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民法改正で不動産取引はどう変わる?売買と賃貸の変更点をまとめました。

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2020年前半、新民法が施行される予定です。

民法改正は実に120年ぶりのこと。まだ先のことにはなりますが不動産取引にも大きな影響を与えることになります。今回の改正は民法第一編の総則と財産法のうち第三編債権に関わる箇所です。

具体的にいうと主な変更点は次の6か所

主な民法改正箇所

  • 「瑕疵(かし)」の廃止
  • 保証人の保護を強化
  • 定型約款のルールを新設
  • 債権の事項を原則5年に
  • 法定利率は3%に
  • 債権譲渡の自由化

今回の記事ではこのうち、不動産取引に関わる部分を説明していきたいと思います。

参考 法務省|民法の一部を改正する法律案

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不動産売買契約への改正の影響

瑕疵担保責任の変更

瑕疵担保責任に関する条項が改正となり、「隠れた瑕疵」という用語はなくなります。

現行法では、契約時点で買主が知らなかった雨漏りなどの不具合が見つかった場合、売主の過失の有無に関わらず「瑕疵担保責任」を負います。その場合、不具合の程度によっては契約解除にも応じなければなりません。

一方、改正法では買主が事前に知っていたかどうかに関わらず、売買の目的物である中古住宅などが「契約の内容に適合しない」場合は、売主は損害賠償、契約解除、追完(修補など)、代金減額に応じなければなりません。

つまり、従前の条文では「隠れた瑕疵」と書かれていたことから買い主の善意・無過失が求められていましたが、改正民法では買い主が知っていた(悪意)であったとしても売り主に責任を求めることができるようになります。

ただしそれだけでは売り主にはあまりに酷ですよね。そこで売り主の責任についても次のように変更となりました。

現行法では故意・過失がなくても責任を負う(無過失責任)でしたが、改正民法では、帰責事由が無い場合(責めを負うべき理由がない場合)には、免責となりました。

帰責事由が無い場合の具体例

  • 大地震が起こったことによる壁の亀裂など
  • 予見できないような軟弱地盤

現行法の瑕疵担保責任と改正民法の契約不適合責任について、どのように変わるのかを表にしてみました。

  現行法 改正民法
責任 瑕疵担保責任 契約不適合責任
対称 隠れた瑕疵 契約内容に適合しないもの
売り主 無過失責任 帰責事由が無い場合は免責
規定 任意規定 任意規定
損害賠償 ○(信頼利益に限られる) ○(履行利益にも広がる)
契約解除 ○(契約目的が達成不能の場合) ○(債務履行が軽微な場合はできない)
追完請求 ×
代金減額請求 ×(数量指示売買は可)

不動産賃貸契約への改正の影響

借地や建物の賃貸借に関しては、民法の特別法である借地借家法によるところが多いですが、今回の民法改正では注意すべき改正が何点か含まれています。

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賃貸に関する重要な変更点

まず全体をみてみる意味で、主な改正点を表にしてみました。

  現行法 改正民法
修繕 貸主のみ(修繕義務) 借主にも(修繕権を明記)
原状回復義務 規定なし 規定明記(通常損耗、経年劣化が認められない)
保証(個人保証) 極度額設定は不要 極度額設定が必要

修繕義務(貸主)から修繕権(借主)へ

例えば借家(アパート)に雨漏りがあった場合、現行法は貸主の修繕義務は規定しているが、借主の修繕権は規定していません。そのため貸主が雨漏りの修繕をしてくれなかった場合、借主は自分で修繕する権利がありませんでした。

改正法では、借主が貸主に修繕が必要と通知したにも関わらず、修繕しなかったときや、差し迫った事情があるときは、借主にも修繕を行う権利が認められるようになりました。これを借主の修繕権といいます。

第607条の2(賃借人による修繕)

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。

一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。

二 急迫の事情があるとき。

原状回復義務・敷金の明文化

改正民法では借主の原状回復義務が規定されました。

まずは原状回復の定義について確認してみましょう。

原状回復

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

現行法では原状回復義務に関する規定は無く、国土交通省のガイドラインに定められていた内容に沿って契約がなされていました。

参考 国土交通省|「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

国土交通省のガイドラインの考えが変わるわけではありませんが、原状回復義務の範囲には通常損耗や経年劣化が含まれないことが明らかになりました。ただし、原状回復義務に関する規定は任意規定なので、特約を設けることは今までと同様に有効です。

通常損耗補修特約は今までどおり有効

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敷金についても次のように明文化され、定義が再確認されました。敷金についても原状回復と同様、今までの考えを大きく変えることはありません。

敷金

いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。

そして返還時期についても下記のように、改正民法で明文化されます。

敷金の返還時期

賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき

賃貸借契約の連帯保証について

瑕疵担保責任と原状回復義務・敷金については任意規定だったのに対し、次の「賃貸借契約の連帯保証」については強行規定になります。例外なく守らなければならないということですね。

連帯保証について極度額設定が必要に

借家契約に当たっては保証人をつけられることがしばしばあります。この保証人のルールが変わります。

少し難しい話になりますが、借家契約における保証は、個人根保証契約に分類されますが、改正法ではこの個人根保証契約の限度額(保証の限度額)を定めないと無効となります。

2度目になりますが、この規定は強行規定なので、必ず対応することが必要になります。

個人保証だけでは保証が十分ではないと考えられる場合、機関保証や保険といった多面的な保証がより重要性を増してくるかもしれません。

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