家を建てるとき、どれだけの大きさの建物を建てられるかは、その地域の「建ぺい率」と「容積率」が何パーセントかに大きく依存します。
前回は建ぺい率について記事を書きましたので、今回は容積率について説明したいと思います。
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容積率とは?
容積率の定義を確認しましょう。
重要容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合
これは建築基準法第52条に規定されています。延べ面積は延べ床面積とも言いますね。建物の各階の床面積の合計を指します。
詳しくは、床面積でも容積率の計算の際は算入しなくても良い部分が建築基準法に規定されていますので、その不算入面積を除いた床面積の合計です。ここでは基本的な事項の確認ということで、単純に床面積の合計として扱っていきます。
定義(文章)だけだと分かりづらいので式にしてみます。
地域ごとの容積率は都市計画で定められる。
容積率は都市計画において定められますが、用途地域によって定められる容積率が建築基準法で制限されています。
用途地域 | 容積率(%) |
第一種低層住居専用地域 | 50,60,80,100,150,200 |
第二種低層住居専用地域 | 同上 |
第一種中高層住居専用地域 | 100,150,200,300,400,500 |
第二種中高層住居専用地域 | 同上 |
第一種住居地域 | 100,150,200,300,400,500 |
第二種住居地域 | 同上 |
準住居地域 | 同上 |
近隣商業地域 | 同上 |
準工業地域 | 同上 |
商業地域 | 200~1300(100刻み) |
工業地域 | 100,150,200,300,400 |
工業専用地域 | 同上 |
用途地域の定め無し | 50,80,100,200,300,400 |
2~3階建ての戸建て住宅しか建てられないような第一種低層住居専用地域では、容積率が小さくしていされています。マンション建築が可能な中高層住居専用地域、中高層の事務所ビルが建築可能な商業地域では容積率が大きく指定されます。
ちなみに東京都丸の内口の高層ビル街(丸ビル周辺)は、容積率も最高の1300%が指定されています。実際は「特例容積率適用地区」という制度によりもっと高い容積率となっています(新丸ビルは約1760%)。
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容積率の計算方法
実際に容積率を計算してみましょう。上の公式にも書いたとおり、容積率を求めるには「敷地面積」と「延べ床面積」の2つの要素しかありません。容積率の計算をするには、敷地面積と延べ床面積が分かれば簡単に算出できます。
容積率(%) = 延べ床面積(㎡) ÷ 敷地面積(㎡)
2つの要素を詳しく解説していきます。
敷地面積とは?
敷地面積は単純に家を建てる土地の面積のことをさします。
前面道路が4m未満で、敷地にセットバックが必要な場合にはセットバック面積を除いた面積が敷地面積となります。セットバックについては、別記事「セットバックとは何?敷地後退の土地の売買の注意点は?」にて詳しく解説していますので、合わせてお読みください。
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セットバックとは何?敷地後退の土地の売買の注意点は?
不動産の広告などを見ていると、セットバックという言葉が記載してある物件を見かけることがあると思います。 敷地面積:150平方メートル ※セットバックあり20平方メートル セットバックは敷地後退ともいい ...
延べ床面積とは?その求め方について
敷地面積は建ぺい率の計算のときと同じ、単純に家を建てる土地の面積のことを指します。延べ床面積とは、建物全ての階の床面積を合計した面積です。
具体的に延べ床面積を計算してみましょう。1階が60㎡、2階が30㎡の家を想定してみます。
延べ床面積は各階の床面積の合計なので90㎡となります。
参考 国土交通省|床面積の算定方法について(昭和61年4月30日建設省住指発第115号)(PDF)
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容積率の計算、実際どれだけの建築物が建てられるか
実際に容積率を使って、土地にどれほどの大きさの建物が建てられるか計算してみましょう。
200㎡の土地を仮定して、容積率は200%とします。これは所与の数字です。さて、実際に計算してみましょう。
つまり、この土地には延べ床面積が400㎡までの建物を建てられるということになります。
容積対象から除外される床面積
原則は上のとおりですが、床面積のうちには容積対象から除外される部分があります。床面積に含めなくて良いので、除外された床面積分だけ大きくすることができます。容積の緩和措置の一つですね。
容積対象から除外される床面積
- 自動車車庫・自転車駐輪場の緩和
- 住宅の地階の容積率の不算入措置
- 小屋裏物置等の取り扱い
- 共同住宅の共用廊下・階段の容積率算入緩和措置(建基法52条5項)
- 一定の空地がある住宅を有する建築物の容積率の緩和(建基法52条8項)
詳しくは別記事「容積率の緩和措置、共用廊下・階段、地下室、車庫の容積不算入についてのまとめ」にまとめましたので合わせてお読みください。
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容積率の緩和措置、共用廊下・階段、地下室、車庫の容積不算入についてのまとめ
容積率の一般的な知識についての記事「容積率とは?その計算方法・求め方や調べ方・特例をまとめてみました。」を以前書きましたが、今回はもう少し掘り下げて、容積率の緩和措置について説明してみます。 スポンサ ...
