自治体では建築制限の緩和を取り入れている自治体も多くあります。
緩和規定の要件
- 当該区間の事業の実施が近い将来見込まれていないこと
- 市街地開発事業(区画整理、再開発など)等の支障とならないこと
- 階数が3、高さが10m以下であり、かつ地階を有しないこと
- 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造であること
- 建築物が都市計画道路区域の内外にわたる場合は、将来において、都市計画道路区域内の部分を分離することができるよう設計上の配慮をすること
上の緩和規定の要件は、代表的なものです。
各自治体によって異なる緩和措置を設けているので、調査する自治体で調べてみてください。
事業決定段階での建築制限
事業決定の段階では、いよいよ道路の建設が始まる段階です。
事業の着手が決まった「事業決定」の段階では、土地収用や立ち退き交渉、実際の道路の築造工事に取り掛かるため、災害時の応急措置的な建築などを除き、新たに建物を建築することはできません。
都市計画法 第55条(許可の基準の特例等)
都道府県知事等は、都市計画施設の区域内の土地でその指定したものの区域又は市街地開発事業(土地区画整理事業及び新都市基盤整備事業を除く。)の施行区域(次条及び第57条において「事業予定地」という。)内において行われる建築物の建築については、前条の規定にかかわらず、第53条第1項の許可をしないことができる。
都市計画道路の名称(豆知識)
都市計画道路の名称につける番号があり、名称は次のような構成になっています。
3つの番号と名称です。
3つの番号はそれぞれ前から、「区分」「規模」「一連番号」になっています。一連番号はそのままの連番です。
最初の数字は「区分」です。どのような道路なのか、道路の種類(区分)を知ることができます。
区分
- 1:自動車専用道路
- 3:幹線街路
- 7:区画街路
- 8:特殊街路(歩行者専用道路、自転車道、自転車歩行者道)
- 9:特殊街路(都市モノレール専用道路)
- 10:特殊街路(路面電車)
2つ目の数字は「規模」です。幅員によってどのような数字が定められるかが決まっています。
規模
- 1:代表幅員40 m以上
- 2:代表幅員30 m以上40 m未満
- 3:代表幅員22 m以上30 m未満
- 4:代表幅員16 m以上22 m未満
- 5:代表幅員12 m以上16 m未満
- 6:代表幅員8 m以上12 m未満
- 7:代表幅員8 m未満