指定容積率、基準容積率、使用容積率の違いは?
容積率と簡単に言いますが、容積率には指定容積率、基準容積率、使用容積率があります。ここではそれぞれを説明していきたいと思います。
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指定容積率とは?容積率の調べ方
冒頭で地域ごとの容積率は都市計画において定められると書きました。この都市計画において定められた容積率を指定容積率といいます。具体的に見てみます。
下の図は堺市の堺市e-地図帳というサイトから調べたものです。容積率は通常、市役所の都市計画課の窓口に行って確認します。都市計画課には地図が色塗りされた都市計画図というものがあり、その図面を見て職員が容積率のほか、用途地域や建ぺい率などを調べて教えてくれます。
今は便利なものでネットでも公開されているのでパソコンで容積率を確認することができます。上の図では指定容積率が400%です。
基準容積率
都市計画で指定された容積率が指定容積率でした。基準容積率は建築基準法による各種規定によって算出された容積率のことをいいます。地域ごとに指定されたものが指定容積率、個別の土地そのものの容積率が基準容積率。と言い換えても良いかもしれません。建築基準法の規定は第52条(容積率)に各種の制限が記載されています。
具体的には建築基準法には「前面道路の幅員による容積率の制限」があります。
前面道路の幅員による容積率の制限(建基法第52条2項)
前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、用途地域によって定められた掛け目を前面道路の幅員(m)に乗じた数字以下でなければなりません。
数式と具体的な計算例をあげてみます。
この場合、計算された数字が180%となりました。ですので例えば指定容積率が200%としても、基準容積率が180%なので、この土地には180%の容積率までしか建築物を建てることができません。
指定容積率が200% > 基準容積率 180% 厳しい方が採用(180%)
上の計算では定数を0.4としていますが、法令(建築基準法)又は特定行政庁により指定されます。法令では建築基準法第52条2項に記載されていますが、条文をまとめてみます。
号 | 用途地域等 | 定数 |
1号 | 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 |
0.4 |
2号 | 第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 |
0.4 |
3号 | その他 | 0.6 |
用途地域等のその他(3号)は、その他の用途地域のほか、用途地域の定めのない地域(白地地域など)も含みます。
また、定数(前面道路幅員)に乗じる数値のうち、2号は特定行政庁が指定する区域では0.4、3号は特定行政庁が指定する区域では0.4又は0.8という例外もあります。
一般的には住居系は0.4、その他は0.6
と覚えておけばよいでしょう。
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前面道路による制限には、特定道路(幅員15m以上の道路)に近いと、緩和措置があります。
緩和措置については、別記事「特定道路と接続することによって決まる容積率の緩和を説明します。」で解説していますので、是非お読みください。
使用容積率
使用容積率は、現在建築物が建てられている場合におけるその土地の実際使われている容積率です。
200㎡の土地に延べ床面積90㎡の建物が建築されていた場合、「90㎡÷200㎡=45%」つまり45%が使用容積率となります。中古住宅の売買の際はこの使用容積率を必ず計算しなければなりません。
使用容積率が基準容積率をオーバーしていた場合、売買の対象となる建物は違法建築物である可能性が出てきます。容積率オーバーしていた場合には、別記事「既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。」に記載したとおり、違法建築物なのか既存不適格建築物化なのかの調査が必要となります。
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既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。
中古住宅の流通化を推し進める中で、調査上気をつけたいのが建物の遵法性です。遵法性(じゅんぽうせい)とは法律を守ってそれに従っているかどうか。つまり建物が適法に建てられているかどうかということですね。 ...
容積率を200%と所与としましたが、前面道路の幅員により制限されたり、延べ床面積にも容積率には不算入の部分があったりと、実際の計算はもっと複雑になります。また細かい規定も後ほどまとめていきたいと思います。
実務に役立つ本の紹介
容積率の一般的な知識は、この記事でまとめた知識を覚えていただければ十分だと思います。
しかし、実務で十分な知識には到底及びません。例えば床面積の解釈にしても、統一的なものがなく個別解釈で運用されていることもまだまだ多くあります。
” 改訂版 確認申請[面積・高さ]算定ガイド ”は容積率を算定する上で、重要な床面積について、かなり詳しくまとめられている冊子です。
床面積の章の目次も記載しておきますので、会社に一冊いかがでしょうか。
第1章 面積
- 建築面積と床面積の違いがすぐに分かる対照評
- 敷地面積を最大にする方法
- 吹きさらしバルコニーでも構造により算入・不算入が分かれる建築面積
- 築造面積は工作物の水平投影面積
- 算定方法に個別解釈がまだまだ多い床面積
- 容積率の基礎となる延べ面積の算定方法
- 住居系地域なら水平距離7m以上が有利な有効採光面積 ほか